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仲間③


「ミウ様!」

「ミウ、よくぞ勝った。直ぐに治す」

「ありがとうイヴ」

「全く。ミウが斬られたことに激怒したアニラを止めるのは大変であったぞ」

「え、ああ、本当にありがとうイヴ。こらアニラ、手は出さないって約束だったろ」

「申し訳ありません…ミウ様が傷付くのをイヴさんの様にただじっと見てるなんてアニラにはできませんでした」

「アニラ貴様、後で覚えておれ」

「はは、お願いだからもう少し仲良くしてくれ。さてセルビナ、約束は守ってもらうぞ」

「ああ…そうだったな」


消沈してて乗り気じゃなさそうだな…無理に引き入れても意味がない。


「俺の目標は魔王討伐だ。やはり魔王軍を裏切るのは辛いか?」


「上手く説明できないが、最近よく分からないのだ。私は魔王軍だが悪に染まりたい訳ではない。武器を手に立ち向かって来る者は殺すが悪戯に女子供関係無しに人を殺めたりはしない。だが他の魔王軍は違う」


「妾が先日始末したユビルジウスとやらも闘技場で人間に成り済まし30人以上を殺し、会場の者を平然と巻き込む戦いをしておったな。まあ合法的に殺しを許されている場じゃが」


「そうか…ユビルジウスの奴が」


「まあ嫌々仲間に入られても嬉しくないから無理しなくて良いぞ。その代わりリベンジはもう勘弁してほしいかな」


「もう一度言うが私は魔人族だぞ。忌み嫌われ迫害された種族だ。共に居れば仲間であるお前達にも災いが…」


「種族なんて関係ないって言ったろ。それに迷惑掛け合ってこそ仲間だ」


「ふっ、お前は本当に変わった奴だ…分かった、約束だ。私も共に行かせてくれ」


「ああ。これからよろしくな」


手を差し伸べセルビナと俺は力強く握手をした。


「イヴ、俺はもう平気だからセルビナを頼む」

「うむ」

「セルビナさんっておいくつなんですか」

「あまり覚えてないが20歳くらいだ」

「ではアニラと近いですね」


思ったより若いな…ってあれ?


「そういえば3人って種族バラバラだけど平均寿命はどれくらいなんだ?」


「吸血鬼に寿命は無い」

「私たち魔人族は大体400歳だ」

「アニラ達白狐の獣人は獣人族の中でも特別長命なので300年は生きるそうです」


いや真っ先に俺が寿命尽きるじゃん。


確かこの世界の人間の平均寿命は120歳前後って聞いたことがある。俺の居た世界よりは長生きできそうだけど…300年、400年、不死って。


「そういえばイヴさんはおいくつなんですか?」

「封印されてた歳月を入れると300年は越えておるな」


うーん。寿命のことなんて今考えてもしようがないか…疲れたし帰ってゆっくりしたい。


早く屋敷を住める状態にしないとな。


しかしこれで4人か。パーティー名考えておかなきゃ。


「さあミウ様、帰りましょうっ」


む、胸が。まあこれも癒しだな。


「セルビナ、明日2人で出掛けよう」

「ずるい!何でセルビナさんなんですか」

「そうじゃ。妾はまだ信用しておらんぞ」

「信用と言えばセルビナ、眷属契約を結んでも良いか?」

「眷属契約か…成る程確かにそれなら信用を得ることが出来るな。構わない、よろしく頼む」


それから内容の説明をしてさくっと眷属契約を完了させアニラが話題を戻した。


「どうしてセルビナさんと2人きりになるんですか!」


いてててて。抱き付かれてる腕が痛い。


「妾も同意見じゃ」

「落ち着いてくれ。イヴとアニラとも2人きりで過ごしたいと思ってる。でも順番的に先ずはセルビナと仲を深めたいんだ」

「では次はアニラですねっ」

「何故貴様が決める!」


そんなやり取りをセルビナはぽかんと見ていた。何かこっちが恥ずかしいな。


「次はイヴカロン。アニラは最後だ」

「そんな…」

「ふふん」

「アニラは日頃一番親しく接してくれるからな」

「なるほど!アニラは極めて特別ということですね」

「え、ああ…まあそうだな。さあ帰るぞ」


王都に戻り市街地を歩いていると、人々のセルビナへの視線が凄かった。これ通報されるかもな。王都の騎士と敵対したり追い出されたりしたら非常に困る…不安だ。


宿に着いてもう1人分の宿泊代を追加で支払った。


もう1部屋借りると言ったら「ならぬ。今の妾達は金が惜しい。少しでも節約すべきじゃ」と300歳の吸血鬼に節約をしろと言われた。


「問題ありませんよ。アニラがミウ様のお部屋に移りますので」

「待たんか、それは貴様が決めることではない」

「うーん…セルビナ、申し訳ないが俺と相部屋でも良いか。もし俺が変なことしたらこの2人に告発してくれて構わない」

「変なこと?ミウが良いなら私は構わない」


お、名前で呼んでくれた。


「ありがとう、よろしく頼むよ」


横目で見ると2人は不満そうな表情だった。特にアニラが。


それから郊外の屋敷に行き、せっせと掃除に励むミゥーズ傭兵団にセルビナを紹介した。


初めは皆恐れていたが少しずつ親しげになってくれたがセルビナは慣れていないのかやや困惑気味だった。


皆で晩飯を食べ、風呂に入って宿に戻った。


セルビナは部屋の窓際に立ち、空を見上げていた。


「どうぞ」

「すまない」


ハーブティーを渡すと一口飲んでから話し始めた。


「あんな風に馴れ合ったりしたことがなくてどんな反応をすれば良いのか分からなかった。皆に気を遣わせてしまったな」


「馴れ合うのは苦手か?」


「苦手だと思っていた…だが馴れ合うのは悪くない」


「それは良かった。そういえばセルビナの持ってる刀、見せてもらっても良いか」


「構わんが、気を付けろ。これは妖刀だ」


「妖刀?」


「ああ。魔界にしか存在しない紫色の鉱石で作られた妖刀『紫骨』だ。並みの者が持てば正気を失い扱うことはできない」


鞘から抜いた妖刀は紫色の刀身を月明かりで輝かせていおり、暫く鑑賞した後鞘に納めてセルビナに渡した。


「美しい刀だ。持ち主には劣るけど」

「そ、それはどういう意味だっ」

「そのままの意味だ、そろそろ寝よう。セルビナはベッドな」

「それは駄目だ!」

「俺、ベッドより床に寝る方が安眠できるんだよ」

「そうだったのか。分かった」


嘘は良くないけど、セルビナは引き下がらないだろうからな。


そうして俺は眠りに就いた。

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