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弟子


ゾンビメイジやスカルナイトが大勢現れたが例によってイヴが瞬殺してくれるので俺達は歩いてるだけだった。


ん、扉が見えてきた。もしやボス部屋か?


「ふむ、少し強い気配を感じるのう」


お、これは期待できそうだ。


アニラが扉を平然と破壊し、中に入ると部屋中に異臭が漂っていた。なんて臭いだ…アニラは悶絶する様に鼻を手で塞いでいる。


奥で巨大な影が蠢いている。あれは…ドラゴン?


「ほう、ドラゴンゾンビか。ブラッディ…」

「待った!こいつは俺にやらせてくれ」

「よかろう」

「お気をつけて」

「油断するな」

「ああ」


3人に荷物を預け部屋の隅で待機してもらい、俺1人でドラゴンゾンビと対峙した。


ダイヤモンドドラゴンほどじゃないが…でかいな。


「グルルルル…」

「連射式粒っ!」


先手必勝で『粒』を打ちまくると、あっという間に穴だらけになった。やはりゾンビ系は柔らかいな。しかしさすがドラゴンゾンビ、骨は硬い様だ。そして穴だらけにも関わらず向かってきた。


「物干し竿っ!」


「グルォォー!!」 ザァンッッ!


爪を立て前肢を大きく振ってきたので掻い潜り首を落とした。


ズズーン!


動かない、終わりか…ちょっと物足りなかったな。


部屋の奥にまた扉があったので開けてみると直線の通路が現れた。その先には大きな扉が見える。


「あれってもしかして」

「恐らくこの迷宮の主の部屋じゃのう」

「やっとだな。それにしてもドラゴンゾンビってあんまり強くないんだな」

「当然じゃ。ドラゴンとは言えアンデッドの部類。せいぜい下位のドラゴンと同等と言ったところじゃな。竜の気配がしたから期待させてしまったが的外れじゃったのう」


扉の前まで来ると今までの魔物とは違うことに気が付いた。扉の向こうから強力な魔力を感じる。


「これは…少し手こずるかもしれんのう」

「そうだな」

「どんな魔物でしょうか」

「開けるぞ」


ゴゴゴゴゴ…。


重い扉を皆で開けると、そこに居たのは霊気を纏った双頭の巨大な犬だった。先のドラゴンゾンビと同じくらいの大きさだ。


「これは驚いたのう。まさか魔犬の上位種オルトロスがこのダンジョンの主だったとは」

「上位種ってことは強いのか?」

「今までの魔物に比べたら桁違いかもしれないが、今の私達にとっては差ほどの脅威にはならないな」

「初めて見ました。大きいですね」


「ガルルルル…!ガァーーッ!!」


ゴォォォーッ!


「うおっ」

「きゃあっ」

「闇の炎か。セルビナよ、心地好いとは思わんか」

「ふっ、そうだな」


オルトロスが口から黒い炎を吐いた瞬間、イヴとセルビナが前に出て真っ向から受けて防いだ。


「2人とも平気なのか」

「ああ。力量差もあるが基本的に闇属性の魔法は魔人族と怪人族には殆ど通用しない」

「こやつは妾が葬る」

「ちょっとイヴさん…!」


イヴはスタスタと歩いてオルトロスに接近した。


「ガウッ!!」


オルトロスの噛みつきをひらりと躱し頭上を取った。


「加減は無しじゃ。ブラッディ サイズ オブ ジャッジメント!」


ズバァンッ!!


イヴは血の大鎌でオルトロスの頭部を2つ同時に落とした。


ズゥーン…。


「仕舞いじゃな。これでレクテ近郊も安全じゃろ」

「もうっ、ずるいですよイヴさん」

「ふふ…すまぬな」

「皆お疲れ様」

「ミウ様、活躍の無かったアニラをお許しください」

「じゃあお仕置きにそのモフモフの尻尾を触らせてもらおうか」

「そ、それは…できれば2人きりの時にお願いしても…」

「ん?」


イヴとセルビナを窺う様に見るアニラに対して2人は怪訝そうにしていた。あ、そういえば尻尾弱いんだっけ。


「そんなことより部屋の奥を見てみろ」


おおっ!金銀財宝!宝の山だ!


