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仲間②


「くそっ!この存在価値の無いゴミめ!お前を手に入れるのに幾ら掛かったと思ってるんだ!おい、奴隷の首輪を起動させろ!」


おいおいどこまでクズなんだよ。


「イヴ!」


バシュッ!


血刃がデブ貴族達の足元に刺さった。


「ひぃ!」

「き、貴様何をする!」


「騒ぐな。動けば手足が飛ぶぞ」


ふう、これで落ち着いて話せる。


「何故ご主人様の邪魔をしたのですか。負けたアニラに存在価値はもう無い…生きる理由も無い。もう死なせて欲しいのです」


「君、わざと負ける様な戦い方をしただろ。せっかく磨き上げた君の武術が可哀想だ」


「確かにそうかもしれませんね…でももう奴隷としてご主人様の為に生きるくらいなら死んだ方がマシです。あなたと戦っていてそう思いました。あなたは自分の為、誰かの為にちゃんと戦っている。アニラには何も無い。勝った喜びも生きる楽しみも」


俺は拳を構えた。


「顔を上げろ」


「なるほどそうですか。あなたの手で…感謝します。どうか苦しみの無い様お願い致します」


「任せろ」


俺は左拳に魔力を集中させた。今、自分が創れる最高硬度の鎧を拳に纏う。


「どうせ棄てるならその命、俺が貰う。これからは俺の為に生き、俺の為に技を磨き腕を振るい、そして俺と共に麗らかな人生を送れっ!」


「な、まさか首輪を!?それは無理です!」


俺には解る…あの奴隷の首輪は特注品だ。きっと解除も破壊も不可能…でもそれは恐らく物理的な話。俺の無属性創造魔法なら砕ける。そんな気がする。


自信が有る、獣人美女のために首輪を砕く!


「うおおー!」 バキィッ!!


首輪に亀裂が入り、間も無く粉々に砕け散った。


かなりの衝撃が加わったせいでアニラは気を失って倒れた。もちろん死んではいない。


「ば、馬鹿な!最強硬度の特殊合金製だぞ!」


デブ貴族はかなり驚いている。


「おい審判、勝負は俺の勝ちで良いよな」


「え?あ、はい。アニラ選手戦闘不能により勝者ミウ!」


観客の大半が唖然としてて会場は静まりかえっていた。そんな中ミゥーズ傭兵団だけが歓声を上げてくれた。良い奴等だ。俺は当たり前の様にアニラを抱き抱えて去ろうとした。


「待て!それはわしの奴隷だ!この盗っ人め!絶対に許さ…」


「黙れ」


「ひっ、ひいい。ああ、あぐぐ…」


ドサッ。


イヴの放った邪悪な魔力の籠った殺気でデブ貴族は白目を剥いて倒れた。


「今後、妾達に構うなら命の補償は無い。よいな」


「は、はひ」


という風にイヴが気を利かせてクズ貴族の取り巻き達に恐怖を植え付けてくれた。


ミゥーズ傭兵団に優勝賞金を取りに行かせ、俺とイヴは帰路に着いた。宿の受付でもう1部屋借りる手続きをして新しい部屋のベッドにアニラを寝かせた。


「イヴ、これからはこの部屋で一緒に寝てくれ。色々と頼むよ」


「うむ…」


何か乗り気じゃない感じだ。まあ仲はゆっくり深めれば良い。自分の部屋に戻りベッドに仰向けに寝てふと思った。大きな家が欲しい、と。宿代も長期滞在だと結構掛かるし、ミゥーズ傭兵団もずっと安宿に泊まってるらしい…それじゃああんまりだ。物件のこととか分からないから明日皆に相談してみよう。


コンコン。


気付いたら眠っていた様で、誰かのノックで目が覚めた。


ガチャ。


そこに居たのはアニラだった。


「もう起きて大丈夫なのか、首は痛くないか?」


アニラは跪いた。


「平気です、心配して頂き感謝します。今日からアニラはご主人様の所有物で御座います。この命尽きるまであなた様の剣となり盾となり精一杯御奉仕させて頂き…」


「しーっ、皆寝てるから取り敢えず中に入って」


「も、申し訳ありません。失礼します」


「そこに座って」

「座ってもよろしいのですか」

「もちろんだ」


俺は水をコップに注いで差し出した。


「ご主人様、このようなことはアニラが…」

「早速で悪いけどこれから言う命令に従ってもらえるか」

「はいっ、何なりと」

「先ず1つ目、ご主人様って呼ぶのは無し。ミウで構わない」

「な、呼び捨てなど…」

「2つ目、難しいかもしれないけどもっと碎けた感じで馴れ馴れしく接してほしい。君はもう奴隷じゃない、対等な俺の仲間だ」


「対等な…仲間…。アニラは9つの時に人攫いに捕まり奴隷として売られました。それからはずっと奴隷として生きて参りました…馴れ馴れしくは難しいかもしれませんが努力致します。御名前はせめてミウ様と呼ばせて頂きたいのですが…」


「構わない。アニラのペースでゆっくり変わっていけば良いさ。因みに今何歳なんだ?」


「19で御座います」


拐われて10年間も奴隷として生きてきたのか…よし!


「アニラ、俺は君を目一杯甘やかす。奴隷だったことなんて忘れてしまうくらいに慈しむ」


そう言って俺はアニラをそっと優しく抱き締めた。


アニラは少し怖がった様子で身構えていたが次第に力が抜け、子供の様に泣き始めた。俺は何も言わずに泣き続けるアニラを包み込む様に抱き締めながら背中をゆっくり擦った。


きっと俺なんかじゃ想像も出来ない酷い扱いを受けてきたのだろう…10年も。俺はこの子を思い切り愛そう、生きてて良かったと思える程に。


それから朝までアニラに色んな話を聞いた。


故郷である『獣人国ティーバ』のことや格闘術のこと。


アニラが使う格闘術はそよ風の様に攻撃を受け流し、業風の如く圧倒する…風の属性魔法を持つ者しか扱えない『風制拳』という流派らしい。アニラが風魔法を使えると知ったデブ貴族が皆伝者を雇って強引に身に付けさせたが、アニラには才能が有りあっという間に達人の域まで到達し、それが切っ掛けで闘技場で戦わされていたらしい。しかし魔法のみの扱いはあまり得意じゃないとか。


「ミウ様」

「ん?」

「沢山お話を聞いてくださって感謝します、アニラは幸せでございます」

「幸せはまだ早いな。俺はもっともっとアニラのことを知りたいし、いっぱい甘やかすつもりだからな」


そう言って頭を撫でるとアニラは俺の胸に顔を密着させてモフモフの尻尾をブンブン振った。


「ミウ、アニラはおるか…」

「おはよう。ここに居るよ」

「まさかお主等っ…!」

「いや何もしてない。約束したろ」

「そ、そうか。疑ってすまぬ」

「アニラはいつでも受け入れる準備が出来ております。ミウ様になら何をされても構いません、寧ろ嬉しく思います。因みにアニラは生娘でございますのでご安心を」


生娘…未経験ってことか。アニラは俺の腕をギュッと抱きながら微笑んだ。む、胸が当たってる。


「ほう、随分と元気になったようじゃの」

「はい、お陰様で」


なんかイヴが恐い。


「なあ2人とも、今日は家を探しに行きたいと思ってるんだが」

「そうか…うむ、ゆこう」

「行きましょう」

「それじゃあ朝食を取って…あ、先にギルドに行ってアニラの冒険者登録をしておこう」

「はいっ」


そうして俺達は朝食を済ませてから冒険者ギルドに向かった。

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