仲間
「分かった。眷属契約を交わそう」
「最後に1つ!これはその…契約とは関係ないただの願いなのだが…お主が女子に好かれるのは知っておる、しかし妾と共に歩むのならその辺の行為を少し控えて貰いたい。勿論出来る範囲で構わん」
「…よく分からないけど努力する、約束だ。と言うかお前、俺のことずっと見ていたのか。だから色々知っているんだな」
「み、見ていたが全てではない。たまに様子を窺う程度で…その、そういった行為中などは…」
何か勝手にあれこれ思い出して恥ずかしくなってるな。顔が真っ赤になっている。
「まあ良い。さっさと契約を結ばせてくれ」
「うむ、よくぞ言った。ではこの契約の杭に自分の血を吸わせるのじゃ」
イヴカロンが掌で血を固めて小さめの杭を2本作り1本を俺に渡した。腕に刺すのを見て、真似して俺も右腕に杭を突き刺した。痛みは大したことない。刺す前に気付いたがこの杭、さっきこいつが木を両断した血刃とは少し違う。何と言うか不思議な存在感がするが透き通っていて実態は薄い。
「良かろう。では同時に互いの心臓に突き刺して完了じゃ」
「えっ」
「案ずるでない。特殊な魔力を込めてある、多少の痛みはあるが死ぬことはない。妾が今じゃと言ったら思い切り刺せ」
「分かった」
向かい合ってお互いの胸に杭を立てる。
「我、イヴカロンはこの者ミウと永劫破れぬ契りを交わす…今じゃ!」
グサッ。 「っ…!」 「ぐっ…」
互いに刺した杭は胸に溶け込む様に消えていった。身体中に電気が流れる様な痛みだった。
「!?」
これは…力が流れ込んで来る。
「感じるか、それが妾からの贈り物じゃ。内容は身体能力向上、魔力量増加、あらゆる毒無効、聖属性以外の全ての魔法耐性じゃな」
「それは凄い…心から感謝する、ありがとう。これからよろしく頼むよイヴカロン。いや、イヴ」
そう言って手を出した。
「う、うむ。こちらこそよろしく頼む」
俺達は握手をして帰路に着いた。ここから怒涛のイベントラッシュが始まる。
王都付近で賊に囲まれた、20人近くか。中には女性も居る。ルムリス達が言っていた、クエスト帰りの冒険者を狙って報酬を横取りする元冒険者と元傭兵で構成されたならず者の集団、通称ハイエナ。
見るからに頭っぽい奴が俺に近付いて来た。
「俺達のことは知ってるな?怪我したくなけりゃクエスト証明書と討伐証明を置いて消え…」
ザンッッ!
「ひいいっ!」
「うわぁ!頭ぁ!」
ハイエナの頭の首が転がっていく。
「ミウに近寄るな下郎ども」
逃げようとする者、腰を抜かしている者、発狂してる者。これはかなりまずい。冷静になれ、深呼吸深呼吸。
「全員一歩も動くな。逃げた奴は殺す」
「何を言う。こ奴らは皆殺し…」
俺はイヴを睨んだ。
「イヴ、もしもまた勝手に人の命を奪えば君とは縁を切る」
「な、何故じゃ!い、いや分かった!何でも望みを聞くからそんな目で妾を見るな…見ないでくれ…」
イヴは後半泣きそうな顔でか細い声になった。
「イヴ、後でちゃんと説明するから」
先ずはこいつらハイエナだ。人を殺したことをバラされたら王都の騎士団が動くかもしれない。ここには長く滞在するつもりだから騒ぎは御免だ。お尋ね者になんてなったら堪ったもんじゃない。
「たった今からお前達全員は俺の専属傭兵団になってもらう。それが嫌なら死ぬだけだ。仲間になったふりをして油断させてから逃げようとしても無駄だ。さっきの見ただろ、いつでも一瞬で首を跳ねれる。逃げ切れると思うな。分かったか」
我ながらめちゃくちゃだ、イヴの言う通りこいつらを排除すれば治安が良くなるだろう…だとしても皆殺しする訳にはいかない、こんな奴等でも命は命だ。
「全員どうするか今すぐに決めろ」
ハイエナ達は怯えきった表情で互いを見た。
「お、俺はまだ死にたくない。あんたに着いて行く!」
「お、俺もだ!」
「あたしも!」
ふう。数えたところ16人全員が着いて来てくれるみたいだ。まあまだ恐怖で支配してるだけだし俺達はこいつらの頭の仇でもあるからこれから絆を深めるのはかなり難しいだろうな。
「先ずはあんた等の頭を弔ってやれ」
ハイエナ達は街道から逸れた所に死体を埋めた。泣いている奴もいてポマリス村のことを思い出し、申し訳ない気持ちになった。
当のイヴはと言うと俺に叱責されたのが相当ショックだったのか黙ってうつ向いていた。
「ごめんな、キツい言い方して。兎に角後でちゃんと話そう」
肩をポンと叩くとイヴはコクリと頷いた。
王都に入りぞろぞろと引き連れて市街地に行くと、何やら騒がしかった。