「やったな。どれを持って帰る?」

「そうじゃな…大量の硬貨は差ほど価値は無い。甲冑や剣や像は運ぶのが難しい…となるとやはり装飾品であろう」


俺達は硬貨の山を掻き分けて装飾品をメインに集めて持てるだけ持って地上に向かった。


魔物が居ないお陰で行きに比べてだいぶ早く進めた。そして『未知の古跡』から無事帰還。


レクテのギルドに行くとかなりの数の冒険者が俺達を出迎えてくれた。結果を報告すると歓声が沸き起こった。


「まだダンジョンの最深部に宝の山が残っている。今なら魔物は出ないから好きに取って来たら良いんじゃないか」


「オオオーーッ!!」


我先にと冒険者達はダンジョンへ向かった。


「よろしかったのですか?」

「ああ、充分回収したからな。これ以上欲張る気は起きない」


報酬も要らないと伝えた。代わりに俺達『クローバー』の記章をギルドに飾らせてもらった。


依頼した武具の完成までまだ一週間以上ある。クエストは暫く休んで鍛練でもするか。


「あのう…」


ん、冒険者か?


「なんだ?」

「俺達5人、Dランクの『引き裂く五爪』ってパーティーなんですけど、ミウさんにお願いがあって」

「お願い?」

「はい…よろしければ魔力の扱い方を教えてほしくて…我々獣人は身体能力は高いのですが魔法が苦手でして…でも俺達、どうしてもミウさん達みたいに強くなりたいんです。お願いします!」

「お願いします!」


そう言って5人揃って深く頭を下げた。そういえばアニラも最初は魔法苦手だったな。時間もあるし丁度良いか。


「分かった。因みに属性持ちは居るのか?」

「ありがとうございます!はい、2人います」

「そうか。一般魔法は習得済みか?」

「はい、感知、治癒、強化等の基礎的なものは全員習得してます。まあまともに扱えてませんが…」

「イヴ、頼めるか」

「構わんがその間ミウ達は何をするのじゃ」

「俺はセルビナと剣術の腕を上げたい。アニラもイヴと一緒に行って魔術の腕を磨け」

「そんな、ずるいですよセルビナさんと2人きりなんて!」

「騒ぐでないアニラ。ミウはちゃんと公平になる様に埋め合わせしてくれる。そうじゃろ」

「当然だ。お仕置きもまだだしな」


と冗談混じりに言うとアニラは予想外の反応だった。


「お、お仕置き…ミウ様にお仕置き…ああ、アニラは幸せでございます」


お仕置きされるのが幸せって完全にそういう性癖を持った人の言葉だな。セルビナとイヴは軽く引いている。


「決まりだな。明日からでいいか?」

「はい!よろしくお願いします!」


それから一週間、俺はセルビナと、イヴはアニラと『引き裂く五爪』の鍛練をした。


このパーティーは見所がある。特にリーダーの狼の獣人ヘルキバと鼬の獣人イーレの2人は戦闘力が高く、炎と水の属性魔法を持っているので魔術の腕を磨けば相当強くなるだろう。他の3人、メイラ、ネティ、クレアもなかなか才がある。このメンバーなら弱みだった魔法を自在に扱える様になればBランクまであっという間に上がってこれるはずだ。


それにしても俺達が教えを乞われるとはな。


「今日で修行は仕舞いじゃ。皆、ここまでよくぞ腕を上げた」

「師匠のお陰です、ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

「イヴ、待ちに待った武具を引き取りに行くぞ」

「あ、ミウさん!お世話になりました。ここを発つ際は是非とも俺達に見送らせて下さい!」

「ヘルキバ、俺は何もしてない、感謝するならこの偉大なる吸血鬼イヴカロンにしてくれ。出発は明日だ、見送り頼むよ」

「はいっ!」

「お主、妾をからかっておらぬか」

「まさか。俺はイヴのことを本気で偉大だと思ってる」

「そ、そうか」


照れてて可愛いな。しかし本音にしても…チョロいぞイヴ。


「アニラは収穫あったのか」

「もちろんです、次の戦闘でどれだけ魔術の腕が上がったかお見せしますっ」


む、胸が。


「はぁ…さっさと鍛冶屋に行くぞ」


うんざりする様にセルビナが言った。

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