会議
「お前達、今までどこに行ってたんだ」
「それも踏まえてお話がありますわ。一先ずお屋敷に戻りましょう」
「そうそう。取り敢えず帰ろうよ」
「…わかった」
ミゥーズ傭兵団本部に戻ると団長のダレアと副団長のポルメネが立っていた。
「姉さん方、お帰りなさい」
「うむ。2人してどうしたのじゃ」
「その、魔王さんに貴様等も参加しろと言われまして」
「そうなのか」
「はい。既に大広間で待っています」
「ほらほら早く入って」
ルミディアに背中を押され屋敷に入った。
大広間に行くとルシガルも座っていた。
魔王が腕組みをしながら我々を睨んだ。
「遅いぞ」
「なんじゃと」
「落ち着けイヴ。魔王様、話とは何でしょうか」
「まあ全員座れ。できれば飲み物が欲しいな」
「私が」
ポルメネが紅茶を淹れ、ティーカップが全員に行き渡った。
「さてと。先ずワシ等が何をしていたかと言うと、ある調べ物をしていた」
「調べ物?」
「そうだ。いにしえの魔導儀式についてだ」
「それはどんな儀式なのですか?」
「死者を蘇らせるというものだ」
「!!」
魔王様の一言でこの場に居るほぼ全員が過度な反応を見せた。
「貴様等の陰鬱な表情が余りにも惨めでな」
「なんじゃと貴様!」
「そんなことはどうでもいいです!あの方をっ、ミウ様を生き返らせることが可能なのですかっ!どうすれば良いのですかっ!方法はっ…!」
「アニラ、落ち着け」
「皆、期待や喜びは棄てよ。先ずはこやつの話を聞いてからじゃ」
「ふん、案外冷静ではないか。それでは心して聞け」
大昔、当時の魔王が勇者に敗れ息絶えた後、魔王の腹心がどうにか主君を蘇らせようと数百年もの長い歳月を費やし実験に実験を繰り返して完成させた魔導儀式なるものが存在するという。魔王様はその儀式の詳細を調べる為に魔国で調べ物をしていたらしい。そして今に至る。
「魔方陣の構造はワシが理解しているので問題ないが儀式には必要な物が3つある、それは貴様等が揃えろ」
「必要な物とは何ですか?」
「1つ目は蘇らせる者にとって思い入れの強い物…まあ愛用の武器や防具、装飾品などだな」
「それならもうありますね」
「うむ。2つ目はなんじゃ」
「2つ目は『魂の器』という希少な魔導具だ」
「それは確か生け贄にする対象の魂を乗せる物じゃったか」
「その通りだ。そして3つ目がその『魂の器』に乗せるもの。蘇生させる者にとって特別な存在…『親しい者の魂』だ」
「!!」
私も含め全員が察した。
「それはまさか…」
「そのまさかだが今狼狽えて生け贄について談合するのは時間の無駄だ、まずは『魂の器』を見付けるのが先決だぞ」
「確かに…。ところで『魂の器』の在処は解っているのか?」
「最南西にある未踏破の迷宮『不滅の結晶洞窟』の最深部に安置されている様だ」
「そ、そのダンジョン知っています。大陸最難関迷宮の1つですよっ」
「ダレア、ダンジョンの位置はわかるか」
「はい」
「よし。生け贄について皆色々と言いたいことはあると思うが、先ずは『魂の器』を手に入れよう。それまでは生け贄の話は保留だ」
「そうですね」
「分かりました」
「おい貴様、必要な物を揃えれば本当に蘇生できるのじゃろうな」
「ほう、人が厚意で教えてやってるというのに疑うのか吸血鬼め」
「イヴさん、それはわたくしが保証しますわ。魔王様は真剣にお調べになられていました。確信の無いことをわざわざ貴女方にお伝えになるとは思えませんわ」
「テルセリーデ、余計なことを言うな」
「イヴさん、セルビナさん!直ぐに出発しましょう!」
「待つんだアニラ」
「うむ。まず妾達3人ではそのダンジョンは荷が重い。それと入念な準備が必要じゃ」
「俺が同行する」
「ルシガル、気持ちは有り難いが生きて帰れる保証は無いぞ。せっかく家族と再会したんだ、今の暮らしを大事にしろ」
「それはあいつ…ミウのお陰で手に入れたものだ。ミウには大恩がある…命をかけるには充分な理由だ。それに妹達のためでもあるしな」
「私も行かせて下さい」
「ポルメネ!?」
「あの、姉さん方、取り敢えず私の話を聞いて頂けますか」
そう言ったのはダレアだった。ダレアはポルメネのことを熱心に説明した。
私達が王都を発ってからポルメネは鍛練に鍛練を重ね、クエスト代行ではなく冒険者登録をしてソロでクエストをこなしていたらしい。使う武器はスティールメイスと腕部装着型の円盾『月光の環』盾にはダイヤモンドドラゴンの鱗が使われており、帝都リントゴスの高名な鍛冶職人に造ってもらったそうだ。
そしてポルメネの最たるものは他者に対する治癒、回復、強化魔法と結界魔法だそうだ。いわゆるサポーターの立ち位置だ。
それに加えて自分が狙われた時にパーティーに迷惑をかけない様に近接戦闘を中心にみっちり鍛えたそうだ。今ではダレア以外のミゥーズ傭兵団相手なら2体1でも勝てる程になっているらしい。
「ありがとうダレア団長。姉さん達、もし良ければ腕を見せる為の手合わせをお願いします。必ず認めてもらい、私も同行させてもらいます」
あのポルメネがこうも強気に出るとは…それほどの覚悟、ミウへの想いがそうさせるのか。
「それではアニラが見定めます」
「分かりました。では表に出ましょう」
「はい」
2人は武具を装着して外に出て対峙した。




