番外①
「アルディアを発ってどれくらいだ?」
「6日くらいかしら。もうすぐ帝都が見えてくる頃ね。ミウさん達どうしてるかな」
「確か獣人国に行くんだっけか。まああの人達なら大丈夫だろ」
「そうよね」
私達は『五つの尖刃』というパーティーで魔王討伐の旅をしていたが魔王六大凶牙の手によって仲間を3人失い、アギレと私が生き延びた。
そして再び魔王討伐の旅に出る為に仲間を捜しに帝都リントゴスに向かっている。
「やっぱり前衛が欲しいよな」
「そうね」
私達は2人とも属性魔法を使える。アギレが光で私は水。そして2人とも得意なのは中、遠距離の魔法攻撃だ。
このまま近接攻撃を主体としたメンバーが居ない状態だとバランスが悪い。人としての相性も連携に繋がるし、そう易々と条件を満たす相手は見付からないだろうな…。
そんなことを考えていると帝都が見えてきた。
「漸く着いたな。尻が痛いぜ」
「先ずは宿を取って荷物を置いてからギルドに行きましょう」
「おう」
金銭的に余裕が無い訳ではないが、料金の安い宿にした。出発の際、遠慮するなとミウさんがお金を持たせてくれたので大事に使いたいのだ。
「今後のためにも多少は稼がないとな」
「そうね。何かクエストをこなしてお金を作りましょう」
「はぁ…ブデオン大雪原に荷物全部置いてきちまったからな」
「仕方ないわよ。荷物を回収する余裕なんてあの時はなかったんだから。あいつから逃げ切れただけでも奇跡に近いわ」
「そうだな。リーダー達には感謝しかない。もちろんミウさん達にも」
ギルドに着くと職員も冒険者も何やら慌ただしくしていた。
「なんだか騒がしいな」
「アギレはクエスト掲示板を見に行って。私は聞き込みしてくる」
「おう」
その辺に居る冒険者達に訳を聞くと有力な情報を得ることができた。
「アギレ!行くわよ」
「行くってどこに…」
「走りながら説明する。行きましょう」
「分かったよ」
どうやら帝都の一番近くに在る町がオークの群れに襲撃されているらしい。しかも情報によるとオーク以外にも魔物か何かが居るらしく、帝都の騎士、傭兵、冒険者達は状況の整理と戦力の収集が済むまで待機しているそうだ。
そのなかでAランクの傭兵と冒険者の2人が制止を無視して町に向かってしまったらしい。
確かにもしもオークの群れに加えて六大凶牙や上位の魔物が居たら例えAランクとは言え2人では命の保証は無い…流石に放ってはおけない。
「おい、もしもあいつだったらどうすんだ」
「アギレはどうしたい?私は二度も逃げるのは嫌よ!」
「俺だって同じだ、仕留めてやる!」
馬屋の馬を拝借して私達は件の町へ急いだ。あの煙は…町が一部燃えている、魔物の仕業か。
「おいエウル、誰か戦ってるぞ」
「ブオオッ!」
「ムン!」 グシャ!
「やるじゃんオッサン」
「拙僧は28である」
「うそっ!?あたしと5つしか違わないじゃん」
あの2人が例の傭兵と冒険者か。それにしても町の人達が見当たらない…死体が無いと言うことは皆逃げたのだろうか?何にせよ先ずは魔物の討伐だ。
「援護します!」
「ん、誰よあんたら」
「俺は流星のアギレ」
「水撃手エウルです」
「へぇ、二つ名があるってことはAかSだよね」
「2人ともAランクの冒険者だ。そっちは?」
「それは心強いね。あたしは狂刄のエルティー。Aランク冒険者だよ」
「拙僧は撲殺僧バーセアである。Aランクの傭兵である」
「2人ともよろしく。取り敢えず状況を説明してもらえる?」
「んーとね、オークの群れが町を襲ってたからこのオッサンと殺しまくってたところ。町の人達は避難済み。離れた所で隠れてるよ」
「段取りがいいな。敵の数は?」
「ざっと30ちょいかな…おっと、来たみたいだね」
「ブオオッ、ナカマノカタキ!」 ザッザッザッ。
「そんで残り20ってところかな。殺すの手伝ってよ」
「俺達は後方から狙い撃ちする。行けっ!」
「りょーかい。行くよオッサン!」
「ウムッ」
「エウル!」
「分かってるわ」 ジャキン!
私の武器は魔導武器、魔弓銃2丁。このクロスボウは私の水魔法のボルトを装填して撃ち込む。アギレの武器も同じく魔導武器、光属性の魔弓。アギレ自身の光の属性魔法を上乗せさせて威力を上げ、高速の鋭い光の矢を放つ。
あの2人…バーセアって大男は拳に硬化魔法をかけてオークを素手で殴り殺している。エルティーはノコギリの様な荒い刃の長剣を躍動感溢れる動きで振り回して相手をズタズタに引き裂いている、変則的な剣術…まさに狂った刃の様だ。2人とも強い、体術にかなり長けている。
私達はそんなに必要ないかも…。援護しながらそんなことを考えていると民家の上から声が聞こえてきた。
「オイオイオイ、やられ過ぎだろ」
「!?」
「いつの間に」
「なにあいつ」
「魔人族であるな」
「おーい、生き残ってるオークども、物資持ってさっさとデスピアに帰れ!」
「なっ、物資を奪いに来てたのか。行かせるかよ!」
バシュッ!
「おっと」 バチンッ!
魔人は瞬く間に移動してアギレの光の矢を手にした槍で落とした。その隙に物資を担いだオーク達は転送石を使って消えてしまった。
「あーあ、逃げられちゃった。で、あんたは逃げないの?」
「ああ。お前らと遊んでやろうと思ってな」
「お前はまさか…魔王六大凶牙か?」
「へぇ、よく分かったな。そうだぜ、四の牙、紺碧のセイヌスだ」




