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追跡


ギルドに入り、取ってきた鉱石と薬草をお姉さんの居るカウンターの上に並べた。


「す、凄い量ですね。状態も良いですし…初めて、ですよね?」

「あ…ああ、器用な方なので。あとはたまたま良い採取ポイントを見付けたんですよ」

「そ、そうですか。それはラッキーでしたね。数量と品質の確認をするので少々お待ち下さい」

「よろしくお願いします」

「ミウくん、後ろ後ろ」


ミミルが小声で言ってきたので振り向くと、離れた所から先程のフードを被った女性が腕組みをしながら柱にもたれかかってこちらを見ていた。まさか目をつけられているのか?


俺はカウンターに身を乗り出し、声を潜めてお姉さんに話し掛けた。


「あの、あそこに居るフードを被った人ってご存知ですか」

「ええ。あの方も最近冒険者登録をされたんですよ」

「えっ、じゃあ俺達と同じFランクということですか」

「そうです…でも実力はそうでもないんですよ」

「実力…ですか?」

「はい。このあいだDランクの冒険者の男性と揉めていたんですが、その際に相手を片手で制圧してたんです」

「えっ、あの人って駆け出し冒険者なんだよね?」

「そうです。なので実力は少なくともCランク相当に匹敵すると私は思います…それにしてもミウさん達のことをずっと見ていますね」

「そうなんだよ~ミウくんが男前だからかな」

「あ!そうかもしれませんよっ」

「あはは…」


そのあと俺達は報酬を受け取り、町の宿で部屋を取るよりギルドの2~3階の宿泊部屋の方が安く借りれると聞いて一部屋借りて寝泊まりすることにした。


狭いしベッドと棚以外は何も無い。だが今はお金が惜しい、もう暫くは我慢だ。


「疲れた~」

「夕食はギルドの食堂で済ませるか」

「いいね、そうしようっ。ところでベッドどうする?」

「ミミルが使ってくれ。俺は床に毛布を敷いて寝る」

「えぇ~それはさすがに抵抗あるよ。狭いけど一緒に寝るのはどう?」

「却下だな。俺は手を出す自信がある」

「え〜ミウくんウチのこと女として見てくれるの」

「当然だ」

「ふふっ、ありがと」


くたびれていたので俺達は早めに食事を取り、身体を拭いてさっさと寝た。


翌朝、下に降りて受付のお姉さんに挨拶してから昨日と同じ採取クエストに向かった。


「確か一般人からの印象や評判、ギルド職員とギルドマスターの評価でランクが上がるんだよね。上位ランクだと貴族や王族の推薦が無いと駄目なんだっけ」

「ああ。まあ今は地道に採取クエストをこなすしかないな」

「…ねぇミウくん」

「分かってる」


町を出た時からつけられている。しかもわざと昨日よりも気付かれ易く気配を調整しながら尾行しているな。これは恐らく俺達を試している…もしもこれで気付いた素振りを見せてしまえば相手の勝ちだ。


「気付かないふりで通す」

「りょーかい」


数時間、黙々と薬草と鉱石を集め、切りの良いところで休憩にした。


「まだ居るね」

「ああ。参ったな」


夕方まで採取に没頭し、持ちきれない程集まったので切り上げることにした。


「換金お願いします」

「あ、お帰りなさい。承りました、少々お待ち下さい」

「ミミル、明日は武器と防具を見に行こう」

「やったー!槍が恋しかったんだよね」


報酬を受け取って食事を済ませてお湯で濡らした拭き布で身を清めた。大きな湯船に浸かりたいが残念ながらこの町に風呂は存在しないらしい。


次の日、俺達は防具屋に来ていた。


「冒険者っぽい格好しておかないとな」

「そうだね」


とは言え金に余裕が無いので革の鎧と革のハーフブーツを2つずつ購入した。


鍛冶屋に行ったものの買えるのはせいぜい短剣1本だった。


「あーあ、ウチの愛槍持って来たかったな」

「あんな良質な槍を駆け出し冒険者が持っていたら目立つだろ」

「あははっ、確かに。でも槍欲しいな~」


ミミルがあまりにも槍を欲しがるので一番安いブロンズスピアをなんとか値切って店主のおっさんに売ってもらった。これで見事に一文無しだ。


「ミウくんありがとっ」


店を出るとミミルは嬉しそうに槍を振るっていたので慌てて止めた。


「ミミル、その槍さばきは駄目だ」

「あ、ごめんごめん。嬉しくてつい」

「クエストに行って宿賃と食事代を確保するぞ」

「りょーかい」


俺達は森に入って薬草と鉱石をありったけ集めた。


「今日はあの人居ない?」

「多分…。気配は感じない」

「じゃあさ、ちょっと手合わせしてよ。ミウくんだって体が鈍ってるでしょ」

「確かにそうだな…やるか」


俺は創造魔法で硬度の低い直刀を作った。せっかく買ったミミルの槍を破壊したくないからな。


それから2人で手合わせして一汗かき、町に戻った。


ギルドで換金している最中、例のストーカー(仮)がまた現れた。


「ミウくん、どうする?いっそのこと話し掛けてみるとか」

「…そうだな。このまま監視されていては自由に動けない」


意を決して俺は柱に寄り掛かっているストーカー(仮)に近付いた。


「な、なんですか」

「熱い視線を感じたもので。俺達に何か用事でも?」

「いえ、その…別にこれといって用事は…」


あれ、なんかこの前話した時と随分様子が違うな。些か挙動不審だ。


「じゃあどうしてウチらを見るんですか」


俺の後ろからヒョコっと顔を出してミミルが言った。


「不快な思いをされたのなら謝ります。以後気を付けます」

「そうですか、では」


これでもストーキングしてきたら他の手を考えないとな。


さて、そろそろ報酬の用意ができたかな。


「あのっ!」


急に大きな声を出すから驚いた。何なんだこの人は。

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