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外伝Ⅷ


それから夜は足を止め野営をしてしっかり休み、日中は警戒しつつ慎重に進んだ。


「…妙ですね」

「あぁ。急に動物も魔物も出なくなったぜ」


ガサガサッ。


「ソティリス、どうだ?」

「…」

「どうかしたんですか?」


木に登って辺りを見渡していたソティリスは黙って降りてきて、真剣な表情で言った。


「少し逸れた場所ですが、広範囲の焼け跡が見えました」


「っ!?」


それを聞いて全員で顔を見合わせた。戦闘の痕跡…つまり聖騎士達が近くに居るかもしれない。


「全員気配を殺しつつ最大限の警戒をしろ」


コルトン隊長の言葉に対して私達は黙って頷いた。


ソティリスが言うには人影はないそうだ。潜伏してる可能性も考慮して慎重に進むと、焼け跡の広がる場所に着いた。


「これは…魔術?」

「間違いない。それにこのにおいと僅かに残る木々…ここは森だったようだな」

「俺と同じ火炎魔法か…かなりの威力だな」

「聖騎士の場合は聖炎魔法ですよ」

「たいして変わらなねぇだろ」

「隊長、どうするの?」

「ハァ…ここで撤退したいところだな」

「そうはいきませんよ隊長」

「わかってる。調査任務だからな…最低でも聖騎士、若しくは神国の兵士をこの目で見るまでは帰れない。取り敢えず散開してこの辺りを調べるぞ、出過ぎた真似はするなよ」

「おう」

「了解です」

「はひっ!」

「わかった」

「わかりました」


そうして散らばってから間もなくソティリスが叫んだ。


「どうしたソティリス…なっ!?」

「これはっ…!」


そこにあったのは首を落とされ横たわる遺体だった。


「この装いは…聖騎士でしょうか?」

「おそらく。それにしてもなんという切断面だ、かなりの手練れに敗れたのだな」

「相手は誰だったのかしら」

「つーかこいつが聖炎魔法でここら一帯を焼いたってことだよな」

「そうなりますね」

「…」


他の者がああだこうだ言うなか、カレンは黙って聖騎士の遺体を真剣な眼差しで見ていた。


「カレン、大丈夫?」

「ひぇっ!?だだだ大丈夫ですっ」


「…妙だな」


コルトン隊長が辺りを見回してから難しい顔をして言った。


「隊長、100前後の兵士ですか?」

「ああ…率いてたのはこの聖騎士だろ。だが肝心の兵士達が一人も居ない」

「…確かに遺体や痕跡すらありませんね」

「どうなっているんだ」

「別の場所にいるんじゃねぇの」

「散開して調べるぞ。ただし離れ過ぎるなよ」


5人揃って返事をしてから私達は辺りを調べた。


それから2、3時間が経った。結論から言うと私達は何も見つけることが出来なかった。


「はぁ~、なんもねぇな」

「そうですね」

「たたた隊長、どうしますかっ」

「ハァ…深追いは危険だ、ここらで撤退を…」

「隊長っ!」


少し離れた所に高い木を見つけたと言って向かっていたソティリスが慌てた様子で現れた。


「何か見つけたのか」

「はい。メネーニ方面にあるシスレ大草原を見てきたんですが、かなり激しい戦闘の跡がありました」

「おいおい、シスレ大草原って結構離れてるよな。そんな遠くまで見えるのかよソティリス」

「当然だ。エルフの視力をなめるな」

「ははは、激しい戦闘跡っ…!」

「まあ件の兵士達が何者かと争ったんでしょうね」

「距離的に間違いありませんね。どうしますか隊長」

「取り敢えずソティリスの目で状況がはっきり見える位置まで移動する。ヤバそうだと判断したらすぐに撤退だ…全員気を抜くなよ」

「おうっ」

「はい」

「了解」

「わかりました」

「りゃっ…了解ですっ」


そうして私達はソティリスの目で『シスレ大草原』が見渡せる場所まで進んだ。


いくつかの高い岩を見つけたので私達は岩影に身を潜め、ソティリスは武器を置いて岩の上に登った。


「隊長、まずいです」


降りてきたソティリスは険しい表情で言った。


それを見て全員が真剣な面持ちで耳を傾けた。


「説明しろ」

「はい。結論から言うとおそらく全滅です。痕跡からして強力な雷電魔法による攻撃でやられている兵士と目立った傷はなく絶命している兵士で分かれています…それと魔物の死骸も見つけました」

