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協議


「ギギ…ギャオオオオオッ!!」


ブォォォォォーーッ!!


ヒュドラは俺とメティに向けて8首同時に毒のブレスを吐いた。これを避けるのは不可能だ…『大盾』で防ぐか。そう決めて手をかざしたと同時にメティが俺の前に出て叫んだ。


「私が止めます!メガロス・シーフナスッ!」


ゴォォォォォーーッ!!


巨大な竜巻が毒のブレスを巻き込んでいく、首は増えたがミミルとゼリウスのおかげで先よりブレスが弱まっている…やつも余裕は無いようだな。


「げほっ…今ですミウ!」

「ああ!」


ブレスが途絶えた瞬間、俺が巻き込まれない様にメティは竜巻を横にずらした。


俺は跳んで素早く懐に入った。なんて巨体だ、確実に仕留めるには…残ってる全ての魔力を込めて討つ!


「エンハンス・ツイン・ショットガンッ!」


バァアンッッ!!


ブシャアアアーーッ!


「ギググ…」 ドシャーンッ!


胴体に撃ち込むと肉は吹き飛び巨大な穴が空き、凄まじい量の血を流しながらヒュドラは倒れた。


「やった…ぐふっ」


吐血…毒を吸い込んでいたか、早く解毒薬を…


「ミウ、大丈夫」


『解毒石』を持ったティオに触れられると、瞬く間に症状が治まった。どういうことだ、この魔導具は他者には使用できなかったはず。


「分与魔法。解毒石を介して自分への解毒効果をミウに与えた」


俺の思考を読み取る様にティオは説明してくれた。


「なるほどな。だからゼリウスの魔力が回復していたのか」

「うん。あれは単純にティオの魔力をゼリウスに分け与えた」

「そういうことさ」

「ふう~、もう魔力すっからかんだよ〜」

「皆さんお疲れ様です」


5人が揃い、俺達は輪になって座り込んだ。


「全員無事で安心した。ところでミミル…」

「わかってるけどさ、あそこでウチが無茶しないと厳しかったでしょ」

「ミウ、ミミルくんの電撃がなければ僕の突きは当てられなかったと思うよ」

「確かにそうですね…感電によって動きも遅くなっていましたし」

「…まあそうだな」

「生命力も使ってないし、大目に見てよ相棒〜」

「わかったよ。よくやってくれたミミル」

「ふふ〜ん♪」

「ティオのことも褒めて」

「ああ、ティオもよくやってくれた。まさか組み合わせた魔法をあれほど使いこなせるようになってたなんて…随分と驚かされたぞ」

「うん…。でもミウの最後の大魔法の方が凄かった」

「ティオくんの言う通りだよ、まさかあんな高威力の魔法を両手で創って撃てるなんて」

「本当ですよね、竜鱗の硬度を物ともせずに…さすがミウです」

「強力な大魔法を扱えても当たらなければ意味がない。みんなの援護があってこその結果だ、感謝してる」


そう言うと4人は少し照れながら誇らしげに笑った。


「ともあれ取り敢えず休息だな」

「皆消耗してるのでこの辺りで野営しちゃいますか?」

「賛成〜」

「僕も賛成だよ」

「ティオも」

「決まりだな。設営の前に少しだけ休ませてくれ」


そう言って俺が仰向けに倒れると皆も揃って横になった。


するとメティがいつの間にか俺の真横に寄ってきて手を握ってきた。柔らかくて安心感を与えてくれる手だ…俺も軽く握り返しながら目を閉じた。


夜になり、俺達は身体を清めた後食事を済ませていつも通り交代で睡眠を取った。


俺はメティと寄り添って見張りをしている。目の前の火口湖の水面に満天の星空が反射していてとても幻想的だ。


どうやら水場と同様でヒュドラが居着いていたのが水の淀みの原因だったらしく、メティ曰く水質がかなり良くなっているらしい。確かに見た感じ明らかに水が澄んでいる。


「綺麗ですね」

「そうだな」

「この夜空の下に俺達の大陸があって仲間がいる、気が遠くなるほど離れているのに…不思議なものだ」

「ミウ…」


メティは不安げな表情で俺を見た。帰りたがっているように思わせてしまったか。


「この旅が嫌なわけではないぞ」

「…本当ですか?」

「ああ。まあ早く終わらせてメティを連れ帰ってみんなで麗らかな日々を送りたい気持ちはあるが」


そう言って俺はメティの手を取り、手の甲にキスをした。


「ふふっ、ティオもですよ」

「ああ。ティオもメティもずっと一緒だ」


それを聞いてメティは潤んだ瞳で微笑んだ。暫く見つめ合ってから俺達は口づけを交わし、寄り添いながら目の前に広がる幻想的な情景を堪能した。


朝になり、俺達『女神の聖槍』は朝食の席で悩んでいた。ズバリ倒したヒュドラの素材をどうするか。


聞くところによるとヒュドラの討伐は低くてもBランクらしい。ゆえにDランクのクエストついでにヒュドラも倒しました〜なんてことは有り得ない、確実に疑心の目が集まる。ティオも居るし注目されるのは何かと面倒だ。だがしかし…


「もったいないよ〜!あいつの素材で色々作れるよねっ」

「そうですね、ドラゴンの素材は武器にも防具にも使えます。性能が高く入手困難なため高価ですし…ミミルの言う通りさすがにこれはもったいないと思います」

「しかし僕らが討伐したと言うのは無理があるよ」

「うーん…」

「仕方ない、あれをやるか」

「ん?あれってなんだいミウ」

「あ、その手があったね」

「忘れていましたっ」

「ギルドには提出せず、変装して個人で買い取ってもらう」

「なるほど、確かに名案だ」

「今回は買い取りではなく鍛冶屋に持って行って装備品を造ってもらいたいんだが…難しいかゼリウス」

「いや、問題ないと思うよ。なんたって『商都レムイノ』だ、訳ありの顧客と商品なんて珍しくないからね」

「やった〜!ウチはショートスピア造ってもらいたい」

「ショートスピア?」

「うん、昔は槍術主体だったけど最近は魔術をかなり使う様になったからさ、長槍だと無駄な動作が生じるんだよね〜」

「なるほどな」

「私は竜皮と竜鱗で全員分の防具を造っていただきたいです。欠損部位は多いですがあれだけの巨体なので充分足りるかと」

「いい案だメティ、防具を造ってもらおう」

「ティオは杖が欲しい」

「杖か。確かにティオに持たせれば魔術による攻撃と補助を効率化できるな」

「むしろソーサラーには杖は必須でしたね。ティオは優秀なので失念していました」

「ミミルと同じで小さい杖がいい。ティオには『カランタ』があるから」

「剣も振るいたいんだな、わかったよティオ。じゃあ造ってもらうのは短槍、小杖、鎧で決まりだな」

「はいっ。早速素材を回収しましょう」


それから俺達はあらかじめ湖から引き揚げておいたヒュドラの死体から角、牙、爪、鱗、革を穫った。

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