続続
「あやつ寝ておるのか?ブラッディクロスラージソード!」
ガキィーンッ!! 「ギッ…ギギギィ!」
「起きましたね」
「来るぞ。私とイヴで引き付ける」
「はいっ」
「分かった」
「了解です」
「ギシャアアアッ!」
ズズーンッ!
地面に降りたクリスタルビートルは物凄い勢いで1本角を構えて突進してきた。
「アイスウォール!」
バキバキバキッ!
普段より分厚くした氷壁でも止まらないか。だが勢いは殺した。
「ブラッディジャベリン!」 ガキィンッ!
「やはり駄目か。ブラッディハチェット!」
バキキンッ! !
無数の血刃の手斧が命中してクリスタルビートルの甲殻にヒビが入った。
新しい形状だな、威力が高い…手斧があると言うことはもしかして…。イヴを見ると私の思考を見透かした様に不敵な笑みを浮かべた。
「ブラッディバトルアクス!」
バギィッ!! 「ギィー!」
血刃の戦斧…なんて威力だ。クリスタルビートルの突進が止まった。
「降圧拳っ!」
「はああーっ!」
「うおおーっ!」
グシャッ!!
空中からの頭部を狙った3人の攻撃でクリスタルビートルは息絶えた。
「ふう、意外といけるな」
「いや、イヴの魔力消費が大きい。そうだろ?」
「うむ。なるべく連発は避けたいがあの硬さ…そうも言ってられぬからのう」
「少し休んでから進もう」
ひとまず休憩を取ってから私達はダンジョンの奥へと向かった。
イヴに言われ探知魔法を使うと、複数の反応を捉えた。
「クリスタルビートルが複数体居るようだ。それに…」
「やはり何か居るか」
「ああ。1つの個体から他より強い力を感じる」
「おいおい、初めて複数体のクリスタルビートルを相手にするのに更に強い魔物も一緒なのか」
「どうしますか?」
「妾に考えがある」
「なんですか」
「聞かせてくれ」
イヴはわかり易く簡潔に説明してくれた。
「成る程な…確かにいけるかもしれない」
「アニラもそう思います」
「引き返すという選択肢は無いからのう。蹴散らすまでじゃ」
「よし、やろう」
「はいっ」
私、アニラ、イヴの3人が前に出てポルメネが隠蔽結界を張り、更に魔力強化魔法を発動。
幸いにも魔物が集まっている道は直線になっている。
数はクリスタルビートルが6体と最奥に別の個体が1体。
「いいか」
「うむ」
「はい」
ズズズズ…。
私達が魔力を高めた瞬間、クリスタルビートル達が動きだした。
だが遅い。
「ブリザード・オブ・ブラッド!!」
ビュオオオオーッ!!
「ギィー」
「ギギッ」
パキキキキ…ガガガガガガッ!!
最大火力の混合魔法を受けてクリスタルビートル達は次々に砕け散っていった。
「ギゥオオオオーッ!!!」
「出て来おったな。このまま放ち続けるぞ!」
「はいっ!」
「ああ!」
奥から現れたのはクリスタルビートルより一回り大きく、1本角ではなく2本の角、大顎を持つクリスタルスタッグビートル。イヴ曰くかなり希少な魔物らしい。
イヴの予想ではドラゴン並みの強さ…かなり危険だ。だからこそイヴの策で一方的に攻めて討つ。
「ぐぐぐ…!」
「まだまだ…!」
「ぬう…」
ビュオオオオオオーッ!!
そろそろ限界だ、魔力が尽きる。
「ルシガル!」
「おうっ!」 ダンッ!
私達が魔法を止めた瞬間、身体強化魔法をかけたルシガルが飛び出して行った。鉄爪甲にポルメネの研磨魔法と硬化魔法も付与してある。
「うおおおーっ!」 ズバァンッ!!
「ギギィーッ!」
両腕の鉄爪がクリスタルスタッグビートルの頭部を貫いた。
「おらぁーっ!」 グシャシャシャシャ…!
確実に命を絶つ為、ルシガルは容赦なく頭部を粉微塵にした。
「はあ、はあ…やったか」
相手は動かない、どうやら倒した様だ。私達3人は魔力回復薬を飲んだ。
「ふう、魔力切れ寸前でしたよ」
「妾はもう少しいけたぞ」
「さすがだなイヴ」
「姉さん方、あの魔物の角と甲殻は採取しますか?」
「うむ。あれはかなり珍しい。角も甲殻もダイヤモンドドラゴン程ではないがなかなかの硬度、装備品を作るのにもってこいの素材じゃ」
「分かりました。採取します」
「俺も手伝おう。3人は休んでいろ」
「感謝する」
「ありがとうございます」
「すまぬな」
休憩を挟みつつ奥へ進むと物凄く狭い道が現れた。
1人ずつ慎重にそこを抜けるとひんやりした空気に変わり、目の前にはとても美しい地底湖が拡がっていた。
「綺麗…それに神秘的ですね。ミウ様と見たかったです」
「いつか見に来ればよいではないか。無論妾も同行するがのう」
「ふふ。そうですね、いつか見に来ましょう」
「当然私も一緒に行くからな」
「分かっておる」
「姉さん方!水中に何か居る様ですっ」
ポルメネにそう言われて探知魔法を使ってみると、水中から大量の反応を捉えた。
「魔物だな…しかもかなりの数だ。どうする、先に進むには地底湖に近付かないといけない」
「他に道はなさそうじゃのう。まずは遠距離攻撃で敵の正体を暴く」
「分かりました」
「遠距離か…俺は役立たずだな」
「私もです」
「そうじゃセルビナ、水面を凍らせてみよ」
「分かった。フリーズミスト!」
ヒュオオオ…。パキキキキ…!
「…」
暫く黙って見ていると何かが水面に近づいて来た。
バリィィンッッ!!
次の瞬間、物凄い音を立てて巨大な鋏が氷を砕いて現れた。




