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帰郷


「10年経つのだろう。引っ越している可能性はないのか」

「それはないと思います。アニラ達白狐の獣人は希少種で、他国に渡ればアニラの様に狙われる危険性が高いので」

「成る程な。国内で拐われるくらいだもんな」

「うむ、リスクを冒してでも拐いに来る程の価値があるということじゃな」


「アニラッ!」


突然アニラと同じ白狐の獣人の女性が駆け寄って来た。


「ママッ!」


2人はそのまま泣きながら抱き合った。


まさに感動の再会だ。その様子を俺達は少し離れて見ていた。


「良かった…本当に良かった…においで直ぐに分かったわ。パパを呼んで来るから家で待っててちょうだい」


「ママ待って。アニラは今冒険者で、この人達が仲間。そして命の恩人なの」


アニラのお母さんは俺達の目の前に来て深く頭を下げた。


「娘を助けていただいて心から感謝します。お礼も兼ねてどうか我が家でお休み下さい」


「あ…ではお言葉に甘えさせていただきます」


そうして俺達はアニラの家にお邪魔した。


「わぁ、懐かしい…何も変わっていません…。あ、今お茶を淹れますねっ」

「手伝おう」

「ありがとうセルビナさん」


暫くすると乱暴に玄関の扉が開けられた。


「アニラッ!アニラーッ!」


ドタドタ走って来たアニラのお父さんは号泣しながらアニラを抱いた。


「パパ、心配掛けてごめんなさい」


「何を言うんだ。お前は何も悪くない。悪いのは人攫いどもと守ってやれなかったパパだ。また会えるなんて夢の様だ、よく戻ったなアニラ…パパは嬉しいぞっ」


それから俺達に向き直り深々と頭を下げた。


「妻から聞きました。愛娘を取り戻していただいて心より感謝致します。宜しければお礼をさせてもらえないでしょうか」


「自分にお礼を頂く資格はありません。大事な娘さんをご両親の許可無く冒険者にして危険に晒しているのですから」


「ミウ様、お約束は守ってもらいます。ここからはアニラが」


「ああ、そうだったな。じゃあ宿に戻るよ。俺達のことは気にしないで好きな時に戻って来い」


「はい、感謝致します」


ご両親に挨拶をしてアニラを残し、3人で宿に戻った。


「アニラをここに置いて行くという選択肢もあると思うが」


「セルビナよ、アニラがどれ程ミウを好いておるか知らぬ訳ではあるまい」


「そうだが…10年ぶりに帰って来た一人娘がまた去ってしまうのは親として辛いのではないのか」


「俺もそう思ったけど…以前そのことを言ったら珍しくアニラが怒ったんだよ」


「当然じゃ。お主はただの恩人ではなくアニラの生きる理由そのもの。その存在の大きさは最早実の親を越えていると言えよう」


「アニラのこと、よく解っているんだなイヴ」


「無論じゃ。妾にとってもお主が生きる理由だからのう」


「わ、私もだ!私も2人と同じだぞ」


お、珍しくセルビナが焦ってる。普通に可愛い。


「2人ともありがとう。俺にとっても3人は生きる理由そのものだ」


その夜、アニラ不在の為3人で川の字になって寝た。


例によってイヴに催眠魔法をかけてもらい、無理矢理眠りに就いた。


「起きたか」

「お、おはようセルビナ」


…顔が近い。ずっとこの距離だったのか?


「ふっ、ミウの寝顔は癒されるな」


朝日の中、笑みを浮かべたセルビナはとても魅力的だった。吸い寄せられる様にゆっくり顔を近付けたその時、後ろから寝息が聞こえることに気付いた。


「よし、起きるか」


「そうだな。顔を洗って来る」


そう言ってセルビナは部屋出て行った。起き上がり、隣を見るとイヴがまだ寝ていた。吸血鬼って皆朝が苦手なのかな。寝顔は幼くて可愛いんだよな。頭を優しく撫でると、「ん…ミウ…」と色っぽい声が漏れた。確か前にも同じ様なことがあったような…兎に角これは危険だ。理性を失いそうになる。


「おーい、眠り姫」

「む…うん?」


起きた起きた。


「おはよう、まだ寝足りないか?」

「うう…あと1時間…」

「駄目だ」


あと5分、だったら全然許してたけど1時間はちょっと長い。


「せめて30分…」

「はぁ、分かったよ」


俺も顔洗って着替えておくかな。


その後、3人で朝食を済ませ鍛冶屋に向かった。


希望の武具は道中4人で散々話し合って決めておいた。


「おう、あんた達だな。ダイヤモンドドラゴンの素材で武具を作って欲しいってのは」


で、でかい。このおっさんは…熊の獣人か?


「そうだ。俺は冒険者のミウ。よろしく頼む」


「鍛冶職人のルダンだ。まさかまたダイヤモンドドラゴンを材料に武器を作れるなんてな!礼を言うぜ兄ちゃん。まあ先ずは要望をきっちりと聞かないとな」


俺達は店の奥に案内され椅子に座るよう促された。


ルダンはわざわざお茶を淹れてくれた。ハーブティーか、なかなか美味しい。


それからみっちり打ち合わせして正式に武具の製作を依頼した。とは言え俺達の要望は割りとざっくりで細かい部分は全てルダンに任せた。


どんな物ができるか、実に楽しみだ。


「完成までの2週間は特にやることないし、レクテの冒険者ギルドに行ってみるか」

「ああ。鍛練になりそうなクエストがあると良いな」

「そうじゃな」


俺達は獣人街レクテの冒険者ギルドに向かった。

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