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依頼


「よくぞ参った、先ずは急な呼び出しを詫びよう。我はタルハスを納める王、ベルキュリウス」


ああ、嫌な予感がどうしても拭えない。


「初めまして、冒険者のミウです」


まあ知ってるだろうけど。それにしてもさすが王様、貫禄あるな。


「お主等はアルディアではかなり名が挙がっている。最初はならず者の集まり程度にしか見ていなかったが今やそういう次元ではない。20人以上のBランク傭兵団、吸血鬼の首領、闘技場最強の獣人を従え、更には魔王六大凶牙の2人を倒し、うち1人までをも従えておるとか。お主は一体何をするつもりだ」


改めてそう言い並べられるとかなりヤバい集団だな。自分の国にそんな奴等が居たらそりゃ気になるよな。


「そうですね…最終目標は愛する者に囲まれてのんびり暮らすことですが…取り敢えずは魔王討伐でしょうか。あ、その前に先ずは郊外に自宅兼傭兵団の本部を構えたいです」


「のんびり暮らすだと?いや、それよりも取り敢えず魔王討伐だと。ふざけてる訳ではあるまいな」


「勿論です。この世界の冒険も兼ねて魔王城には向かうつもりです」


「やはりふざけてる様にしか思えんが…まあ今は良いだろう。本題に入らせてもらう」


あれ、意外と俺達のこと受け入れてくれてる感じなのかな。


「お主等の存在は脅威であり危険視せざるを得ない。だがそれを拭う機会を与えよう。成功報酬は我の信頼、アルディアでの地位と多額の援助だ」


「やらせて戴きます」


「な、せめて内容を聞いてから決めたらどうだ」


「確かにそうですね。ご説明お願いします」


俺達を恐れる都市の人々を安心させると同時に大金が手に入る。今のところ断る理由が無い。


「アルディアの南西にある巨大な岩山にロックドラゴンが住み着いている。それの討伐を頼みたい。あの岩山の採掘場で取れる鉱物は大切な資源であったが、数年前に奴が突如現れ近付くこともできなくなってしまった。大金を払いAランク冒険者3名に依頼し、騎士団も30名加えて討伐に向かわせたが誰一人戻らなかった。ロックドラゴン1体にAランク冒険者3名がやられるとは思えんのだが」


「承知しました。3日後でも構いませんか」


「あ、ああ構わんが。そんなにあっさりと…何か勝算があるのか?」


「ありませんけど多分大丈夫ですよ。心強い仲間が居るので」


「そ、そうか。ゴホン、最早頼れるのはお主等だけだ。必要な物が有ればいつでも城の者に言うがよい。可能な限り手配しよう」


「お心遣い感謝します、では失礼致します」


それから全速力で屋敷に戻った。


「あ、ボス!お帰りなさい!」

「ただいま。イヴとアニラは戻ってるか?」

「戻ってます!」

「よし、直ぐに全員を集めてくれ」


俺は王の言葉をそのまま皆に伝えた。


「さすがボス。国王直々の依頼とは」

「ロックドラゴンですか。話は聞いていましたが討伐とは…」

「ロックドラゴンってそんなに強いのか?」

「ボス、基本的にドラゴンの討伐はAランク以上の扱いになります」


成る程…それだけ手強いということか。


「俺達で倒すのは難しそうか?」

「案ずるな。ロックドラゴン1体ならば妾だけでも倒せるレベルじゃ」

「そうなのか!じゃあやろう。このクエストの報酬はとても重要だ、何としても手に入れたい。討伐は俺達4人で行く。出発は3日後だ。何か必要な物とかあるか?」


「そうじゃな…件の岩山までだと片道半日と言ったところか。討伐後、往復する手間を省くため転送石が幾つか欲しいのう。後はカンテラ、マント、革の水筒、食糧くらいか。それよりミウ、なにゆえ3日後なのじゃ」


「だって明日はイヴと、明後日はアニラとデートだろ」


「デートだなんて、ミウ様ったら」


む、胸が。


「アニラ、貴様は最後じゃぞ」

「分かってますよ」

「ミウ、言い忘れていたが今日は楽しかった。感謝する」

「俺も楽しかったよ。また行こうなセルビナ」

「ああ、必ずだぞ」


セルビナは多少恥じらっていたが純粋に嬉しそうだった。


「じゃあ今日はもう終わりにしよう。皆お疲れ様」


4人で宿まで歩いているとセルビナがあることに気付いた。


「あの屋敷に住める様になったら相部屋は終わりか」

「そうだな。俺達4人はそれぞれ1人部屋だ」

「そうか…」


ん?どうしたんだろう。するとくっつき虫のアニラが甘える様に言った。


「ミウ様、昔のことを思い出して寝付けない日は一緒に寝ても宜しいですか」

「構わないぞ。無理せずいつでも言ってくれ」

「では今夜お願い致します」

「待て。イヴと一緒に寝れば良いだろう」

「ミウ様じゃないと安心感を得られないので」

「アニラ貴様、都合のよい口実を思いつきおって」

「ではセルビナさん、今夜はイヴさんと相部屋ですね」

「そうはさせない。お前は危険だ」


さらっと許可したけど確かに危険だ。アニラと添い寝なんてしたら我慢できずに襲ってしまう自信がある。


「じゃあアニラが眠るまで側に居るよ。アニラが寝たら俺は部屋に戻る。それでどうだ」

「そんな…」

「うむ。それがよい」

「私も賛成だ」


そういう訳で寝る準備を整えてからイヴ達の部屋に向かった。


既に2人ともベッドに入っていてアニラは横向きになって待っていた。俺はベッドの脇に膝を着いて座った。


「手を握り、頭を撫でて下さいませ」


布団にくるまって小動物の様な表情で言われ、思わずドキッとしてしまった。


「わ、分かった」


俺が手を握り頭を撫で始めるとアニラは幸せそうに目を閉じ、直ぐに寝息を立て始めた。早いな、クエストで疲れてたのかな。そっと立ち上がって部屋を出ようとするとイヴが小声で呼び止めた。


「ミウ、妾も…その…」

「お休みイヴ、クエストご苦労様」


そう言って手を握り、おでこにキスをした。


「う、うむ」


照れてる照れてる、可愛い吸血鬼さんだ。さて俺も寝よう。


部屋に戻るとセルビナがベッドに座っていた。


「眠れないのか?」

「いや、待っていた。今日だけで構わない、眠るまで側に居てくれないか」


セルビナは例え恥ずかしくてもそれを圧し殺してストレートに気持ちを伝えてくれる。そんな気持ちに応えるのは当たり前だ。


「今日だけなんて言わず何度だって従うよ。さあ横になって」

「感謝する」


毛布を掛け、そっと手を握って頭を優しく撫でると、恥ずかしがってギュッと目を瞑るセルビナの顔が月明かりに照らされた。急にこんなことしたら困るかな。


「止めるか?」


セルビナはパッと目を開けて無言で首をブンブン降った。か、可愛い。


「分かったから目を閉じて」

「ああ」


それから間も無くスースーと寝息が聞こえてきたので自分の布団に入った。


ちょっと待てよ、この『寝かし付け』まさか毎日頼んでこないよな…まあそれでも良いか、お休み。

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