魔法
ポマリス村を出て数時間、初のモンスターと遭遇。
見た目はオオカミを一回り大きくした感じだ。
群れで活動するみたいで数が多いけど大丈夫かなこれ…10匹くらい居るけど。
迫力に圧され突っ立っているとガルルといかにもって感じの音を立ててジリジリと俺を囲んでから一斉に飛び掛かって来た。
「ギャウン」
噛み付いてきたデカオオカミ達は軒並み牙が折れた。
怯んだ隙に抜いておいた短剣で2匹仕留めた。
低く構えて残りのデカオオカミを睨むと素早く逃げていった、退き際をちゃんと分かっているな。
刃物で生き物を殺したのは初めてだった。
村では罠で捕らえた獲物を〆る作業は1度もやらなかったからな。手が少し震えている。嫌な感触だが生きる為だ、早く慣れないと。
何故デカオオカミ達の牙が折れたか説明すると、俺はやはり先天性属性魔法を持っていたのだ。
但し自然属性ではない。簡単に説明すると魔力の塊をイメージした形状に変化させる無属性魔法だ。村で読んだ魔法についての分厚い本には一切載っていなかったので俺は勝手に『創造魔法』と名付けた。
この魔法の強みは好きな物を造れることじゃない。と言うのもイメージして何かを精巧に造り上げるのがかなり難しい。
因みにポマリス村を襲撃したあの魔人を撲り殺した棍棒は俺が毎日ひっそりと丸太を叩くのに使っていた手製の棍棒を咄嗟にイメージして創造した物だった。
不思議に思っていたのだ。あの時、俺は武器になる様な物は何も持っていなかったのに何故あの魔人を撲り殺せたのか。あの棍棒は俺の創造魔法だったのだ。
強みの話に戻るが、ズバリ硬度だ。あの魔人の金棒を破壊し、両腕の骨と頭蓋を砕く程の硬さだ。
あれから鍛練して更に硬度を上げた。
故に先程のデカオオカミ戦で俺は鎧をイメージして全身に纏い牙を砕いたのだ。
恐らく大量の刃物が落ちてこようと平気な程の防御力だが勿論弱みも存在する。創造する時の物体の質量によって消費魔力が多いのだ。
先程の全身に纏った鎧は正直あんまり良くない。部分的に鎧を創造して防御するのがベストだが初めての戦闘でしかも複数相手で俺は不安だったのだ。
部分的に鎧を創造した防御の練習はかなり頑張ったがまだ自信は持てない。何故なら攻撃を受ける範囲を見誤れば生身の部分に攻撃が入ってしまう。
治癒魔法も使えないし安易に攻撃を受けるのは危険過ぎる。
俺はまだまだ未熟だ、もっともっと磨き上げないと。
気付くと日が沈み始め、辺りが暗くなってきていた。
今日はこの辺で野営しよう。
薪を拾い集め、火打石を使って火を起こし道中で狩った鹿みたいな動物の肉を焼いて食べて寝た…とは言え魔物に襲われる可能性があるので安心出来ず、殆ど眠れなかった。
朝日が大地を照らし始めたので直ぐに出発した。
のんびり歩き、暗くなってきたらまた野営をして休み、朝になったら出発。
休まず歩き続けたおかげでまだ明るいうちにロークスの町に到着することが出来た。
大都市ではないので番兵は居ない。
町に入ると人が沢山居て活気が溢れていた。
さて先ずは宿の確保だ、お金は充分持ってるが無駄遣いは控えたい。なのでなるべくリーズナブルな所を見付けたいのだが規模の大きな町ではないので選択肢は限られる様だ。
宿は3件しかない…迷った末俺は『居眠り亭』という宿屋に入った。
何となく名前が気に入ったのだ。