激戦
「ミウ様!」
「ミウッ!」
「大丈夫だ!」
急いで治癒魔法をかけ止血して魔力回復薬を飲んだ。休む間も無く次の突進が来る。
俺の『杭』でも無傷とは。あれだけ飛び回られてたら『ショットガン』なんて当てられないし…そもそも通用しなさそうだ。ここはやはり逃げるか。いや待てよ、さっきのアニラの技…そうか回転か!
「3人とも、奴の突進2回頼めるか」
「何か策があるのだな。妾達に任せよ!」
「よし、やるぞ!」
「さすがミウ様、アニラは頑張ります!」
3人が前に出て、俺は少し下がり目を閉じて左掌に魔力を集中させた。
『杭』を創造、そして回転させる。あの硬さ、半端な回転じゃ意味が無い。俺の手が耐えられる限界ギリギリまで高速回転させ貫通力を上げる。 ギュウウウウン…。
「私が何とか落とす。高火力の近接攻撃を入れろ!アイスロックスコール!」
氷塊の豪雨がダイヤモンドドラゴンに降り注ぐ。
ドガガガガガッ!! 「ギャウ!」
「高度が下がった!ゆくぞアニラ!」
「はいっ!」
2人は跳躍しドラゴンに接近した。
「とっておきじゃ。ブラッディサイズオブジャッジメント!」
イヴは巨大な血鎌を出現させ思い切り振り下ろした。
ザンッ!!
「連続嵐風圧拳っ!」
アニラは圧拳と嵐風拳を組み合わせた両拳で殴りかかった。
ズドドドドッ!!
咆哮し両翼の羽ばたきで2人の攻撃は中断された。
「ちいっ」
「くっ!」
旋回して次の突進が来る。
3人は急いで魔力回復薬を飲み干した。
「知能の高いドラゴンに同じ手は効かない。次は正面から一斉に撃つぞ!アイスロックショット!」
セルビナは掌から無数の氷塊を連続発射した。
ガガガガガッ!
「ブラッディクロスラージソード!」
同じくイヴは巨大な血剣を発射した。
バキィッ!!
「極大風掌波っ!」
同じくアニラは魔力を込めた大きな風の波を起こし放った。
ゴォー!!
突進の勢いが弱まり、3人はそれぞれ回避した。
相変わらず傷は1つも付かない。
「痛っ…」
回転力で指の皮膚が裂けて血が流れている…だがまだ駄目だ、これじゃ足りない。
ギュウウウウウン…!
ブチブチッ。 「ぐっ…」
皮膚が更に裂け、血がボタボタ落ちていく。ここらが限界か。
「よし、準備ができた!イヴとセルビナは奴の視界を遮ってくれ!アニラは俺の『杭』に追い風の加護を頼む!」
「うむっ」
「分かった!」
「分かりました…ってミウ様!?手が血だらけです!」
「治癒魔法で治すから気にするな。それより早く!」
「承知しました!」
ダイヤモンドドラゴンが突っ込んで来る。
「フリーズミスト」
「ブラッディペタル」
氷の霧と大量の花びらの様な血刃で視界は遮られた。
奴の気配はちゃんと感じる…確実に当てる!
「いくぞ、超高速回転式杭っ!」
ドシュッ! 「ギャオーー!!」
やったか。視界が晴れるとダイヤモンドドラゴンの胸に小さな穴が空いていた。
くそっ。頭を狙ったのに外れたか。あれじゃ致命傷にはならない。
「よくぞやったミウ!妾が奴の血を吸い取って失血死させる!ブラッドドレイン!」
イヴが両手をかざすとドラゴンの傷から血が出て来てイヴの掌に消えていく。凄い、こんな事も出来るのか。これならいける!
「グゥオオオォーー!!」
「ちいっ、おのれ。この魔法は魔力で抵抗されると効力が極端に下がる。もっとあやつを弱らせねば」
「俺がもう1発当てる!アニラ、嵐風拳を応用して俺の『杭』を回転させるのを手伝ってくれ!セルビナにはその間時間を稼いでほしい!イヴは吸血魔法を続けてくれ!」
「承知した」
「任せろ」
「駄目です!風の属性魔法を扱えないミウ様は腕が風圧でズタズタに引き裂かれます!」
「アニラ、頼む。皆で勝ちたいんだ」
先よりも一回り大きい『大杭』を創造し回転させながらそう言って笑い掛けるとアニラは強く頷いた。
「いきますよ!」
俺の右腕に竜巻が起きて『大杭』の回転力が一気に増す。
ギュルルルルルル…! ブシュシュ!
あっという間に右腕が血だらけになった。
「ぐぐぐ…」
「連魔斬!」 キンキンキィーン!
「グオオオォー!」
バチィッ! 「ぐあっ」
魔力の斬撃をものともせず、ダイヤモンドドラゴンは片翼でセルビナを叩き飛ばした。
「セルビナ!」
「平気だっ!」
額から血を流しながら再びセルビナは立ち向かった。
「アイシクルラージショット!」 バリンッ!
巨大な氷柱をくらってもダイヤモンドドラゴンは構わずに高度を上げ突進する体勢を取った。
「アイスロックレイン!」
ドガガガガ!! 「グオオー!」
奴が怯んだ。今しかない!
「セルビナ離れろ!」
もう俺の右腕は真っ赤に染まっていて痛みを通り越して感覚がない。
「くらえ、超高速竜巻回転式大杭っ!」
ドビュンッ!! 「ギャウ!」
俺の放った『大杭』はダイヤモンドドラゴンの翼に安々とでかい穴を空けた。よし、狙いどおりだ。
上手く飛べずに奴は地上に堕ちていく。
今だ!俺は走り出した。
「奴の胸の穴に大技を撃ち込む!吸血を頼むぞイヴ!」
「任せよ!」
リスクは大きいがこの勝機を逃す訳にはいかない。素早く移動してダイヤモンドドラゴンの近くまで行き奴の胸に掌を向けた。
「ショットガン!」 バァンッ!!
「ギャオオッ!」
ダイヤモンドドラゴンの胸の風穴が一気に広がり血が吹き出た。
「よくぞやった!」
物凄い勢いでドラゴンの傷から血液が吸い出されていく、やったか。
「グオオオォーー!」
「な!?」
「危ない!」
片翼で攻撃を…これは避けられない。鎧を創造…いや魔力切れか。回復薬を飲む暇もない。まずいな、直撃する。
「ミウ様!」
「ミウ!」
その時、アニラとセルビナが俺の前に出た。
「な、駄目だ!」