「なにっ」

「うそ…神国の兵士でしょ、メネーニや同盟国にそれだけの兵力があるの」

「ありえませんね」

「じじじ、じゃあ相手はいったい…」

「つーか魔物もいたのかよ」

「どういう状況だったのかしら」

「隊長、どうしますか」

「ハァ…こりゃかなり面倒なことになったな。直ぐに撤退だ」

「ねえソティリス、外傷のない遺体は多いの?」

「ああ。見るかぎり毒でもなさそうなのだが…」


そう言い掛けてソティリスは何か不自然な点に気が付いた様に思案顔になった。


「隊長、やはりあの数の兵士をどうやって亡き者にしたのか…死因だけでもちゃんと調べた方がいいかもしれません」

「そんなになのか」

「…はい」


ソティリスは慎重な性格だがここまで言い切ることは少ない、それ程までに得体のしれない何かを感じるのか…。


「うしっ、行こうぜ隊長。エルフの勘は大事だろ」

「同感です、明るいうちに時間を掛けて調べた方が安全かと」

「せせせ拙もそう思いますっ」

「ハァ…仕方ねえな。これだけ開けてるんだ、わかってるなお前ら」

「的にならない様、散開しながら不規則に素早く移動して周囲に何か居ないか調べます」

「よし、ソティリスはここに残って安全を確保するまで監視だ」

「了解しました」

「残りは出るぞ」

「おうっ」

「了解っ」

「はい」

「はひっ」


そうして私達5人は一定の間隔を保ちつつ凄まじい速力で大草原を調べ尽くした。


「ふう、大丈夫そうですね」

「そうだな。フレヤ、ソティリスに合流の合図をしろ」

「わかりました」


そして6人で兵士達の遺体を調べた。


「やはり外傷は見当たりませんね」

「どうなってんだよこれ」

「むぅ…おそらくこれは魔術か魔導具によるものだろう」

「命を抜き取るようなものでしょうか?」

「わからない、おそらく神国独自の…」

「つーかあっちの雷電魔法、とんでもない威力だぜ」


エイデンの言葉でソティリスは呆れ、隊長の指示で全員移動した。


「なんて規模なの、それにこれほどの威力…兵士達と交戦した相手は何者?」

「…わからん。とにかく戻って報告する、長居するには危険な現場だ」

「そうですね」

「みみみ皆さんっ」


カレンが少し離れた場所から走ってきた。


「おいカレン、あまり離れるな」

「ごご、ごめんなさい」

「それでどうしたんだ?」

「これをっ」


そう言ってカレンが見せてきたのは白銀色の大きな羽根だった。


「なんだこりゃ、向こうで死んでる魔物のか?」

「はい。みみ、皆さん、あれは普通の魔物ではないです」

「なにっ」

「とにかく間近で見てみて下さいっ」


私達はカレンに促されて全員で魔物の死骸に近寄った。


「なんだ、この魔物は?」

「むぅ…てっきりヒュージレイヴンの亜種かと思ったが…」

「明らかに異なる生物ですね」

「確かに死んでいるとは言え魔物独特の嫌な気配がしないわね」

「ハァ…ただでさえ報告することが多いのに参るな」

「面倒くさがってる場合じゃありませんよ隊ちょっ…」


ドシュシュッッ!!


「うっ…!?」

「がっ…!」 ズボォッ!!


ビュンッッ!!


ザグッ!! 「あがっ…」

ザシュッ! 「ぐっ…!」


ドササッ、ドサッ。


一瞬の出来事だった。


コルトン隊長とソティリスは後ろから兵士の剣で的確に心臓を貫かれ、引き抜いて投げつけられた剣はフレヤの首を貫いた。エイデンはなんとか避けたが首をえぐられて血が噴き出た。


刹那、周りの地面は大量の血で染められた。

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