拝謁
翌朝、イヴとアニラにはクエストに行ってもらい、ミゥーズ傭兵団には引き続き屋敷の掃除と片付けを頼んだ。
俺はセルビナとデートだ。
皆を働かせておいてどうかと思うが、これから供に旅する相手と仲を深めておくのは大事なことだ。でも埋め合わせはちゃんとしないとな。
「ミウ様、行って参ります」
む、胸が。
「Bランククエストなら心配ないと思うけど、気を付けてな」
「はい。アニラの身を案じて頂いてとても嬉しいですっ♡」
アニラの愛情がどんどん濃くなっていくな。可愛いから全然良いんだけど。
「イヴも念のため気を付けて行って来てくれ」
「うむ。油断も容赦もせぬ。さっさと終わらせて帰って来よう」
屋敷の中をある程度綺麗にしたら内装を職人に依頼しようと考えている。家具も調達しないといけないし、兎に角金が要る。でも先ずは親交を深めたい、セルビナとは二度も殺し合ったからな。
「行こうセルビナ。先ずはギルドに行って冒険者登録をするぞ」
「分かった。案内してくれ」
ギルドで冒険者登録を済ませ、市街地を歩いていると引ったくりに遭遇した。
「セルビナ、手柔らかに頼む」
「分かった」
ボキッ。 「ぐぎゃああー!」
おいおいちょっと待て。腕の骨折るのがお手柔らかなのか、セルビナを嘗めていた。
のたうち回る引ったくりに治癒魔法をかけてから駆けつけた王都の騎士に引き渡した。
被害者の亜人はびくびくしながらもセルビナにお礼を言った。
「構わない。これからは気を付けろ」
「はいっ」
亜人は安心した様子で返事をした。
セルビナの言動は一見愛想がない様に感じるが分かる人には分かる…悪い人ではないな、と。
俺は魔人族=危険って訳ではないことをもっともっと世に広めたい。
「はい、これはご褒美」
炭火串焼き肉を買って渡すと、セルビナは少し驚いた様子で俺と肉を見てからちょっとだけ笑った。うん、普通に可愛い。
「感謝する」
そう言って丁寧に齧り始めた。昨日皆で晩飯を食べてる時も思ったが、何というかセルビナはお淑やかな印象だ。アニラの方がガツガツ食べていた。まああれはあれで可愛いんだけど。
それから都市を見渡せる高台に上がり、長椅子に座って色々聞かせてもらった。この場所は穴場スポットの様なもので人が少ないからとても気に入っている。
セルビナの両親は聖騎士による大規模な魔族討伐作戦により命を落とした。独りになった幼いセルビナは生き抜く為に魔王軍に入り力をつけ幹部まで上り詰めた。あの妖刀は父の形見だそうだ。昨日は話さなかったことだ。少しは心を開いてくれてると信じたい。
「ミウに聞きたいことがある」
「なんだ」
「その、アニラとよく触れ合っているが仲間とは違う何か特別な関係なのか」
「うーん、少なくともミゥーズ傭兵団とは違うかな…そうだな、うん、確かにイヴとアニラは特別だ。気になるのか?」
「正直自分でもよく分からない感情なのだが…ミウとアニラが密着しているのを見ているとその…羨ましく思ってしまう…様な気持ちになる」
セルビナの耳が真っ赤になっていた。か、可愛い!という興奮は抑えて控え目に俺は返した。
「俺はセルビナのことも特別扱いするつもりだからな」
そう言って笑ってみせるとセルビナは下唇を噛みながら目を剃らさずに言った。
「わ、私もミウを特別扱いさせてもらう」
くっ、恥じらい方の可愛さはイヴと互角かそれ以上だな。
夕方になり、差し入れを買ってセルビナと郊外の屋敷に行くと王都の騎士が立っていた。
「お待ちしていた。貴殿が冒険者ミウで間違い無いか」
「そうだけど、何の用だ」
セルビナのことか…?兎に角やばそうだな。
「王城へ来て戴きたい」
ほらヤバい。王城に呼び出されるなんて悪い予感しかない、せっかく屋敷買ったのに王都から出ていけとか言われたらどうしよう。取り敢えず話を聞きに行くか。
「分かった。セルビナ、ここで待ちイヴ達が帰って来たら説明しておいて欲しい」
「了解した」
「ではこれを。場所は王城、謁見の間と仰って下さい」
これは青の転送石。石に転送先を記憶させ、魔力を込めて記憶させた場所の名前を叫ぶと転送される。石1つで人1人分。石は1度使えば消滅する。ロークスの町でセルビナが使っていたのがこれだ。
転送石には種類があり、青は自分用、緑は他人用だ。緑の転送石は魔力を込めて転送させたい相手の体に触れさせて場所を叫べば転送される。深手を負って動けない仲間に使ったりする物だ。
転送石は1つ100ケルンもする高級な使い捨て魔導具だ。
「じゃあ行って来る。あいつらに差し入れ渡しておいてくれ」
「わかった」
「王城、謁見の間へ!」
目映い光の後、景色が変わった。
おお!城の中だ。物凄く天井が高い、なんて広い部屋なんだ。そして目の前には国王が玉座に腰掛けていた




