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苦戦


キィーンッ!


「へぇ、ボクの剣術に付いてこれるんだ」


「なぜ魔法を使わない」


「それはキミもだろ」


「私は馬鹿じゃない」


「そうだね、キミはちゃんと解っている。さすがだよ。キミの氷凍魔法がどんなに強くなっていようとボクの火炎魔法で瞬時に蒸発させれるからね。…まあアイツ並みに強くなっているのなら話しは別だけど」


「残念ながらそれは無いな」


「だよね。気にすることはないよ、おかしいのはアイツなんだからさっ!」


ガキンッ! 「くっ」


ルミディアが片手半剣による剣術を得意とすることは知っていたが、まさかここまで卓越してるとは。そして炎の属性魔法も凄まじいと聞いている。


無駄だと解った上でどれ程のものか一度見ておくか。


「アイスロックスコール!」


「…ふーん、バーニングゾーン」


ルミディアが立てた人差し指を中心に空中に火炎地帯が出現した。私の氷塊の豪雨は呆気なく全て消滅した。なんという範囲と熱量だ…しかも平然とやってのけた。


「思ったよりやるね。まあその程度じゃボクには通用しないけど」


「解っている!」 ブンッ!


ブシュ! 「うっ…」


斬撃を躱されて肩を斬られた。奴の剣術で最も恐ろしいのは打ち込みでも速力でもなく眼力だ。剣で受けることは殆どなく、私の攻撃を紙一重で躱す。そして躱した直後に一太刀入れる。それは刀で受けることができない程の速さ、そして私の『ダークイルミネーター』を避けて一太刀入れてくる…なんて精度の斬撃だ。


傷口から血が滴る。どうする。


「もうおしまい?」


「まだだっ!」 ズオオオオッ…!


馬鹿な、この連撃を全て避けるのかっ。


ザシュッ! 「ぐっ」


しまった。傷が深い、治癒魔法を…


「!?」


ドカッ! 「ぐふっ」


治癒魔法を使った瞬間蹴り飛ばされた。治癒魔法で傷は塞いだが…今のが蹴りではなく剣による攻撃だったら勝敗は決まっていたかもしれない。奴には余裕がある。


「まだやるの?」


「当然だっ!」


ギリギリだが私も躱せる様になってきた、相手の動きに目が慣れてきたのか。


「はああーっ!」 ビシュッ。


くっ…躱される上にやはり刃は多少受けてしまうか。いや、かすり傷で済んでいるだけでも奇跡に近い。集中して、よく見て、躱して…ここだ!


ドシュッ! 「がっ…!」 ドサッ。


「残念。今のはカウンターってやつだよ。躱せる様になってもさ、キミの剣はボクの剣より遅い、先手を取れる」


「ぐくっ…」


成る程な…だから先に刀を振った私が先に斬られたのか。さっきまでの剣速は本気ではなかったのか…かなりの深手、出血が酷い。


私は起き上がり膝を着いた。治癒魔法で傷を小さくして魔力回復薬と止血薬を飲んだ。この傷を修復しきる程の魔力はもう残っていない。


「キミのことは割りと好きだから見逃してあげたいんだけど、ご存知の通り侵入者は皆殺しって命令だからさ」


詰み…か。他の皆は大丈夫だろうか。


ミウは……


ミウ…?


「ふふっ、失念していた」


「へぇ、まだ立つんだ。いいね」


ーーーーーーーーーー


むぅ…完全に迷ったようだ。だがこの先から強者の気配と殺気が分かりやすく流れ込んでくる。大した自信だな、あの部屋か。


ガチャ。


「よくぞ来てくれました。わたくしの名は魔王六大凶牙、一の牙、青藍のテルセリーデ。歓迎致しますわ吸血鬼様」


「朱刃姫イヴカロンじゃ。歓迎には感謝しよう」


「うふふ、穴埋めの坊やを殺したのは貴女様ですね。かなりの手練れとお見受けしましたわ」


「それは光栄じゃのう」 シャキン。


「あら、美しい剣…」 パキキキキ…。


氷の属性魔法か…魔力が溢れ冷気が漂い奴の身体が所々凍り始めた。尋常ではない魔力量だ。


ジャキン!


「美しさはわたくしの『常闇ノ切片カーラ・パルカ』も負けていませんわ」


黒刃の大薙刀…あれは妖刀の類いか。禍々しい妖気が溢れ出ている。


「ゆくぞっ!」


先ずは血刃を複数出して同時に『シャドウイーター』で斬り込む。


キキィーン! ブゥォンッ!


くっ…かすったか。それより今のはまるでミウの創造魔法の鎧…血刃を受ける身体の箇所に的確に分厚く密度の高い氷を張って攻撃を全て防いだ。何という魔法技術…更にこの手応えからしてかなりの硬度、容易には破れないだろう。セルビナの氷凍魔法はおろか、恐らく妾が創り出す魔法純度最高の血刃武器すらも越えているかもしれない。


「ブラッディクロスハンドレッドソード!」


ガガガガガガガガガ…!


全て受けている…やはり通らないか、それならば!


「ブラッディサイズオブジャッジメント!」 バキンッ!


「なにっ」


「はっ!」 ブゥォンッ!


ビシュッ。 「ちいっ…」


まさかあれ程易々とあの血鎌が折られるとは。なんという硬度。奴が創り出す氷はダイヤモンドドラゴンよりも硬いかもしれぬ。


そして防御直後の薙刀の一振り、間合いも射程もある上に見た目によらず振るう力も強く速い。先も今も辛うじて反応できたが避けきれなかった。


「うふふ、貴女の血刃魔法ではわたくしの氷は壊せませんわ」


「ブラッディジャベリン!」 バキンッ!


「ブラッディソード!」 キィンッ!


「砕かれた血槍を変化させて更に血刃魔法を…素晴らしいですわ」


「ブラッディクロスラージソード!」 ガキンッ!


「はっ!」 キィィンッ!


「フロストステイク」 ドシュシュ!


「くっ」


シャドウイーターの一撃を防がれた直後に氷凍魔法を射たれた。発射速度が常軌を逸している。2発の氷杭に貫かれたので直ぐに治癒して魔力回復薬を飲んだ。


「あら、治癒魔法がお上手ですわね」


「お誉めに与り…と言うかお主、魔人族にしては随分と礼節を重んじておるな」


「うふふ、そう言って戴けて光栄ですわ」


それはそれで調子が狂うが…。


しかし攻撃が通じないとなるとどうすれば…まさかこれ程の実力者が居るとは。アニラやセルビナ、ミウ達は大丈夫だろうか……


そうだ、あれならば通用するかもしれない。


現状ではどうせ勝ちの目は無い、加減ができずにもしかしたら殺してしまうかもしれぬが…やるか。

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