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招待


「ミウ殿!」


騒ぎを聞き付けた騎士団が到着した。もう気も済んだし帰ろう。


俺はしゃがんで倒れてるアギレの胸ぐらを掴んで引き寄せた。


「命を大事にしたいならもう俺達に絡むな」


ドサッ。


「アギレ!」


女の子が駆け寄って来て俺を睨む。


はぁ…可愛い子に睨まれるってこんなにダメージを受けるものなのか。俺は膝をつきアギレに治癒魔法をかけた。こいつは傷だけ治せば良いだろ。


「あなた、どうして…」

「手を」


女の子は躊躇って手を出さないので勝手に掴んだ。この子には魔力回復薬を渡した。薬の小瓶を見ながら女の子はぽかんとしていた。


アギレは悔しそうに俯いて黙っていた。


俺は立ち上がりガールズの元に行った。


「全く、お主は甘い奴じゃ」

「確かにそうだな。セルビナ、さっきはありがとな」

「手を出してすまない。ミウなら平気だと思ったが体が動いてしまった」

「アニラもミウ様の為に動きました!」

「うん、アニラもありがとう。イヴも我慢してくれてありがとな」

「う、うむ」


さっさと宿に戻ってゆっくりしたいな。そう思った瞬間アニラが腕に抱き付いてきた。


「早く宿でゆっくりしましょう」


思わず声を出して笑ってしまった。考えることは同じか。


「どうしました?」

「いや、何でもない。アニラの言う通り宿に戻って休もう」


その後、俺とセルビナの部屋にイヴとアニラも来て4人で夜までだらだら過ごした。


「今更だけど、イヴとセルビナはのんびり過ごすの平気か?」

「ふむ…気の許せるお主等とすなら平気じゃ」

「右に同じだ。私は今まで生きてきて家族以外の誰かと過ごす心地良さを初めて知れた。皆には感謝している」

「そうですね。アニラも皆さんと一緒だと家族と過ごしてる様な気分になります…ミウ様は家族以上の存在ですが」

「そんなこと両親が聞いたら悲しむぞ」

「そうかもしれませんけど…ミウ様の存在はそれ程までに特別なのです」

「妾も同様に想っておる」

「私もだ」

「俺だって同じだよ」


唐突な沈黙が訪れ、顔を見合わせてから4人で笑った。


「そろそろ晩飯を食べに行こうか」

「はいっ」

「うむ」

「そうだな」


と言うことで一足先に4人で祝勝会をした。


いつもより単価の高い店を選びご馳走を食べた。酒も飲み、何だか頭がふわふわして気分が良かった。


前世ではアルコールは殆ど飲めなかったが今の俺は割りと強い方かもしれない。セルビナとイヴは3、4杯で顔を赤くして目がとろんとしてたので強くはないみたいだ。


酔っているガールズも色っぽくて良い。


アニラはまるで水の様にお酒をゴクゴク飲んでいる。


「大丈夫かアニラ」

「うふふ、もちろんですよ~♪」


なるほど、見た目より酔っているな。


「そろそろ宿に戻るぞ。勘定頼む!」


支払いを済ませ、店を出てから宿に戻るまでの道程は大変だった。


アニラはグーグー寝てしまって他の2人はフラフラだったので、アニラを落ちないようにうまく背負いながらイヴとセルビナの二の腕を掴んで支えて歩いた。俺も頭痛いし前のめりで歩いてると段々と気持ち悪くなってきた。これが酒に呑まれるということか。


どうにか宿に着いて受付のおっさんに手伝ってもらって3人を部屋に運んだ。


運び終えたところで俺はトイレに駆け込みせっかく食べたご馳走を吐き戻した。


翌朝、吐いたお陰なのか二日酔いは来なかったがガールズは皆つらそうに唸っていた。頭と胃が痛いらしい。


俺は朝一番でルムリスとレリスの店に走った。


「おはよう」


店の前を掃いていたレリスは箒を放棄して身体に抱き付いてきた。


「ミウさん久しぶり!会いたかったよ!もー毎日忙しくて嫌になっちゃう」


「そっかそっか、お疲れ様」


そう言って頭を撫でるとレリスは胸に顔を押し付けて目を閉じた。


「ミウさんもっと撫でてっ」

「よしよし」

「あ!ミウさん!ちょっとレリス、掃除サボって自分だけずるい!」


珍しくルムリスが声を粗げている。


「おはよう、毎日忙しいんだって?2人ともあんまり無理し過ぎないでね」

「はい。お気遣いありがとうございます。レリス、さっさと替わってよ」

「ん~もうちょっとだけ」

「もう!ミウさん、何かお求めで来たんですか?」

「うん、二日酔いに効く薬ってあるかな」

「ありますよ。今持って来ますね」


ルムリスが店の中に入ると話し声がしてご両親が出て来た。自分の娘が男に抱き付いてるこの状況を見てどう思うんだろ、気まずいな。


「これはミウさん、よく来て下さいました」

「どうもご無沙汰しています。大変そうですね。薬草集め手伝いましょうか、うちは人手に余裕があるので」

「いえいえ!ご厚意は嬉しいですが甘える訳にはいきません」

「そうですか。遠慮しないでいつでも頼って下さい。あ、そうだ。今晩王城で祝賀会を開いてもらうんですけどよければ皆さんを招待させて下さい」

「ええっ!?城に私達を!?」

「あたし行きたい!…でもまた獣人嫌いの人が居たらどうしよう」

「大丈夫だよ。俺の仲間にも獣人は居るし、王に演説頼んでるし」

「演説…ですか?」

「はい。種族や性別で判断しない様に語り掛けて貰おうと思って。うちのパーティーが良い見本ですし」

「わあ!ミウさん大好きっ♡」

「よしよし。それと近々俺達のパーティー名とミゥーズ傭兵団のロゴとシンボルマークを作る予定でして、完成したらお店の目立つ所に飾らせて欲しいです。そうすれば今後手出しする様な輩は現れないと思って」

「宜しいんですか!?そうして頂けるととても心強いです!ミウさん達はこのアルディアでは有名人ですからね!」

「あはは、では決まりですね。祝賀会は今夜、使いの者をよこすので一緒に城に来て下さい」

「はい。何から何までありがとうございます」

「ミウさんありがとっ!」

「いいえ。ご馳走が沢山出るらしいからお腹空かせておいで」

「うん!」

「ミウさん、これが二日酔いの薬です。即効性があるのですぐに善くなると思いますよ」

「ありがとうルムリスちゃん。はいお代」

「そんな!お代なんて結構ですよ。遠慮なく持って行って下さい」とお父さん。

「ではお言葉に甘えますね。それではまた王城で」


と言いつつ密着してるレリスのエプロンのポケットにこっそりお金を入れた。


「ミウさん帰っちゃうの~?」

「王城…?それよりミウさん、帰る前に私も撫でて欲しいです」


俺はレリスを連れたままルムリスの頭を撫でた。


「よしよし。今日の夜また会えるから。詳しくはご両親に聞いて」

「はいっ」


すっかり長居してしまったので俺は慌てて宿に戻った。

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