商都
「終わったね〜」
「そうですね」
「あとは休むだけだね」
「じゃあいつも通り交代で…」
「ダメですよミウっ、私とミミルは沢山寝たんですから」
「そうだよ、交代はするけどウチらは見張り時間長めでいいよ~」
「わかった、じゃあそうしよう」
「2人とも律儀だね。それじゃあお言葉に甘えるとしよう」
「任せてください。ミミル、先ずは私が見張ります」
「りょーかい。ありがとねメティちゃん」
「じゃあ俺も見張りだな」
「えっ、でもそれだとミウの睡眠時間が…」
「大丈夫だ、メティの隣で居眠りさせてもらうよ」
メティは申し訳なさそうな表情から一変、嬉しそうに微笑んだ。普通に可愛い。
それを見たミミルとゼリウスは呆れる様に笑った。
翌朝、食事と後片付けを済ませ出発した。
それからは大街道をひたすら歩いた。
その間何十台もの荷馬車を見て、きっと見たことのない物が沢山あるのだろうなと思い俺は『商都レムイノ』に到着するのがより一層楽しみになった。
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「まさか本当に大陸が存在するとはな。あの結界魔法は一体どうなってるんだ…」「ホントびっくりだよ。ねえオッサン」「ウム、驚きである」「ここからは慎重に進むわよ」「ああ」「ウムッ」「りょーかいっ」
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「身分証はあるか」
俺達は冒険者ライセンスを提示した。
「ここには衛兵が居るんだね〜」
「ああ、基本的に都市規模だと兵が常駐しているよ。人が多いと何かと問題が起こるからね」
「なるほどな」
「それにしても凄い活気、そして人の数ですね」
「ああ、ここが『商都レムイノ』だ。常にこれくらい賑わっているよ」
「うわあ〜なんか色々と楽しみ♪」
「私、この人混みで酔ってしまいそうです」
「ゼリウス、ギルドの場所知ってるのか?」
「ああ、着いて来てくれ」
人も多いがさすが商都、兎に角店が多いな。役に立つ魔導書や装備品が手に入りそうだ。
「おぉ、冒険者ギルドも大きいな」
「本当ですねっ」
「アヴラムさん居るかな〜」
中に入ると思ったより冒険者の数は少なかった。
「おーい、君達!」
「あ、おじさん」
「無事でよかったよ。ギルド職員に相談したら君達への報酬を冒険者ギルドから出してくれるそうでね、早速換金をしたいんだが討伐証明はあるかい?」
俺は背負い袋から討伐証明であるスケルトンとゾンビの右手を台の上に出した。
ドサササッッ!! 「あっ…」
「ちょっとミウくんっ」
「乱暴ですよミウっ」
「すまない…」
「なな、なんて量だっ。どれ程あの秘薬を使ったんだい?」
「ああ、全部だ」
「んな、なんだって!?」
アヴラムさんの大声を聞いて周りの冒険者達が集まって来た。
「スゲェ量だな!」
「ヒュ〜、やるねあんた達」
「へっ、大したことねぇな」
やれやれ、いきなり注目されるとは幸先よくないな。
しかし換金後、なんとギルドマスターに功績を讃えられ4人全員がランクアップした。前言撤回、幸先いいぞ。
少し待たせれた後、4人揃って更新された冒険者ライセンスを受け取った。
「あれ、勇者くんどうしてDランクなの」
「ああ、僕は特例で初めからEランクだったからね」
「えぇ~、ズルい…でもまああの悪魔追い払ったもんね」
「確かに。それに私達は戦っていませんからね」
「そうだな。さて、クエストを受注して宿屋に行こう」
「そうだね」
「りょーかい」
「わかりました」
せっかくランクアップしたのでDランクのホブゴブリンの討伐クエストを受注してからゼリウスの案内で宿屋に来た。
部屋を2つ取って荷物を置いて軽装に着替え、食堂で昼食を済ませた。
「いい宿屋だね。料理も美味しいし、宿代も思ったより安くて良心的だよ〜」
「お部屋も綺麗ですよねっ」
「そうだな」
「この『日だまり亭』は仲間に教えてもらった所なんだ」
「そう言えばお仲間3人の居場所はご存知なのですか?」
「えっと…1人が雑貨屋を営んでいるから先ずはそこに行こうと思う」
「ねえねえミウくん〜」
「ああ、俺だって早く店を見て回りたい」
「僕が1人で会いに行ってくるから3人はお店を回ってくるといいよ」
「いいのかゼリウス」
「もちろんさ。これだけの規模だ、この先必要になるであろう物がきっと見つかると思うよ」
「さすが勇者くんっ」
「ありがとうございます」
「すまないな」
「気にせず楽しんでくれ、それじゃあまた後で」
「ああ、またな」
そうしてゼリウスと別れ、俺達3人は一際賑やかな区域にやって来た。
「ミウくん武器屋に行きたい」
「私は薬品店と魔導具店を見てみたいです」
「俺は魔導書店に行きたいんだが…先に見つけた店から入ればいいか」
「賛成〜」
「そうしましょう」
人混みを避けて歩いていると防具屋を見つけた。俺はミミルとメティ、そして自分の身体をじっくりと見た。
「ミウくん?」
「どうしたんですか」
「せっかくだし防具を新調するか、ついでに衣服も買おう」
「大賛成〜!」
「私もですっ」
その後、俺は後悔する羽目になった。
女性だから当たり前のことなのだが…長い、長過ぎる。
初めは2人とも楽しそうで見てて癒されたのだが、1時間を過ぎてからは俺はもうくたびれてしまった。
2人はああだこうだ言いながら何度も試着している。俺は店内の椅子に座ってそれを眺めていた。
「お客様、よろしければどうぞ」
店員のお姉さんがカップをトレイに乗せて持って来た。
「ありがとうございます」
お茶を啜っているとお姉さんはクスクスと笑って言った。
「女は面倒だ、なんてお考えですか?」
「はは…否定はできませんがこのお店は品揃いがかなり豊富なのでどれを買うか迷うのは当然だと思います」
「まあ、素敵なお考えですねっ」
「そ、そうでしょうか」
お姉さん、顔が近いな。メティが見たらまずそうだ。俺は慌てて空にしたカップをお姉さんに渡した。
「お茶、ごちそうさまでした」
そして逃げるように2人の元に行くと丁度良かったと意見を求められてそれはもう大変だった。
「いやあ、買い物っていいね〜」
「そうですねっ」
2人ともご機嫌の様だ。それにしてもくたびれた、まだまだこれからだというのに。
その後は武器屋を見つけたので中に入った。




