本懐
「困りましたねぇ…。あまり時間をかけるなと言われているので、全員纏めて城ごと浄化させていただきます」
ズズズズズ…!
「なんて魔力だ」
「ワシはいい。貴様等だけでも逃げろ」
「そうはいきませんわ」
「そうですよっ」
「ユラノに託されたんで!」
3人は魔王を守る様に移動して構えた。
「ミウ、どうする」
「退きましょうミウ様!」
「そうじゃ、荷物を取って来て転送石を…」
「駄目ですよぉ。皆さんはここで死ぬのです。裁きの大白炎」
ゴゴゴゴゴ…。
「なっ!」
「嘘だろおいっ」
「なんだこれは!?」
聖騎士の掲げた剣先から超巨大な白炎の塊が出現し、こちらに向かって放たれた。
こんなもの避けられないし今の魔力じゃ相殺も無理だ…荷物を取って来る時間も転送石を使う暇も無い。
このままじゃ全員…いや落ち着け…この魔法を止めるのに一番適していそうな属性魔法はきっと俺だ。
「全員俺の後ろへ!大盾っ!」
ガァンッ!! 「ぐぐぐぐ…!」
「ミウ様!」
「ミウ!」
「長くは持たない。ルシガル!部屋の入り口付近にある俺達の荷物を取って来てくれ」
「わかった!」
この中では強化魔法を使ったルシガルが一番速い。
ザッ!
「持って来たぞ」
「助かった。3人とも、転送石を全部出すんだ」
「はいっ」
「うむ」
「よし!」
王都アルディアを発つ際、自宅を記憶させた青と緑の転送石を1人1つずつ持った。計8個。
それをアニラが床に並べて確認している。
「俺も確認したい、全部見せてくれ」
「どうぞっ」
「待つのじゃアニラ!」
「えっ?」
俺は素早くアニラの手から緑の転送石を3つ奪い、魔力を込めて3人に投げ付けた。
「王都アルディア、傭兵団本部へ!」
「ミウ様!?」
「よせ、ミウ!」
「駄目じゃミウっ!」
ふう、ガールズは無事転送された。
ゴゴゴゴ…!
「ぐくっ…ルシガル、そこに落ちてる5つの転送石を使って行け。行き先の名称は聞いてたな」
「お前…」
「急げ!」
ルシガルは黙って魔王達のもとに行き、説明して石を配った。最後の緑の転送石はユラノの遺体に使わせた。
「お兄さん…ありがと」
「聞いた通りのいい男ですわね」
「色々とすまなかったな」
3人がユラノを連れて行き、残るは魔王1人になった。
「貴様、ワシではなく自分で使おうとは思わないのか」
「うぐぐ…お前なら解ってるはずだ、さっさと行け」
「…本当に生意気な小僧だ。王都アルディア、傭兵団本部へ」
これで全員。この白炎の塊を防いでから数秒で俺の魔力は尽きた…それからは生命力を使い続けている。俺という存在が薄れていくのを感じる…仮に脱出できても俺はもう助からないだろう。
バリンッ。
『大盾』が砕けた。生命力がもう尽きるのか…。
白炎に包まれながら俺は思い出した。前世で死ぬ間際のことを。
『せめて誰かの為に死にたかった』
心残りは山程あるけど、不思議と悔いは無い。俺は幸せ者だからな…なんたって愛する者達の為に死ねたのだから…。
痛みはない…俺は目映い光に身を任せ、目を閉じた。
その日、私達の生きる理由である彼は居なくなってしまった。




