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圧勝


「ガウッ!」


ブルータルウルフ達は一斉に襲いかかってきてそれを俺達はことごとく返り討ちにしていった。速さと力もまあまあ、ワイルドウルフの強化型といったところだな。


「マヴロス・モケータ」


フォーーーンッ。


突如広範囲で地面が黒く染まった。これは闇魔法…いや、ウルフ達の動きが明らかに鈍くなっている。


「ティオ、これは?」

「闇魔法と重力魔法を合わせたもの」

「えっ」

「簡潔に説明すると範囲内の敵の生命力を削りつつ重力による負荷を与えるものです」


なるほど。闇の属性魔法の特徴だが生命力を削ると生物としての身体能力が少しずつ低下する、それに加えて重力魔法で動きを鈍らせるか…強者や大型の魔物には通用しないが群れで動く小型〜中型の魔物には効果的だな。


「凄いぞティオ」

「魔法を組み合わせるなんてティオちゃんやるね〜」

「ここまで魔術に秀でているとは…正直驚いたよ」

「私も驚きましたよ、ティオは優秀なソーサラーです」

「…そうかな」


分かりやすく照れてる、普通に可愛い。


ブルータルウルフを一掃し、討伐証明を回収するのは後にして水場に向かった。メティが言っていたウルフ以外の魔物が気になる、水場に居るはずだ。


「なんだあれは」

「泥が、動いている…?」


ドプッ…ボコココッ! ズーーン…!


「なっ、こいつは…」

「マッドゴーレムですね」

「大きいね〜」


「厶オオオオォッ!!」 ズンッ!!


「見るからに物理攻撃が効かなそうだな」

「ゴーレムは核を破壊すれば絶命します」

「生物とは少し違うから闇の属性魔法は効かないかも」

「わかった。ティオは下がれ、俺達でやるぞ」

「うん」

「りょーかい。身体を壊していけば核が露出するんだよね」

「おそらく」

「俺が決める、それまで頼む」

「はいよっ!」

「任せろっ!」

「いきます!シーフナスッ!」


ゴォォォォ〜!


「ムウゥ〜」


マッドゴーレムは竜巻に阻まれて怯み、動きを止めた。


その隙に俺達は一斉に攻めた。


「アネモス・レピーダ!」 バシュシュシュ!


「シールドタックル!」 バゴォッ!


「やあああっ!」 ドシュシュシュシュッ!


「ムォォ…!」


「エンハンス・ショットガンッ!」 バァァンッ!!


3人がゴーレムの肉体をある程度破壊し、最後は俺の高火力魔法で核ごと粉々に吹っ飛ばした。


「やりましたねっ」

「凄いなミウ。今の魔法、大した威力だ」

「うん、凄い」

「さすがだね相棒〜」

「ま、まあな」

「あ、照れてる〜」

「からかうなよミミル。ところでこいつの討伐証明って核だよな」

「その通りだけど…」

「あ、バラバラだね」

「うん、バラバラ…」

「集めましょうっ」

「すまん…」

「謝るほどの事ではない」

「お、ティオちゃん優しい〜」

「そうでもない…」


ティオは照れながらも俺を見て口角を上げた。


マッドゴーレムの核を拾い集めて布で包んだ後、ティオに近付き声をかけた。


「ティオ、魔物との実戦はどうだった」

「初めに対峙した時、少し恐くて緊張した…でも皆がいたから安心して戦えた」

「そうか、その調子でこれからも…」

「ミウくーん!」

「こちらに来て見てください」


ミミル達に呼ばれて水場を覗くと、先程と様子が変わっていた。


「水が綺麗になってる…?」

「はい。恐らくマッドゴーレムが棲み着いていたせいで水が濁っていたのかと」

「なるほどそうだったのか。そういえばこの先に火口湖があるんだよね…」

「気になるのかゼリウス」

「ああ、すこしね」

「ウチもあの湖もっと近くで見てみたい」

「私も火口湖を目にしたのは初めてなので間近で見てみたいです」

「ティオも」

「そうだな、せっかくだし見に行ってみるか」


そんな訳で俺達はガイザニア火口湖まで行くことにした。


「湖のある場所までは距離がある、戦闘後だし今日は早めに休もう」

「賛成だよ」

「ウチも〜」

「では設営に適した場所が見つかり次第野営の準備をしましょう」

「うん」

「そうだな」

「そうしよう」

「りょーかい」


暫く歩くと山の木々が見えてきた。


「ここから先は傾斜になっている上にだいぶ生い茂っていますね」

「確かに…この辺りで休むか」

「うん」

「そうだね」

「賛成〜」


俺達は手分けして野営と寝床を設け、火起こし、調理の準備を済ませた。


「5人いると捗りますね」

「そうだな」

「さて、食材はどうしようか」

「ウチが行く」

「私も行きます。ティオもどうです?」

「ん、ミウは?」

「俺は留守番だ」

「じゃあティオも残る」

「えっ…」

「はははっ、お邪魔のようだし僕も行くよ」

「じゃあいつもの3人だね〜」

「…」

「どうしたメティ」

「その、弓を教えたかったな…って」

「なるほどな。じゃあティオも行ってこい、俺1人で留守番する」

「うぅ…」


もしかして2人きりになりたかったのか?ティオはあからさまに乗り気じゃない様子だ。


「ティオ、戻ったら2人で少し歩こう」

「うんっ」

「さすがミウくん女の子の扱いが上手だね〜」

「ミウ、夜の見張りは私とですからねっ」

「もちろんだ」

「さあ行きますよティオ!」

「わ、わかった」

「ウチらも行こうか勇者くん」

「そうだね」


そうして4人は森の中に入って行った。何かあったら派手に音を立てるように言ってあるし問題はないだろう。


お茶でも淹れて待ってるか。


「ふぅ…」


1人の時間、久しぶりな気がするな。


昔はずっと独りで空しく生きていたんだが…ってあれ?『昔』ってなんだ?ポマリス村では皆が家族みたいなものだったし、優しい両親もリオという可愛い妹も居た。孤独に生きていた時期があったのは村を出て山猫姉妹と出会うまでの間くらいだ。いつだか見た夢とごっちゃになってるのか…?


まあいい。俺は考えることを放棄してお茶を飲みながら皆の帰りを待った。

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