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試練


それにしても異世界でも乗り物酔いってあるんだな、まあ人体の構造が同じなら当然か。


前世の俺は子供の頃から乗り物酔いが酷かったからこの2人の辛さが痛い程分かる。


冷たい水を飲ませて暫く寝かせよう。


「セルビナ、申し訳ないがコップに注いだ水を冷やしてくれ」


「うぅ…フリーズ…ミスト」 パキキッ。


「よし、2人とも飲めるか」


2人が座って水を飲んでる間に野原の上に毛布を敷き、1人ずつ抱えてゆっくり寝かせた。


ここで催眠魔法。乗り物酔いは眠るのが一番だからな。


2人は寝息を立て始め、そのまま昼過ぎになった。


先にセルビナが目を覚ました。


「具合いはどうだ?」

「頭が痛いがだいぶよくなった」

「二日酔いの薬だ。それ飲めば頭痛もなくなるだろ」

「感謝する」


「うーん…」


次にイヴがお目覚めだ。


「頭痛いか?」

「…うむ」


二日酔いの薬を差し出すとイヴは申し訳なさそうな顔で受け取った。


「すまぬ」

「気にするな」


2人ともだいぶくたびれている…乗り物酔いするとどっと疲れるんだよな。


「すまないミウ、いきなり足を引っ張ってしまって」

「妾もじゃ、反省しておる」

「ははは、こんな事で落ち込むなよ。急ぐ必要は無いんだ、のんびり行こう。それに足を引っ張り合うのが仲間だろ」


2人は顔を見合わせてから笑った。うん、顔色悪いけど普通に可愛い。


「もう少し休んだら出発しよう」

「分かった」

「うむ。時にミウよ、傍に座ってもよいか」

「ああ、いいぞ」


珍しくイヴはアニラみたいに俺の腕にギュッと抱き付いて寄り掛かってきた。む、胸が。


体調悪いから甘えたい気分なのかな。


「私もいいか」

「もちろんだ」


セルビナも?珍しいな。


む、胸が…ガールズに貧乳は居ないからな。それよりこの状況をアニラが見たらどんな反応するか。


暫く3人でくっついて座っていると日が傾いてきた。


「歩けそうか?」

「うむ」

「大丈夫だ」


街道を歩いていると段々暗くなってきた。カンテラの準備しておくか。まあ2人に両腕をホールドされてるから背負い袋から取り出せないんだけど。


「2人がこんなにくっついてくるの珍しいよな」

「わ、妾は以前からこうして歩きたいと思っておった」


えらい恥ずかしがってるな。可愛いぞイヴ。


「私も前からこうしたいと思っていたが遠慮していた」

「セルビナ、遠慮なんてしなくて良いぞ。少しはアニラを見習ってくれ、分かったな」


そう言って笑うとセルビナは耳を赤くして微笑み頷いた。


「イヴ、背負い袋からカンテラと石油瓶を取ってくれ」

「うむ」


辺りはすっかり暗くなってしまった。お腹空いたな。


グゥ~。ほら、お腹も鳴った。


「妾も空腹じゃ」

「私もだ」

「背負い袋の中に保存肉がある。アニラが入れてくれたんだが、食べるか」

「貰おう」

「私も戴く」


3人でモグモグしながら歩き続けていると遠くに灯りが見えてきた。アニラ達か?


すると灯りが1つこちらに物凄い速さで向かって来た。


「ミウ様ーっ!」


そうか。アニラは目も良いし鼻が利くんだった。


他の2人はスッと俺から離れた。


「待たせて悪かっ…」


ガバッと力強く抱き付かれて危うく倒れそうになった。


「ど、どうしたアニラ」

「心配しましたっ」


そう言って潤んだ瞳で上目遣いしたアニラはとびきり可愛いかった…恐るべし甘えん坊フェイスだな。


「ごめんな、遅くなった。電話があればな」

「…デンワ?」

「いや、何でもない。お、もしかして晩ご飯作ってくれたのか」

「はい。みんなで食べましょう」

「ありがとうアニラ」

「世話をかけたな」

「申し訳ない」

「気にしないで下さい」


馭者のおっさんも一緒になり、皆で食事をしてから寝床に就いた。


旅の出発前に4人で話し合って添い寝はしないと決めた。俺はきっと堪えられないからな。その代わり毎晩の寝かし付けを要求された。


「2人とも、船に乗ったことはあるか」

「いや、私はない」

「妾もじゃ」

「凄く言いにくいんだが…船酔いは馬車酔いの比じゃないぞ。物凄く揺れるからな」


イヴとセルビナは戦慄していた。


「カウソスに残るか?馬車でこの調子だと正直かなり辛いと思う」

「くっ…そうはいかない」

「そ、そうじゃ。4人で旅をしておるのに別行動など」


「分かった。そこで1つ提案なんだけど、気分悪くなる前に催眠魔法で眠るのはどうだ?馭者のおっさんに聞いたらティーバまでは船で3時間弱だそうだ。アニラの風魔法使って船の速度を上げればもっと早く着けるから寝ている間に到着するだろ」


「おおっ!それはよい考えじゃ!でかしたぞミウ」

「そうだな!それなら苦しまずに済む!感謝するぞミウ」


2人とも分かりやすく喜んでいる、普段は割りとクールなんだけど乗り物酔いが余程嫌なんだろう。うんうん解るぞその気持ち。俺も前世で飛行機やバスで酔って旅行とか全然楽しめなかったからな。


3人を寝かし付け、交代しながら俺も眠りに就いた。


夜が明け、直ぐに荷馬車は出発した。


カウソスまではまだ遠い。実験も兼ねてイヴとセルビナに催眠魔法をかけて眠らせた。2人とも魔法耐性がかなり高いから結構苦労した。おかげでヘトヘトだ。


俺も眠くなってきたので欠伸をしているとアニラに笑われた。


「アニラの膝をお貸ししましょうか」

「それじゃあお言葉に甘えるよ」


予想外に喜ぶアニラの膝枕で横になると、アニラは少し躊躇いながら言った。


「ミウ様、髪に…触れてもよろしいでしょうか」

「ん、構わないぞ」


やんわりと俺の髪に触れたアニラはうっとりしていた。


「ミウ様の髪の毛、とても美しいです」

「そうか?」

「はい。指通りがよく、こうして触れているだけで心地好い気分になります…それに綺麗な色…」

「褒め過ぎだぞ」

「事実を述べてるだけですっ」

「そうか…嬉しいよ」


なんだか急に眠気が増して俺は眠りに就いた。


暗くなってきたら再び野営をして夜を明かし、翌朝に出発。


実験は成功の様でセルビナとイヴは殆ど寝てる間に港町カウソスに到着したのでピンピンしていた。

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