家族
キィーンッ!
あの爪手甲…かなり上質な素材で作られているな、武器破壊は駄目そうだ。
属性魔法は使ってこないが様子見ってところなのか。 取り敢えずあのフードが気になる…魔人族だから角が折れてるとかかな。
ガキンッ!
「準備運動は終わりでいいか?」
「ああ」
スタッ。
こいつ、近接戦闘にかなり長けている。それになんとなくアニラの動きに似ている気がする…まあアニラの方が品のある体捌きだが。ここからは本気でいくぞ。
「物干し竿!」
ビュンッ! 「うっ…!」
よし、不意打ち成功。俺の創造魔法はいちおう初見殺しだからな。見事フードを切ったぞ。
「見たことのない魔法だ。目視しづらい…物体を創り出すといったところか。だが惜しかったな…いや、初めから被り物狙いか」
破れたフードを取って捨てた。その素顔は…。
「なっ、獣人だと!?」
奴は間違いなく猫の獣人族だ…いやただの猫とは少し違うか。あれ、どこかで見たような…待てよ、確か名前がルシガルって…そうか!
「はっ、どうして獣人族なんかが魔王軍の幹部をやってるのか驚いてるな」
「いや、そんなことよりお前はレリスとルムリスの兄か?」
「なにっ、妹達を知っているのか」
「ああ。知ってるどころかかなり親しい仲だ」
「そうか……あいつらは元気にしているのか?」
「自分の目で確かめたらどうだ。2人やご両親も心配してたぞ」
「何を馬鹿なことを言っている、魔王軍になった俺が会える訳ないだろ」
「そんなこと気にしないと思うけどな」
「解らん奴だな、身内に魔王軍がいると知られたら俺の家族は酷い扱いをされるだろが!」
「お前は家族が大事なのか」
「当たり前だろ!」
「だったら多少のリスクを冒してでも元気にやってると伝えれば良いだろ。顔を見せるだけでもきっとお前の家族は安心するし喜ぶはずだ」
「人間ごときが知った様な口を利くな。家族の為にも俺はリスクなんて冒さない!」
こいつ…なんか凄くイラつくな。なんでだろう……そうか。昔の俺に似ているんだ。家族と仲が悪いと決めつけていた俺に。
大人になって本当は気が付いてた。俺が勝手に思い込んでいただけで、家族は俺のことを嫌いではなかったんじゃないかと。俺から歩み寄ったら変わるんじゃないかと。でも俺は自分の気持ちに蓋をして結局一歩も踏み出さなかった。もしも望まない結果だったら…と考えたら怖くなったんだ。
だが今は後悔している、俺は前世で死んで家族に歩み寄る機会をもう失っているから…でもこいつには未だ機会がある、それなのに…。
「魔王軍魔王軍って言ってるけど要は怖いんだろ。自分がどんな風に思われているのか、歓迎されないんじゃないのかって」
「黙れ、部外者が偉そうに」
「部外者?悪いが俺は確実にお前よりルムリス達と親しいと言い切れるぞ」
「嘘を吐くな!人間が!」
はぁ…種族は関係無いだろ、本当にイライラするなこいつ。
「先の言葉は撤回する、お前は家族に会わないでくれ」
「なんだとっ」
「実の兄がこんなヘタレになっているのを知ったらルムリス達が悲しむ」
「てめぇ!殺す!」
ブウゥゥン…。
あれは身体強化魔法?いや、何か少し違う。
「俺は六大凶牙の中で唯一属性魔法を持っていない。それに加えて一般魔法も1つを除けばからっきしだ。にもかかわらず三の牙に在席している」
シュザッ!
「!?」
速い。殆ど見えなかった。俺の肩から血が流れている…斬られたのか。
「なぜなら俺は身体強化魔法を極めているからな。発動時の効果は単純に倍、更に強化持続時間は最高30分だ。そして血反吐を吐く鍛錬により強化魔法使用後の肉体への負担は殆ど無い」
なんだと、身体能力が倍になった状態を30分維持できる!?おかしいだろ。
「今から30分間てめぇを痛めつけるぜ」
「上等だ。かかって来いよルシガル」
ガキィンッ! 「ぐっ…」
この速さ、部分防御で防ぐのがやっとだ。でも少しずつ目が慣れてきた気がする。それと奴の気配、それを感じ取れる様になってきた。それでも…
ドゴッ! 「ぐふっ」
ズザザッ…。
一度の接近で確実にダメージを与えられてしまう。このままじゃサンドバッグだな。
「どうした黙り込んで。余裕がなさそうだなおい!」
ドガッ! 「ぐおっ」
くそっ、カウンター入れようにもタイミングが読めない。そもそもカウンターを合わせたところで恐らく簡単に避けられる。
こいつの機動力を潰しにいくしかない。『杭』で脚を狙い撃ちするか。 いや、掌を向けた瞬間に危険を察知して躱しそうだ。
仕方ない、気が進まないがやるか。




