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契約


本日のクエストは王都付近に居るゴブリンの討伐。Cランクのクエストだ。何故Cランクにしたかと言うと赤くなった短剣に何か変化が起きているか調べたいからだ。


早速ゴブリンを発見。数は6体か。短剣を抜き、走り様に思い切りゴブリンを切りつけた。先ずは1体。


そして2体目の体に短剣が触れた瞬間、バキッと音を立てて見事に折れた。


「えっ」


どうして…いや、考えるのは後だ、取り敢えずこいつらを片付けよう。棍棒を創造、速攻で5体討ち取り折れた短剣を調べようとしたその時、折れた箇所から血煙が吹き出てきた。


「なんだ!?」


鉄の臭いが充満する。そして血煙の中から女が現れた。俺は反射的に戦闘態勢をとった。


漆黒の長い髪、真紅の瞳、蒼白い肌。やや細身で身長は160ちょいってところか。笑った口から八重歯と言うか牙?が覗いた。


確実に人間ではない、魔人族か?でも角が無い。


「礼を言うぞ人間、よくぞあの忌々しい封印を解いた。ふふっ、そう構える必要はない。妾はお主の味方じゃ」


「悪いけど信じられないな。お前は魔人族なのか」


「魔人族だと、あんな半端者達と一緒にするでないわ。妾こそは怪人族の吸血鬼三首領の1人、イヴカロン」


「な、嘘だ。怪人族は遥か昔にその強さと邪悪さを恐れられ悪魔と共に聖騎士に滅ぼされたはず」


「妾は一族が滅ぼされた時、既にあの短剣に封印されていたからのう。魔人どもが妾を傘下に加えようと試みた結果、手に負えなくなり恐れて封印しおったのじゃ…。とまあそんなことよりお主には何か褒美をやらんとな」


うーん、普通に美人だけど見下す様な態度が個人的にあまり好きじゃない。


「褒美なんて要らない。封印が解けて良かったな、じゃあ」


討伐証明の部位を回収して帰ろう。ギルドに寄って報酬貰って…そういえば王都には大浴場があるってルムリス達に聞いたから行ってみるか。買い物して帰って、明日はゆっくり体を休める日にしよう。


「ま、待てい!妾を独り置いて行く気か!」


「せっかく自由になったんだから好きにすれば良い。すまないがあんたの態度が少し苦手なんだ。じゃあ」


「ま、待たんか!分かった。妾も嘗められぬ様に振る舞っていただけじゃ、これからは気を付けよう。では共に宿に戻るぞ。いやギルドが先かのう」


何だツンデレか?と言うか宿とかギルドとかどうして知って…


「っておい!今さらっと共に宿に戻るって言ったな。どうしてそうなるんだ、ここで解散だ。まあ王都までは一緒でも構わないが」


「ふふふ。お主、パーティーメンバーを募っておるだろう。妾が加入しよう。有り難く思うが…ゴホン、喜ぶが良い」


いや言い換えてもあんまり変わってないぞ。天然も混じってるのかこいつ。


「因みにあんたは何が出来るんだ。吸血鬼の首領って言うくらいだから強いんだろう」


「お主、そろそろ名前で呼ばぬか。妾は幅広い一般魔法に加え吸血鬼特有の血刃魔法を扱う上に剣術も体術も並みのものではないぞ」


「血刃魔法?」


「そうじゃ。まあ先天的な属性魔法と似たようなものじゃな。吸血鬼の一族は必ずこの力を持って生まれるのじゃ。故に炎や水などの属性魔法を使える吸血鬼はおらぬ。血刃魔法は血液を刃に変えて手足の如く変幻自在に扱える。我らは魔力を血液に変換させることが出来るゆえ血が足りなくなることもない。見よ!」


シャキン! ズバッ!


手の平から血の刃が出てきて側にあった木をあっさり両断した。凄まじい速さと切れ味、しかも攻撃範囲も広い。俺の創造魔法と似ているが精度の格が違う。確かにでかい戦力にはなるのは間違いないが…信用出来ない上に吸血鬼ってことは恐らく血を糧にしてる訳だ。一緒に旅をするならもう少しまともな人材が欲しい。


「すまない。やはり信用できないし旅先で人を襲って吸血でもされたら…ってあれ、日光は平気なのか」


「何を言っておる、日光で絶命する怪人族などおらん。大昔と違って銀や聖水など等の昔に克服しておるわ。まあ聖属性魔法はいまだに少し苦手じゃが…。血を欲する喉の渇きも魔力を血液に変換出来る様になってからは問題ない、人間と同様に食事も取るし排泄も…」


と言いかけて何故か耳を赤くして黙り込んだ。意外と下ネタNGなのか…と言うかそれだと吸血鬼要素があんまり残らない気がする。この世界は俺が思ってる異世界とは若干異なる要素が多々あるな。


「ゴホン、まあお主の言い分も解る。では妾と契約を結ぶのはどうじゃ、信用と信頼を得るには手っ取り早いからのう」


「契約?」


「そうじゃ。妾たち怪人族は悪魔族と同じくらい約束事を重んじておる。大昔は隷属契約を用いておったが時代と共に思考も変わっていってな。最近は眷属契約が主流になっておる」


「眷属ってあんたの従者になれってことか」


「逆じゃ。妾がお主の従者となろう、特別にお主に妾の力の一部を得られる契約内容にもしよう。眷属契約を結べば互いに直接だろうと間接だろうと命を奪う様な真似は出来ぬ。もし破ればその者の心臓に裁きの杭が打たれる」


「待て。良いのか?お前どう見ても誰かの従者になるタイプには見えないが」


「構わん。恩人の信頼と信用を得る為なら大した事ではない」


もじもじしながら上目遣いでそう言われ、不覚にもときめいてしまった。


こいつ…実は良い奴なのか?少なくとも義理堅いのは分かった…こんな申し出を断る程俺は愚かではない。

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