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水蛇


「セルビナ、あれを」

「分かった」


昨日森で狩ったでかい兎の魔物を捌いてセルビナに冷凍保存してもらっていたので、その肉を食べることにした。


レクテで買ったハーブソルトとスパイスを振って焼いて食べたら想像以上に絶品だった。


「美味しいですねっ」

「うむ、これは美味い」

「そうだな」


肉を嬉しそうに噛るガールズを見てつい笑ってしまった。


「なんじゃミウ」

「どうかしましたか」

「なにかおかしかったか?」

「いや、みんながあまりにも可愛くてな」


「っ!?」


あれ、なんか皆の様子が…なんとなく雰囲気が変わった気がする…もしかして引かれた?


「ミウ様、お側で食べても宜しいでしょうか」

「ああ。別に構わな…」

「待て、私もミウの隣で食べたい。イヴはどうだ」

「当然妾もじゃ。となるとジャンケンじゃな」


そうか、リオス大森林に入ってからこういうの全然してなかった。


ジャングルみたいな険しい道を一列になって黙々と歩き、夜は食事を摂ったら寝かし付け無しで皆直ぐに寝ていた。あのアニラでさえくっついてこなかったからな。まともな道の無い森の中を歩き続ければ疲労も溜まるし汚れるし臭うし…そういう雰囲気にはならないよな。


しかし俺の「可愛い」の一言で3人の顔付きが緩くなり女性らしさ剥き出しになったのだ。


これは責任取らないとな。それに明日からまた森の中を進まなければならないから身も清めたことだしここでイチャイチャしておきたい。


「2人は隣で、1人は膝の上だ。ジャンケンで決めてくれ。あと今夜は全員寝かし付けさせてもらうからな」


3人は喋るのを止め、俺に注目した。皆目がキラキラしてる様に見える。可愛い過ぎるぞガールズ。


「ま、先ずはジャンケンだな」

「う、うむ」

「そうですねっ」


勝ったのはアニラだった。


「では失礼します」

「ああ」


落ちない様に腰に手を回すと片手しか使えず食事が困難になった。


「アニラが食べさせて頂きます。どうぞ」

「すまないな」

「いいえ」


他2人は俺の両隣でぴったり密着している。些か窮屈だがそんなのは気にならない程に俺は幸福を感じていた。ガールズの感触が少しでも伝わるだけで気分が高揚する。「


ミウ様、口移しでも…」

「おいっ」

「やめんかアニラ」


そう言われたアニラは俺に至近距離で甘えん坊フェイスをして見せた。


「一度だけだぞ」

「ミウ!」

「また甘やかす気…」

「2人もだ。口移しで食べさせてくれ」

「うっ…分かった」

「し、仕方ないのう」


喜悦、羞恥、困惑を混ぜた様な反応だ。口移しなんて俺も含めて初体験だもんな…んむっ。アニラが軽々とやってのけ、ちゃっかり大人のキスもしてからぷはあっと顔を離した。


「いかがでしょう」

「最高だ」

「ミウ様っ」


いてててて。抱き付かれるとバランスが。


「ではお二人の番ですね。アニラは薪を拾って来ます」

「気を付けてな」

「はいっ」


そう返事をしてアニラは灯火魔法を発動させて森に入って行った。


「ミ、ミウ!いいか」

「もちろんだ」


セルビナのぎこちない口移しはなんと言うか新鮮みがあった。


「その、不快ではなかっただろうか」

「不快な訳ないだろ」


そう言ってセルビナの唇にキスをした。ちゃっかりとは言えアニラだけでは不公平になるし純粋に皆とキスをしたい。


セルビナは顔を赤くしてそっと抱き付いてきた。めちゃ可愛い。


イヴの方に身体を向けると既に顔と耳が赤くなっていた。


「大丈夫か」

「む、無論問題ない…!」


イヴの口移しはセルビナ以上にぎこちなく、遠慮がちだったので焦れったくなって俺の方からイヴの口内の肉を奪った後、そのままキスをした。


イヴは俺の服をギュッと掴んだ。


「んっ…」


あ、それはまずいぞ、そんな声聞いたらスイッチが入ってしまう。


「ちょっとミウ様、イヴさんだけ長くないですか」

「そうだぞミウ」

「ごめんごめん、つい」

「もうっ。お膝に乗るのでイヴさん離れて下さい」

「わ、分かっておる!」


その日、3人を順番に寝かし付けながら切実に思った。3人を心底愛してると。


朝になり、泉で顔を洗ってから朝食を取って出発した。


目印の氷の塔まで戻り、そこからはセルビナの先導に従って進んだ。


そして遂にリオス大森林を抜けることができた。


「漸く森を抜けたと思えばすぐに沼地か」

「ここがティブア湿原…霧がかっていてなんだか薄気味悪い場所ですね」

「気を付けろ。ここからは出現する魔物の強さが格段に上がる」

「了解」

「分かりました」

「うむ」


思っていたより沼の割合が少なく、岩場が多い。視界は少し悪いが所々岩場になっていて森林地帯よりは歩き易いので安心した…と思った次の瞬間、物凄い地響と共に巨大な物が目の前に落ちて来た。


「なんだっ!?」

「こ、こいつはっ!!」

「これは厄介じゃな」

「まさかこの魔物は!」


「ギャオオオオォーーッ!!」


「水蛇の怪物、別名多頭竜…ヒュドラだ!」

「くるぞ!」


それぞれが荷物を下ろし武器を出して戦闘態勢に入った。


「皆聞け!あやつの毒のブレスは妾の恩恵では防げぬ代物じゃ!」

「えっ!?」

「分かりました!」

「分かった!」


マジかよ…となると接近戦は避けたいな。ブレスを吐かれる前に頭をぶち抜く!


「回転式杭っ!」 ドシュッ!


「よしっ、初動が遅くて助かった」

「やりましたねっ」


ヒュドラの脳天を見事に撃ち抜いた。意外と呆気なかった…な!?


新しい首が生えてきやがった、しかも2本。


「ギャオオオォー!!」


「ブレスだ、避けろ!」


ブォォォォー!


「ぐっ」

「しまった」


予想外の攻撃範囲だ、避けきれなかった。


「ぐふ」

「かはっ」


吐血だと、なんて即効性のある毒だ、恐らく連続で吸い込んだら死ぬ。


「ミウ様!セルビナさん!」

「解毒薬じゃ。2人とも飲め」

「すまない」

「まさか首が増えるとはな。どうする?」

「ブレスでしたらアニラの風魔法で押し返せそうですが…」

「うむ、頭と首は狙わない方がよいな。胴体を叩くぞ」

「分かった」

「おう」

「来ますよっ」


ドガガッ! ドカッ!!


くっ、前肢と尻尾による物理攻撃もかなり強力だ。まともに受けたらヤバいな。


「妾が視界を遮る!ゆけ!ブラッディペタル!」


花弁状の血刃がヒュドラの視界を遮った。


「行くぞ!」

「待て!ブレスだ!」


ブォォォォー!


俺とセルビナとイヴは攻撃範囲内、避けるのは無理だ。出来るだけ吸わない様に息を止めるしかない。


その隙にアニラがヒュドラの死角に入った。よし、いいぞ。


「嵐風圧っ…」


ドガァッ! 「ぐぅっ」


「アニラ!」


アニラは尻尾で弾き飛ばされ、岩に叩きつけられて動かない。

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