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情愛


翌朝、イヴに起こされた。


「ミウ、早う起きんか」


早起きの苦手なイヴが珍しいな。


「分かった分かった」


4人で朝食を取り、アニラとセルビナはクエストに行ってもらった。


「2人とも気を付けてな」

「ああ。行って来る」

「はい。行って参ります」


2人を見送った後、イヴと王城に向かった。


城の騎士にロックドラゴン討伐に必要な物を手配してもらう様に頼んだ。


「これで大丈夫かな」

「うむ。何か足りない物があれば買い足しておこう。後は岩竜を始末するだけじゃな」


さて、今日はイヴの為の1日だ。思い返してみればイヴが初めての仲間…それなのに知らないことが結構多い。良い機会だから今日は沢山喋って彼女のことをもっと知ろう。


「イヴって家族とか恋人とか居たのか」


「家族…か。親は居たが吸血鬼に家族愛の様なものは無い。恋人関係も無いな。一族を増やす為に義務的に生殖行為を行うくらいじゃ」


「え、生殖行為ってまさかイヴも…」


「し、しとらんわ!最近までは興味も関心もなかったからのう」


「最近までは?」


「も、もうこの話は仕舞いじゃ」


「あはは、分かったよ」


露店で食べ物と飲み物を買ってから、セルビナと来た都市を見渡せる高台に在る石の長椅子に座った。


「はい、あーん」

「な、何じゃ」

「ほら口開けて」


イヴは困惑しながらも差し出した甘辛肉団子を食べてくれた。


「美味しいか」

「うむ」


モグモグしながら外方向いてしまった、照れ隠しかな。


食後に紅茶を飲みながら俺は聞いた。


「イヴはさ、何か夢…と言うかこの先やりたい事とかあるか?」


「うーむ、興味ある事は幾つかあるが…例えばミウがよく言っている愛する者達とのんびり暮らす…とか。魔物や人を狩り、力を求めていただけの妾には未知の世界じゃ。だからこそ興味がある」


「そうか。じゃあいつか一緒に実現させような」


「本当か」


「もちろん、約束だ」


俺は小指を立てた。


「何じゃ?」


そっか、この世界には指きり無いのか。俺はイヴの手を取り小指を結んだ。


「これは俺の故郷の伝統みたいなもので、約束の証にお互いの小指を絡めるんだ」


「そうか。約束を破るとどうなるのじゃ」


「え、えーっと。まあ何かしらの災いが降りかかるんじゃないかな。針が千本降ってくるとか…それより膝枕してくれ」


「な、また唐突に。まあ構わんが」


イヴは座り直して腿を軽く叩いた。


「じゃあ失礼する」


横になりイヴの顔を見てると両手で視界を防がれた。


「そんなに見るでない」

「あはは、すまん」


それから暫くお互いに黙っていた。心地好い風が吹き、俺はイヴの手を避けて言った。


「イヴ、この時間って俺がよく言っていることに似てるんだ」

「そうなのか?」

「ああ。好きな人とのんびり過ごすってこと」

「んなっ…何を言うのじゃ」


俺は何も言わず笑ってから目を閉じた。


ああ、居心地が良くて眠くなってきた。


頬に違和感を感じて目を開けると、「お、起きたか」とイヴが驚き焦っていた。


体を起こしながら空を見るともう日が暮れ始めていた。


「ごめん。脚痛くないか」

「謝るでない。妾は平気じゃ」

「じゃあまた頼むよ」

「うむ」


俺は立ち上がり伸びをしてから振り向いた。


「ロックドラゴン討伐を成功させてミゥーズ傭兵団の本部が完成したらさ、アニラとセルビナと4人で魔王討伐の冒険に出よう」


「うむ。何処へでも共にゆくぞ」


宿に戻ると俺の部屋にアニラとセルビナが居た。


「お疲れ様。クエスト大丈夫だったか」

「ああ、問題無い。これが今日の報酬だ」

「セルビナが持ってて構わない、好きに使ってくれ」

「わ、わかった」

「ミウ様、アニラは大丈夫じゃありません。明日のデートが楽しみで眠れそうにないのです」


いやそれはクエスト関係ない…けど可愛いから許そう。


「アニラも大丈夫そうだな、取り敢えず晩ごはん食べに行こうか」


「ミウ、先程ポルメネが来て屋敷の片付けが終わったから今夜から全員で寝泊まりすると言っていた」


「そうか。落ち着いたら皆を労わないとな。明日はダレアに内装の依頼を頼んでもらおう」


「妾とセルビナは王城の騎士に頼んでおいた転送石、カンテラ、水筒、食糧を取りに行った後、明後日に備えて市街地で色々買っておこうと思う。何か必要な物が有れば紙に書いて渡すがよい」


「ありがとう。助かるよ」


4人で食事を済ませ、欲しい物リストに回復薬と強化薬に人数分のマントと大きめの背負い袋と書いた。


せっかく遠出するのだから素材をできるだけ多く持ち帰れる様にしたい。それにこれからの冒険にバックパックは必需品だ。


メモを持ってイヴ達の部屋に向かった。


コンコン。


「入ってもいいか」

「うむ」

「どうぞ」


部屋に入ると2人はベッドに寝ていた。


「明日、荷物多いと思うからミゥーズ傭兵団を何人か連れて行ってくれ。メモはテーブルの上に置いておくから」


「分かった。妾とセルビナだけでは民に怖がられそうじゃしな」


「ミウ様、今宵も寝かし付けてくださいませ」


「仰せのままに」


側に寄って跪くとアニラはクスッと笑ってから横向きになって待っている。なんて可愛らしいんだ。


手を握ってからゆっくり頭を撫でると、アニラは目を閉じて間も無くフーフーと寝息を立て始めた。今日もクエストで疲れてたのかな、よくやってくれている。


立ち上がり、イヴに目をやると何かを求める様な表情で俺を見ていた。何度か頭を撫でてから額にキスをすると、イヴは満足そうに目を閉じた。


可愛い仲間達だ。2人ともお休み。


部屋に戻るとセルビナがベッドに座っていた。まるでデジャヴだな。


「ミウ、私も頼む」


2人を寝かし付けて来たことはお見通しか。


「分かった。横になってくれ」


アニラ同様、手を握ってからゆっくり頭を撫でた。セルビナも直ぐに寝息を立て始めた。


やはり日課になりそうだな。


さあ俺も眠りに就こう。

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