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門出②


王の意向で俺達4人はAランク冒険者に昇格して二つ名を与えられた。


とは言えアニラとセルビナは元々呼ばれていた『白嵐のアニラ』『濃藍のセルビナ』だ。イヴは『朱刃姫イヴカロン』で俺は『創造士ミウ』何かイヴの二つ名が凄い格好良くて羨ましい。俺のなんて資格の名称みたいで迫力に欠ける。


そして待望のパーティー名も決まった。その名も『クローバー』だ。


由来は4人→四ツ葉→クローバー…それだけだ。まあ幸運の四ツ葉のクローバーという意味も込めて。シロツメクサという植物はこの世界には存在しない様なので、俺の故郷の話と称して説明したら3人とも気に入ってくれた。


皆でデザインして作成したミゥーズ傭兵団とクローバーのロゴとシンボルマークをルムリス達の薬屋と王城に飾らせてもらった。


これで王都アルディアは俺達のホームみたいなものだ。


「ミウさん絶対帰って来てねっ」


そう言ってレリスは泣きながら抱き着いてきた。


「必ず帰るよ。元気でなレリスちゃん」

「うん、ミウさん大好きっ」


レリスは唇にキスしてから再び抱き着いた。ガールズが見てたらどうしよう。


「ミウさん、身体を大事にあんまり無理しちゃ駄目ですよ」


そう言って涙を拭いながらルムリスは俺の唇にキスをした。


2人の頭をこれでもかと撫でているとアニラがやって来た。


「ミウ様、そろそろ出発です」

「すぐに行く。じゃあ2人とも、行って来るね」

「行ってらっしゃい」


「随分と愛されておるな」

「ま、まあな。それにしても国王がわざわざ王都の外までお見送りとは驚いたよ」

「当然のことだ。そなたは我が国の英雄だからな。無事に帰って来るのだぞ」

「ああ。王様も元気でな」


俺は荷馬車に向かった。ミゥーズ傭兵団が総出で荷物を運び、荷台に積んでくれた。


「ボス、どうか気を付けて」

「ああ。留守の間色々と頼んだぞダレア」

「お任せを。イヴ姉さん達も居るので大丈夫だとは思いますが、無理せず引くこともお考えになって旅をして下さい」

「ありがとう。肝に銘じておくよダレア団長。お前達もクエスト代行であまり無茶はするなよ。あとお金は充分あるからもう少し贅沢な暮らしをしてくれ」

「承知致しました、お気遣い感謝します。ほらポルメネ、あなたも何か言ったら」

「はい…」

「どうしたポルメネ。今生の別れじゃあるまいし」

「ボス、どうかお身体に気を付けて…」


なんだかモジモジしている…何か言うのを躊躇っている様な。


「ポルメネ、行ってくる」


そう言って優しくハグすると、ポルメネは待ち望んでいた様に俺の腰に両腕を回してギュッと力を入れた。


「大好きなボス、帰りをお待ちしています。いってらっしゃい」


「ゴホンッ!ミウ様行きますよ!早く荷台に乗って下さいっ」


まずい、アニラがご立腹だ。


「わ、分かった。緊急時は転送石で戻るからよろしく頼む、それじゃあ行ってくる!」


「ボス~!姉さん方~!いってらっしゃい~!」と男どもは泣きながら手を振っていた。俺は若干貰い泣きしそうになって焦った。


荷馬車が動きだす、いよいよ俺達4人の冒険が始まるのだ。


港町カウソスまでは馬車だと1日掛からないくらいだ。暗くなったら野営して明るくなったら出発って感じか。


馬車には初めて乗るけど地面が舗装されてないので結構揺れる。乗り物酔いとか大丈夫かな…。


「もうっ、ちゃんと埋め合わせして頂きますからねっ」

「分かったからそんな顔するな、美人が台無しだぞ」

「まあ、美人だなんてっ」


俺はくっつくアニラの頭を撫でながら話した。


「カウソスで1泊して翌朝出る船に乗って獣人国ティーバに渡る、合ってるか」

