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落胆


「あれは…ヒュージレイヴン!」

「大きいね〜」

「ゼリウス、メティ、どうだ?」

「5人でなら問題ありません」

「僕もそう思うよ」

「よし、始末するぞ」

「うん」

「りょーかい」


俺達は荷物を全て置いてそれぞれ武器を手に取った。


「グワァァ!グワァァ!」


「旋回しながら俺達を観察してるのか」

「その通りです。一番非力な者を選び狙うはずです」

「やつは速いのか」

「かなり」

「そうか…」

「やるなら確実に仕留めたいよね〜」

「その通りだ相棒。先ずは逃走できない状態にしたい」

「ティオが動きを封じる」

「じゃあウチが追い打ちする」

「次は俺とメティだ」

「はいっ」

「最後は僕だね」

「頼んだぞゼリウス」

「任せてくれ」


「グワァァァッ!」


「メラン・フィラーキシ!」


「グワッ!?」


突進してきたヒュージレイヴンの身体に黒い靄がまとわりつき、動きを封じた。あれは…闇魔法なのか?


「やあああっ!」


ドシュシュシュシュッ!!


「グワァーーッ!」


跳んだミミルの『ニルファー』による強力な連続突きでヒュージレイヴンの片翼に無数の穴が空いた。


「メティ、もう片方の翼を狙うぞ」

「はい!」


ギュルルルルルッ!


「竜巻回転式大杭っ!」 ドヒュンッ!!


「グワッッ!」


もう片方の翼に風穴が空き、ヒュージレイヴンは地上に降りた。


「グワァァァーーッ!!」


物凄い鳴き声のあと翼を広げ羽撃くと、凄まじい風と共に巨大な羽が飛んできた。あれはまずいな。


「メガロス・シーフナスッ!」


ゴォォォォォーーッ!!


巨大な竜巻が飛んできた羽を阻んだ、さすがだメティ。


「エンチャント・ムーンライトサーベルッ!」


ザァンッッ!!


「グワァ…!」 ズズーン…!


光で模った極大の軍刀でヒュージレイヴンは2つに斬り裂かれた。なんて威力だ、それにあの規模じゃ相手は避けられないだろう。


「お疲れ。今の凄いなゼリウス」

「ウチもそう思った、勇者くんいつの間にあんなのできたの」

「はははっ、後れは取れないからね」

「あとティオの魔法、あれはなんだ?」

「闇魔法と拘束魔法を合わせたやつ。拘束してるあいだ生命力も削る」

「恐ろしいですね」

「ほんとだな」

「でも弱い相手じゃないと直ぐに解かれる」

「確かにあの鳥が羽撃いた瞬間、解除されてたな」

「うん…」

「まあ一時的に動きを封じれれば充分だよ〜」

「そうですね」

「そうだな、よくやったぞティオ」


そう言って笑いかけるとティオは小さな声で言った。


「ご褒美を希望する」

「えっ」

「ティオ、抜け駆けはいけませんよ」

「ま、まあ全員よくやったから町に着いたら少し贅沢しよう」

「やった〜、美味しいお酒と料理あるかな〜」

「楽しみだね」

「うんっ」

「この魔物はどうしますか?」

「そうだな…ゼリウス、こいつの素材の価値はどれくらいだ」

「うーん、売却は可能だと思うけど売値は期待できそうにないかな」

「なら置いていこう。森に放っておけば獣が食べるだろ」

「じゃあとっとと運んで出発しよ〜」


返事をしたあと全員でヒュージレイヴンの亡き骸を運んだ。


その後、野営を挟みながら2日ほど歩くとゼリウスの居た『ヴェザレスの町』と同じくらいの大きさの町が見えてきた。


「あれがイオニスの町だよ。なんと…」

「なんと?」

「まさかまだ内緒なの?もう着いたんだから教えてよ勇者くん〜」

「そうですよゼリウス」

「わかったよ。なんとあの町には野天風呂があるらしいんだ」

「野天風呂って?」

「屋外に設置された屋根や囲いを設けないお風呂だよ。僕も話には聞いていたけど実際に見るのは初めてなんだ」

「野天風呂…知ってたかミミル?」

「ううん、初めて聞いた」

「エルフの里は基本的に野天風呂ですよ」

「そうなのか?」

「はい。ですが私もエルフの里以外の野天風呂は初めてです」

「ティオも初めて」

「はははっ、メティくんは少し違うけど全員が初の野天風呂ってことだね」

「そうだな、楽しみだ」

「楽しみだね〜、早く行こっ」

「行きましょうっ」


それから数時間かけて漸く『イオニスの町』に到着した。しかし道中ワクワクしながら歩いていた俺達の気分は一気に降下することになる。


「…人気が無いね」

「崩壊している建物もあるな」

「この町に何があったのでしょうか」

「取り敢えず人を探そうか」

「うん…」


酒場を見つけたので中に入ると、店主を入れて5、6人男が居た。俺達を警戒するように見ている。


「すいません、少し聞きたいことがあるのですが…」

「あんたら冒険者だな」

「いかにも」

「すぐに町から出て行ってくれ」

「えっ…」

「急だね〜」

「理由を聞いてもいいか」

「ドラゴンを刺激されると困るんだ」

「ロブドラゴンのことですか?」

「違う!もっと危険な竜だ、その辺の冒険者じゃ死ぬだけだ」

「それはどういうこと…」

「ねぇねぇ、お姉さんたち強い?」


気付くと隣に少女が居た。


「おいマリカ、よせ」

「おじさん達には話しかけてないっ」

「なんだとこのっ!」

「まあ落ち着いてよ〜」

「ちぃ、とにかく余計なことはしないでさっさと町から出て行ってくれよ」

「はーい」

「わかりました」


適当に返事をしたあと、少女についてきてと言われ俺達は店を出た。


「空き家が多いですね」

「ドラゴンのせいでみんな出て行っちゃったんだ。お姉さん達はどうしてこの町にきたの?」

「ロブドラゴンを討伐するつもりだったんだけど…状況が変わってるみたいだね〜」

「うん、説明するからうちにおいでよ」

「えっ」

「それはちょっと…」

「俺とゼリウスはその辺で待っていようか?」

「大丈夫、お兄さん達はいい人そう。それに…お母さんに会ってほしいから」


「…?」


俺達は互いに顔を見合わせた。


「うちに着いてからちゃんと話すね」

「わかった」


俺達はマリカの家に向かう途中に自己紹介を済ませた。

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