寵愛③
「ベアラビットの肉、美味しかったですね」
「そうだな。ポルメネ達の土産に欲しいな」
「遭遇できるとよいな。それにしても今日は吹雪いてて視界が悪いのう」
「ああ。無理には進まず収まるのを待とう」
「そうだな。アイスウォール!」 パキキキキ…!
火を起こして組立式天幕を設置して寝床を作った。食事中、ぴったり密着しているアニラが言った。
「ミウ様は防音魔法をお使いになれるんでしたよね」
「ああ、使えるぞ」
「!!」
その一言で自分を含め全員が瞬時に理解した。
「交代制で見張りは2人…も、問題はなさそうだな」
「う、うむ。どうじゃミウ」
アニラは元からだけど、他の2人も随分と積極的になったものだ。
「構わないぞ。温まるしな」
「決まりですねっ」
「順番はどうする」
「ジャンケンで何番目がよいか決めるかのう」
「異議なしです」
「右に同じだ」
「ゆくぞっ」
結果はセルビナ、アニラ、イヴの順になった。
お湯を沸かして拭き布で身を清め、防音魔法を使用しながらガールズを順番に抱いた。
自分が雪原に居ることを忘れるくらい汗をかいてしまった。
ヘトヘトになり、最後は見張りも立てずに4人で固まって毛布に埋もれながら眠りに就いた。
翌朝、出発して直ぐに運良くベアラビットに遭遇した。
「グルオオォ!!」
「双圧拳っ!」 ボギィッ!!
「オロァ…」 ズズーン…。
あれ、アニラ強くなってる?あんなのを一撃で仕留められるのか。
イヴが血刃魔法でベアラビットを手早く解体してセルビナが氷漬けにして革袋に詰めた。
暫く歩いていると今度はホワイトウルフの群れが出現した。
「群れのリーダーを仕留めるぞ」
「任せろ」
ドシュッ! 「ギャン!」
お、セルビナも速力と抜刀術の威力が上がってる。
イヴが殺気を放つとリーダーを失ったホワイトウルフ達は散って行った。
油断も容赦も無し、良いぞガールズ。俺は何もしてないけど。
それから休憩を挟みつつ進んでいると徐々に暗くなってきた。
「そろそろ休むか」
「そうですねっ」
「そうじゃな」
「アイスウォール!」 パキキキキ…!
今回はちゃんと見張りを立てて順番に睡眠をしっかり取った。
順調に進んでいると遠くに城壁が見えてきた。
「あれですね」
「ああ。早めに一度休んでおくか」
「そうじゃな」
セルビナに風避けの氷壁を作ってもらい、野営の用意をした。
火の前で座っているとアニラが後ろから抱きついてきた。む、胸が。
「ミウ様、アニラで温まり下さい」
「ありがとな、温かいよ」
「おい、ミウよりイヴを温めてやれ」
イヴの方を見るとあからさまに凍えていた。
「俺はお茶を淹れよう。ほらアニラ、イヴに毛布を」
「仕方ないですね」
「なんじゃと貴様っ…」
寒がってるイヴは怒ってもあんまり恐くなかった。
「ミウ様、お酒を開けてもよろしいですか」
「そうだな。身体も温まるし飲もう」
「ではミウ様、今宵も愛でて頂けますか」
ついでみたいにさらっと言ってきたな。
「ああ。喜んで」
そう言ってアニラの手の甲にキスするとすぐさま2本の手の甲が差し出された。
解ってるよ、平等にね。
俺は何も言わずにセルビナとイヴの手にもキスをした。
その後はガールズジャンケンで順番を決め、皆で食事の準備を始め、食後にお湯で濡らした拭き布で身体を清めた。
そしてガールズを順番に抱いてからまたもや見張りも立てずに4人揃って眠りに就いた。
朝になり、俺達は朝食を済ませて目的地に向かって歩きだした。
「物凄く頑丈そうな城壁ですね」
「ああ。近くまで来ると圧巻だな」
「うむ。見事なものじゃ」
「…」
本当に凄い。一体どれだけの年月をかけて作ったのだろう…などと考え耽っているとアニラが顔を覗き込んできた。
「どうかされましたか」
うん、普通に可愛い。
「なんでもない」
「ふふっ♡」
両手で頭を軽くワシャワシャ撫でるとアニラは尻尾をブンブン振った。
「さあ入るぞ」
「はいっ」
「ああ」
「うむ」番
兵に冒険者カードを提示して中に入った。
念のためセルビナとイヴにはローブを纏ってもらった。魔人族だの怪人族だの騒がれたら厄介だ。できる限り問題は避けたい。
「先ずは宿を取って荷物を置いてからギルドに行きソリュテの情報を集めよう。Aランク冒険者なら名は知られてるはずだ」
「そうじゃな」
「分かった」
「行きましょう」
良い感じの宿を見つけたのでそこに決め、宿賃を払って部屋に荷物を置いた。
ギルドに着くとなにやら騒がしかった。その辺の冒険者に事情を聞くと、魔王軍が居なくなったというのに全然魔物が減らないことに対して議論してるとか。
「なあセルビナ、魔物と魔人族って何か関係があるのか」
「殆どないな。私達はオーガなどのある程度知能の高い魔物を使役していただけだ。だがそれは魔人族に限らずどんな種族でも可能なこと。魔物は魔界で生まれてこちら側に流れて来る、その原理や意図は解明されていない」
「そうだったのか」
「大昔、愚かな人間が魔王が魔物を生み、支配していると広めたのが切っ掛けじゃな」
「ああ。その偽の情報は瞬く間に世界中に広がり、すっかり定着しているのが今の世だ」
「そうか…。ということは聖騎士達もそう思い込んでいるのか」
「奴等はどうなのじゃろうな。何か別の目的がありそうな気もするが…」
「ミウ様、ソリュテさんの行きつけのお店を教えてもらいました」
「よし、行こう」
アニラの入手した情報を頼りに酒場に行くと、ソリュテの姿はなかった。
店員に尋ねると夜になったら来るとのこと。
「まだ時間がありますね、どうしますか」
「中心市街地に行ってみるか。これだけ大きな都市だ、色んな店があるだろう」
「そうだな、行こう」
「うむ」
中心市街地に行くと、沢山の商店が連なっていた。




