提案
ミゥーズ傭兵団の本部から真っ先に城へ向かった。
門兵に言って王の居る部屋まで通してもらった。
「よくぞ生きて戻った。ドラゴンは倒せたのか」
「倒せたけど問題が起きて大変でしたよ。王様、あの岩山に住み着いていたのは本当にロックドラゴンだったんだよな」
「貴様!王に向かって無礼だぞ!」
「構わん。ミウよ、我が騙したと?」
「正直疑っている。何せあそこに居たのはダイヤモンドドラゴンだったからな」
「なに!?だ、ダイヤモンドドラゴンだと?何故そんな上位の魔物が…いや待て、お主等まさかダイヤモンドドラゴンを討伐したのか!?」
うーん、この反応…芝居には思えないな、考え過ぎだったか。
「そのまさかだ。始末して死体は氷漬けにして部下達に見張らせてる。騎士団を派遣して死体を王都まで運んで欲しい。報酬は増やしてもらうぞ」
「な、なんと討伐したのか!無論だ!ダイヤモンドドラゴンは全身がかなり希少な素材となる。丸ごと手に入る上に採掘場も再び使える様になるとは…このアルディアは以前より潤うだろう。お主等には感謝しておる。どうだ、明日にでも城に招待するゆえ、盛大に祝わせてくれ。報酬の話はその時ゆっくりしようではないか」
「出来れば明後日にしてもらえるか。うちの傭兵団やそちらの騎士団が戻ってから皆で祝いたい」
「もちろん構わん。では明後日の夕方頃、お主等の泊まっている宿に使いを向かわせよう」
「心遣い感謝する。では騎士団の派遣をよろしく頼む」
「感謝するのはこちらだ。良いだろう、直ぐに手配する」
そう言って王は手を差し伸べてきた。黙って握手を交わして俺は城を出た。
転送石でイヴ達の元に戻り、取り敢えず王都の騎士団が到着するまでここで待つことにした。騎士団は馬で来るので半日も掛からないだろう。
「どうでしたか」
「嘘をついていた様には見えなかった。もしもあれが芝居なら大したものだと思う」
「一国の王だ。それくらいやって退けるかもしれない」
「セルビナの言う通りじゃ。警戒しておいて損は無かろう」
「そうだな。それはそうと3人にこれからの計画を伝えておきたい。意見があれば遠慮なく言ってくれ」
「うむ」
「分かった」
「はいっ」
「先ずはベルギュリウス王からの報酬で俺達の家、ミゥーズ傭兵団本部を改築、増築する。工事の間に長旅の準備を済ませ、余った期間はミゥーズ傭兵団及び俺達全員で鍛練をする。工事が終わって屋敷への引っ越しが完了したらアルディアを発つ。最初の目的地はアニラの故郷、獣人国ティーバだ。船で渡るために先ずは『港町カウソス』へ向かう。取り敢えずはこんな感じだ」
「うむ、よいではないか」
「そうだな。異論は無い」
「ミウ様、改めて故郷に寄らせて貰えることに感謝致します」
「気にするな」
「鍛練の理由はミゥーズ傭兵団を置いて行く責任感か?」
「それもある。あとは純粋に少しでも力をつけたい。これからダイヤモンドドラゴンみたいなのがゴロゴロ居る様な地域を目指すからな」
「確かにそうですね」
「そういえばセルビナ、その刀は魔界の鉱石で作られているんだよな」
「ああ、その通りだが何故だ?」
「同じくらい硬度の高い武器がイヴとアニラと俺に必要だと思ったんだ。主な理由は2つ。1つ目は今回みたいに防御に特化した硬い敵だと0から魔法を発動させての攻撃ばかりになってしまう。それより愛用の武器で攻撃したり自分若しくは仲間の魔法を武器に付与した戦法を混ぜて戦った方が魔力の消費を軽減出来るし攻撃手段も増えると思ったから。2つ目は魔法が一切通用しない若しくは魔法を封じる術を持った敵と戦う際に物理攻撃手段が有れば心強いと思ったからだ。個人的にはセルビナの剣術と魔法を使い分ける戦闘姿勢は均衡がとれてて理想的な気がするんだ」
「成る程な。特に妾とミウは魔法主体の戦闘ばかりじゃからな。アニラは武術を極めておるとは言え魔法を封じられれば素手での戦いになってしまうからやはり防御にも回せる武器はこの先必要になってくるやもしれん」
「確かにそうですね…過去に手甲と足甲を使用したことがありますがいまいち扱いにくい上に直ぐに壊れてしまいました。セルビナさんの刀みたいに重過ぎず、ずば抜けた強度があって扱い易い格闘武具が有ればアニラはもっと強くなれます!」
「それなら今回討伐したダイヤモンドドラゴンを材料に武器を作るのはどうだ。私の『紫骨』程ではないが強度も重量も青銅や鋼鉄より遥かに良い武具が作れるだろう」
「賛成じゃ。あやつの死体の所有権は妾達にあるから問題無いとして、問題はダイヤモンドドラゴンの素材で武器を作れる程の鍛冶屋を見付けねばならんということじゃ」
「それでしたら私の故郷に素晴らしい鍛冶職人がおります。材料さえ持って行けばきっと作ってくれますよ」
「そうか、それならアニラの里帰り序でに頼めるな。素材の件は明後日の祝賀会で王に話してみよう」
数時間後、騎士団が到着した。ダイヤモンドドラゴンの死体がある場所に案内し、念のためポルメネ達を輸送騎士達の護衛に着かせて俺達4人は転送石でアルディアの屋敷に戻った。
先ずは身体を洗いたいがその前にミゥーズ傭兵団に祝賀会のことを伝えないと。
「ボス、お帰りなさい」
「ただいま。悪いがダレアを呼んで来てくれ」
「はい!」
直ぐに現れたダレアに明後日の祝賀会の話をした。
「やったぜご馳走食べ放題だ!」
「国王と仲が良いなんてさすが俺達のボスだぜ!」
「ははっ、仲良しって訳ではないぞ。ポルメネ達が戻ったら全員で城に行ってくれ、じゃあまたな」
「承知しました」
よし、これで身体を洗いに行ける。
「荷物を置いて大浴場に行こう」
「それはよいな」
「そうだな」
「早く身を清めたいです」
俺達は宿に戻り荷物を置いてから王都の大浴場に向かった。
ふう、さっぱりした。
それにしてもやはり湯船に浸かるって良いな…俺達の屋敷にも大きめの浴場を作ってもらおうかな。




