役割
「ティオちゃんお待たせ〜」
「見つかった?」
「ああ」
「これだよ」
「首飾りと似た魔力を感じる」
「そんなこともわかるのか?」
「うん」
「ティオちゃんは優秀だね〜」
「僕もそう思うよ」
「…ありがと」
「ティオ、町まで歩けそうか?」
「うん、平気」
「辛かったら無理しないで言うんだぞ」
「わかった」
「あの〜、いちおうウチらもボロボロなんだけど」
「すまん…少し休んでから出発するか」
「賛成〜」
「賛成」
「僕も賛成だよ」
4人で休んでいるとティオが何かに気付いた。
「あっ、狼煙」
ティオが指す方を見ると黒い煙が見えた。
「メティちゃん、無事ついたんだね〜」
「目的は達しているんだ、僕らもすぐに戻ろうミウ」
「ああ、そうだな」
俺達は荷物をまとめてから歩き出した。道中魔物は一度も出現せず、行きよりも楽な道程だった。イオニスの町に到着し、俺達は真っ直ぐマリカの家に向かった。
「ミウ兄!」
「おっと」
足音で気付いた様でマリカが家から飛び出てきた。
「ただいま」
「おかえりっ」
家に入るとメティが人数分のお茶を淹れていた。
「皆さん、カーラさんがお呼びです」
俺達は顔を見合わせた後、部屋に向かった。
コンコン。
「どうぞ」
「失礼します、今戻りました」
「メティさんから受け取りました。皆さんには本当に感謝しています、ありがとうございました。あの人にもらった指輪をこうしてまた指に嵌めることができるなんて…」
彼女の薬指には俺達が取り戻した指輪が嵌っていた。俺が見た時より綺麗に手入れされてる…メティが気を利かせてくれたか。
「この指輪を見ているとあの人との思い出が溢れるように頭に浮かぶんです…ミウさん達には大恩を受けたのに何もお返しすることができなくて悔やまれます」
「気にしないでください」
「そうそう。ついでだったしね〜」
「そうですよ。それに僕らだってマリカちゃんのお陰で色々と情報を得ることができました」
「うん。マリカの情報提供がなかったらティオ達は勝てなかったかもしれない」
「そうだな」
「そうですか…マリカの…それでも何とお礼を申し上げればいいか…ゲホッ、ゴホッ!」
「カーラさんっ」
「ゼリウス、水を」
「わかった」
俺が背中を擦り、ティオはベッド脇のテーブルに置いてある調合薬をカーラさんに飲ませた。暫くして咳はどうにか治まったが…辛そうだ。
「すいません…少し横になります」
「構いませんよ、では俺達は失礼します。ティオ」
「うん」
ティオを残して部屋を出ると、マリカが心配そうに待っていた。
「お母さん少し休むってさ〜」
「…そっか」
俺は屈んでマリカの頭を撫でた。
「カーラさんの為においしいご飯を作りたいんだが手伝ってくれるか」
「うんっ」
マリカを連れて居間に行くとメティの姿が見えなかった。
「メティさんなら狩りに行くって」
「さすがメティちゃん」
「僕らはどうする?」
「先ずは湯浴みだな、身体も服も汚れてる」
「確かにこの状態で料理と食事はしたくないね」
「同感だよ〜」
「その後は俺とミミルとマリカで準備する。ゼリウスは野草を頼めるか」
「任せてくれ」
急いで湯浴みを済ませてから準備をしていると、大兎と鳥を手にメティが帰ってきたので調理を開始した。
「ミウ」
「ん?」
「明日はメティと薬作りに集中したい」
「わかった」
「2人とも、頼む」
2人は俺の言わんとしていることを察した様子で頷いた。
食事時、改めてドラゴン達の素材について話し合った。
「ネームレスドラゴンの素材は持ち歩くことにする」
「賛成です、いつかきっと役に立ちますよ」
「そうだな」
「ミウくん、ロブドラゴンの素材は元ごろつき達の装備に使うのはどう?」
「なるほど、名案だ相棒」
「置いて行くのはやっぱり勿体ないと思ってさ〜」
「彼らもきっと喜ぶだろうね」
「そうなるとレムイノに戻るということですよね」
「そうだね」
「みんな驚くだろうな〜」
「うん」
「装備の製作はまた『戦神の工房』にお世話になりますか」
「そうだな。じゃあ明日は俺達3人でドラゴンのねぐらに行く」
「私とティオは薬の材料を集めて調合します」
「あのっ、わたしも手伝いたい。お母さんのために…」
「そうか。メティ、ティオ、マリカのことよろしく頼む」
「任せてください。森は危険ですが一緒なら問題ありません」
「うん、ティオ達が守るから安心して」
「ありがとう、お姉さんたち」
「じゃあ明日に備えて寝るか」
「今日はウチが最初に見張るよ」
「わかった」
「お願いします」
「先に休ませてもらうよ」
「マリカさん一緒に寝ましょうか」
「うんっ」
翌日は3人で再びネームレスドラゴンのねぐらへ行き、2体から使えそうな素材を獲った。
「お、重い〜」
「これは重労働だね」
「確かに…」
町に着く頃には空が暗くなり始めていた。予想以上に時間がかかったな。
「うわぁっ!」
家の外にドラゴンの素材が入った背負い袋を置いていると、マリカが声を上げた。
「それ、ドラゴンの?」
「ああ。使える部分はまだ沢山あるが商都まで運ぶのはこれが限界でな」
「見てもいい?」
「もちろんだよ」
ゼリウスとマリカを残して家に入ると、メティとティオがああだこうだ言いながら薬を調合していた。
「ただいま。薬作りは順調か?」
「おかえりなさい。ミウ、私達はやりましたよっ」
「うん。これが効けばカーラさんの苦痛はだいぶ減る」
「それはよかった…少しでも苦しみが和らげばいいと願っていたからな。2人ともよくやってくれた、ありがとう」
「マリカさんも頑張ったんですよ」
「うん」
「そうか、後でちゃんと褒めないとな」
「ティオもミウに褒めてほしい…と言うよりご褒美が欲しい」
「えっ」
「では私も」
「ご褒美って言われてもな…2人ともなにかほしい物あるのか?」
「も〜わかってないなミウくん」
「なんだと」
「2人は抱いてほしいんだよ〜」
「ひぇ!?わ、私は口づけをいただければと思っていました。こんな状況ですし…」
「うん…ティオもそこまでは考えてなかった」
「な〜んだ、じゃあご褒美はキスだけでいいんだね」
「…」
2人は無言で顔を見合わせてから俺を見た。




