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誠意


「ま、魔王様!何を仰有っているのですか!」

「そうですよ!魔王様が居なくなったらボク達どうすれば…」

「ルミディア、テルセリーデ、お前達はここに居る者達と共に生きろ。ここには差別も迫害も無い。魔王軍は解散する、生き残っている奴等にもそう伝えろ。命令だ」

「そ、そんな」

「解散…」


2人はすっかり消沈してしまった。


「話は終わりだ。吸血鬼の言った通りさっさと始めるぞ…とその前にセルビナ、左腕を出せ」


「はい…?」


魔王様の手には冷凍保存しておいた私の左腕があった。


「なぜそれを…」

「黙っていろ」


魔王様が私の腕の切断面を合わせる様にしてから聞いたことのない呪文を唱えると、禍々しい光りが私の腕に巻き付いた。すると次の瞬間、魔王様の左腕が失くなり、激しい痛みと共に私の腕が元通りになった。


「こ、これはっ…!」

「馬鹿な、信じられぬ」

「す、凄いです!」


「いにしえの治癒魔法だ。魔人族限定のな。対象の欠損部位を己の部位を代価に修復する。さて今から儀式を始めるが…」


「魔王様?」


「和平交渉などと口走った生意気な小僧に伝えておけ……魔人族を頼む、と」


「魔人族を…。承知しました、必ずお伝えします。それと左腕を戻して頂き心より感謝致します」


「ふん、すっかり人間らしくなったな…。さらばだ」


魔王様は『魂の器』の前に座り、呪文を唱え始めた。


魔方陣が光り輝き、ミウの所持品も呼応する様に光りを放っている。そして魔王様の全身から生命力が溢れ出て器に吸い寄せられていく。


「我が魂を糧に彼の物達の持ち主を黄泉より帰還させん」


邪悪な光りの渦の中、魔王様の肉体は霧散し、生命力で満たされた『魂の器』は大きな音を立てて割れ、砕け散った。


そしてまばゆい光りの中から現れたのは横たわっているミウだった。


ーーーーーーーーーー


なんだろう、誰かに呼ばれているような気がする。


何も聞こえない、それでも確かに感じる…俺は帰らないといけない。


「うっ…」


「ミウ様っ!」

「ミウ!」

「ミウっ!」

「おお!ボス!」

「ボスーッ!」


これは…イヴの膝枕か。体を起こすと目の前には仲間達が集まっていた。どうなっているんだ。


「俺は…あの時死んだはずじゃ…」


「ああ、死んだぞ。勝手に居なくなりおって」

「ミウ様、ミウ様っ!」

「ミウ、よく帰ってきた」


ガールズがこんなにも泣いてるなんて…それにミゥーズ傭兵団も。あれ、ルシガル達も居る。魔王は見当たらないな。


身体に違和感は無い…不思議と混乱もしていない、心が落ち着いている。


イヴの提案で取り敢えず屋敷まで戻ることにした。


アニラはいつも以上にべったりだった。この胸の感触もなんだか懐かしく思える。意外にもイヴとセルビナも俺の側から離れずにくっついて歩いていた。


屋敷に着き、大広間のテーブルを退けて全員で床に座った。それから俺は自分が死んでから生き返るまでの話をセルビナに聞かされた。


色々と驚いて頭がついて行かなかった。ポルメネとルシガルを加えた5人で高難易度のダンジョンを攻略したこと、セルビナが片腕を失くしたが魔王が元に戻してくれたこと、俺を蘇らせる為に魔王が自ら犠牲になったこと。なんだよデルートのやつ…。


せめて恩人に礼を言いたかった。


「そうか…兎に角みんなごめん、迷惑をかけた」


俺は立ち上がって深々と頭を下げた。


「ボス!頭を上げて下さい。謝る必要なんてないですよ」

「そうっすよ!俺達は馬鹿で単純なんで、ボスが元気に生きててくれればそれで満足っす」

「お前達…ありがとな」


うーん、どうしたものか。ガールズとはちゃんと向き合って改めて謝らないと…あんなことして約束破って死んだから怒ってるよな。


「色々と込み入った話を順番にしたいんだが。イヴ、アニラ、セルビナ、いいか」


「うむ」

「はいっ」

「ああ」


3人を俺の部屋に招き、開口一番謝罪した。


「全く、妾達がどんなに悲しんだことか。アニラなぞ見るに耐えぬ状態じゃったのだぞ」


「イヴさん、もう良いんです。ミウ様が居てくれるだけで、それだけでアニラはもう…」


そう言いかけてアニラは泣いてしまった。俺は優しく抱き締めて背中を撫でた。


「ミウ、私は許さんぞ。死ぬことは絶対に許さないと言ったのに、お前は約束を破った」


「すまない。反省している」


「今回は特別に許すが…二度はないぞ!」


そう言いながらセルビナも泣き始めたので慌てて片方の腕でセルビナを抱き寄せた。


まずい…こうなるとイヴが黙ってない。


「えーっと…約束を破って傷付けてしまった分、3人を思い切り愛でる時間を俺にくれないか」


3人は一斉に俺の目を見た。気のせいか歓喜溢れる輝きを放っている。


「し、仕方あるまい」

「勿論だ」

「喜んでっ♡」


それからガールズはジャンケンで順番を決め、セルビナ、イヴ、アニラの順にひとりひとりゆっくり時間を掛けて抱いた。


ガールズと肌を重ねている間、俺は改めて生を実感した。


相も変わらずガールズは最高だったが、病み上がり?だしもうヘトヘトだ。


朝になると目の前には順番が最後だったアニラが。そして交代の為に自室に戻ったはずのイヴとセルビナもくっついて寝ていた。


ガールズを見て、再び自分が生きている実感が湧いた。


死ぬ前からも時折思っていたが、少しずつ前世の記憶が消滅している…今はもう家族の顔すら思い出せない。俺の居場所はこの世界ということなのかもしれない。


さて、これから忙しくなるぞ。先ずはベルギュリウス王とルムリス達に挨拶をしに行こう。


レリスとルムリスは泣きながら飛び付いてきた。彼女達も随分と悲しみが深かった様で、謝罪なんて要らないから抱いて欲しいと真剣に言われた。


その旨をガールズに話すと許してくれた上にできればポルメネも抱いてやって欲しいと頼まれた。

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