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祝杯


魔力を振り絞れ!


「大玉っ!」

「アイスロックショット!」

「嵐風圧拳!」


ドガガガッ!


「ぐあっ」

「くっ」

「きゃあ」


3人の技でなんとか相殺は出来たが全員後方に吹っ飛ばされた。


ズズーン…。


今のはドラゴンが倒れた音か?


体を起こして見るとダイヤモンドドラゴンはミイラみたいに干からびていて動かない。死に際の一撃だった様だ。


「あやつは失血死した。血液を魔力に変換し回復したゆえ、これより皆の治療を行う。先ずはミウじゃな。全く、無茶しおって」


「すまない」


左手と右腕はズタズタに切れて血だらけ。おまけに魔力切れの状態で無理矢理魔法を使ったから生命力を少し削ってしまった。暫くは休養だな。


全員の治療が終わり、各々回復薬を飲み干してから狼煙を上げた。あとはミゥーズ傭兵団が来るのを待つだけ。明日の朝には到着するだろう。俺達はここで露宿だ。


「野営の準備が整ったぞ。それと死体は冷凍保存しておいた。ダイヤモンドドラゴンの素材はかなりの希少価値がある。鮮度も影響すると聞いたことがあるからな」


「うむ、報酬は予定額を遥かに凌ぐじゃろう。それにしてもダイヤモンドドラゴンとはな…王に騙された訳ではあるまいな。嘘の可能性もあり得る」


「そうですよ。危なかったんですから!」


「そうだな。戻ったらベルギュリウス王とちゃんと話さないとな」


「それよりミウ、疲れたじゃろ。妾の膝を貸そう」


「ありがとう、お言葉に甘えるよ」


俺はイヴの膝枕を使って横になった。


「あー!アニラの膝だって空いてるのに」

「私の膝だって空いているぞ」

「ふん、早い者勝ちじゃ」


うんうん、3人とも今日も可愛い。と言うか皆元気だな。


それにしてもイヴの膝枕は寝心地が良いな…。


「…」


いつの間にか眠っていた様だ。目を開けるとイヴの膝枕は丸めた毛布に変わっていて、目の前にはセルビナが居た。


「ミウ、食事の用意ができたぞ。先に濡らした布で身体を拭いて来い」

「すまない。皆も疲れているのに俺だけ寝てしまって」

「気にするな。今回の戦闘で一番無理したのはお前だ。早く拭いて来い」


濡らした布を渡され、近くの茂みで服を脱いで隅々まで拭いた。さっぱりしたけど欲を言えば風呂に入りたい。せめてシャワー浴びれたらな。


軽装鎧は着けずに薄着で皆の元に向かった。


使った布はイヴが血刃のシュレッダーにかけて火に入れた。


「祝杯を上げねばな」

「勝利の美酒ですね」

「え、酒持って来てるのか」

「無論じゃ」

「はは…抜かりないな」


4人で乾杯し、食事を済ませ寝床に就こうとしたらまた始まった。


「ミウ様、夜は少し冷えるのでアニラと同じ毛布で寝ましょうね」

「おいアニラ、それ程寒くはないぞ」

「貴様、いつも何かと理由を付けおって。さっさとミウから離れんか」

「ミウ様、ご迷惑でしょうか」


出たなこの甘えん坊フェイス。反則的に可愛いんだよな。


「迷惑な訳ないだろ。でも同じ毛布で寝るのは駄目だ。いつもみたいにアニラが眠るまで側に居るから」


「分かりました…」


アニラは残念そうに毛布にくるまった。イヴとセルビナは並んで座り見張る様に俺達を見ていた。これは信用されてないな。


「今日は沢山撫でて下さいねっ」


この子は拗ねてるし…でも添い寝なんてしたら我慢できないからな。


「仰せのままに」


いつも通り手を握りながらゆっくり頭を撫でているとアニラは満足そうな顔をした。


「ミウ様、アニラは今日も幸せでございます」

「アニラが幸せだと俺は物凄く嬉しい」

「ミウ様…」


アニラは俺の手にスリスリと頬擦りして尻尾をパタパタ振った後、暫くして寝息を立て始めた。


そっと離れてからイヴとセルビナを見ると2人は寄りかかり合って眠っていた。皆疲れているんだろう。


敷き毛布を広げ、2人を慎重に寝かせた。


「ん、ミウ…」


イヴの寝言があまりにも愛おしくて抱き締めそうになった。いかんいかん。


「ミウ…」

「悪い、起こしたか」


セルビナはうとうとしながら手を少し挙げた。俺は黙ってその手を握り、頭を優しく撫でた。


なんだか俺も眠くなってきたな…。


目を覚ますとセルビナの綺麗な寝顔が直ぐ側にあった。


これはかなりまずいぞ、どうやらセルビナと手を繋いだまま眠ってしまった様だ。他の2人に見られたら何て言い出すか。そもそも見張り無しで全員で寝るなんて…危険なことをしてしまった、これからは気を付けないと。


そーっと手を放し寝返りを繰り返しながら距離を取った。ふう、これで一安心だ。


ん、足音が聞こえる。ミゥーズ傭兵団か。


「ボスーッ!」

「しーっ、起きるまで待つのよ」


ポルメネか。優しい子だ。しかし残念ながら今ので全員起きた。


「む、ポルメネか」

「ふああ…」

「…」


セルビナは無言。さて俺も起きるふりをするか。


「うーん、よく寝た。お前らよく来たな」

「起こしてすいません!」

「構わない。じゃあ打ち合わせ通りに進めるぞ」

「はい!ロックドラゴンは強かったですか?」

「ああ…えーっと、それも説明しないとな。取り敢えず俺は転送石でアルディアに戻って王と話して来る。騎士団を派遣するように頼むからそれまでドラゴンの死体に何者も近付けるな。あれは俺達の戦利品だ」

「了解しました。では案内をお願い致します、皆行くわよ!」

「私が案内する。皆に事情も説明しておく。ミウ、気を付けて行って来い。ポルメネ、こっちだ」


セルビナを筆頭に10人のミゥーズ傭兵団はダイヤモンドドラゴンの死体がある方へ向かって行った。


「じゃあちょっと行って来る」

「1人で平気ですか?」

「大丈夫だ。30分くらいで戻る。もしも帰りが遅かったら来てくれ」

「承知しました、お気をつけて」

「王は信用できぬ。気をつけるのじゃぞ」

「ありがとう、行ってくる。王都アルディア、ミゥーズ傭兵団本部へ!」


転送石が光りだす。別の転送石にこの場所を記憶させ、直ぐに戻れる様にしてから俺はアルディアへ飛んだ。

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