「ああ。こういう時は何か手土産を買って行くべきなのか?」

「そうじゃな。獣人族は酒好きが多いが、どうじゃアニラ」

「確かにお酒なら皆喜ぶかもしれません」

「決まりだな」

「カウソスに着いたら見て回ろう」

「ところでミウはなぜ魔王討伐を決めたんだ?」

「言われてみれば妾も具体的な理由は聞いておらんな」

「アニラも聞いておりません」

「そうだったな。本当は忘れてしまうつもりだったんだが…ポマリス村で俺が体験した出来事と同じことがどこかで起きてるかもしれない…そう考えたらどうしても麗らかな生活は送れそうにないと思ってな」

「そういうことでしたか」

「なんともミウらしい理由じゃな」

「そうか…ミウ、その件は本当にすまなかった」

「あれはセルビナの指示じゃないんだから気にするなよ」

「…ああ」

「やはり魔王軍による世界への影響は大きいのですか?」

「そうだな…確かに魔王軍は人間にとって脅威だ、北では数年前から魔国デスピアの魔王軍と西に聳える『城郭都市フスレイウ』の軍がにらみ合い続いているが…」

「ちょっと待て、数年前?もっと大昔から争っているイメージだったんだが」

「小競り合いはあったかもしれないが本格的に争う様になったのはごく最近だ。前にも言ったが魔王軍が以前より過激になってな…平然と人の命を奪い始めたのが切っ掛けだ」

「そうなのか、それってセルビナが言ってた魔族の迫害や聖騎士による大規模討伐作戦が関係してるのか」

「その通りだ、だからどちらも正義であり悪でもある。人間と同様、魔人族の中には今の私の様に争いを望まない者も大勢いるというのに…まあそれを知ったところで人間は何も変わらないだろうがな」


そうなのか…なんか思ってたのと違う。


俺は魔王=悪だと勘違いしていた。とはいえどうしたものか…魔王軍の過激派だけ始末したところできっと人間の軍は手を緩めないだろうな。


セルビナみたいに争いを望まない魔人族だろうと問答無用で手にかけそうだ。うーん…。


「魔王と平和協定でも結べないかな」

「な、何を言っている!両者共に和解する気が無いのだからそんなこと不可能だ」

「でも争いが続けば罪の無い民に犠牲が出るだろ。人間だろうと魔人だろうと命は大切だ」

「全く、お主にとっては人間と魔族に違いはないのじゃな」

「争いたい奴だけで殺し合ってくれればいいんだけど、そうはいかないのが戦争だよな」

「ふっ、お前は本当に変わった奴だな。ミウの様な人間が沢山いれば良いのだがな」

「まあどのみち目的地は魔王城で変更無しだ。異論はあるか」

「アニラはミウ様と一緒ならどこへでも参ります」

「右に同じゃ」

「私もだ。異論は無い」


数時間後、イヴとセルビナがダウン。乗り物酔いだ。


「うぅ、これは何かの病なのか…?」

「気持ちが悪い…どうにかならんのか」

「恐らく馬車酔いですね。二日酔いのお薬じゃ効きませんよね…」

「そうだな…。暗くなるまで馬車を走らせるからまだ先は長い。アニラ、俺は2人と歩いて行くから馬車に残って護衛を頼む。この辺りは平原だし街道を進むだけだから迷わない。もし何かあったらお互いに狼煙を上げよう」

「分かりました、最低限の荷物に分けておきますね」

「ありがとうアニラ。おっさん、ここで止めてくれ」


馭者に言うと直ぐに停まり不思議そうに荷台を覗いた。


「仲間2人が馬車酔いだ。悪いがこの子と先に行っててくれ」

「分かりました」


「ミウ、迷惑をかけてすまない」

「…すまぬ」

「気にするな。さあ降りよう」


「ミウ様、お荷物を」

「ありがとう、じゃあまた後でな」

「はいっ、野営の準備をしておきますね」


そうして荷馬車は先に行ってしまった。

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