解決
「な、なにを言ってるッスか先輩!」
「彼は努力家で正義感も強く魔法の才もある」
「もしかして属性魔法持ちか?」
「その通りだよ。物覚えも早いしきっと大きな戦力になる。どうだい?」
俺達3人は顔を見合わせてから唸った。
「返事は直ぐじゃなくて構わない。実力を疑うのならゼノを連れてクエストに行ってみてくれ、きっと証明してみせる」
「ちょちょ、ちょっと先輩!勝手に話を進めないでほしいッス!」
「いつも言ってるだろう。僕なんかにかまってる時間がもったいないと。今の僕はただの鍛冶屋の手伝いなんだ」
「ゼノ、取り敢えず冒険者登録だけ済ませたらどうだ?」
「自分、冒険者登録も先輩と一緒にしたかったッス」
「あれ、勇者くんって冒険者登録してないの」
「ああ、僕は魔王を倒すという天命で旅をしていたからね」
「ではどうやって生計を維持していたのですか」
「ありがたいことに国王から援助してもらっていたんだよ」
「なるほどね〜」
それからもゼリウスは巧みにゼノのアピールを躱し続け、夜も遅くなっていった。
「今日は楽しかったよ、ありがとう」
「こちらこそ助かった。また店に行くと思うからその時はよろしくな」
「ああ、待っているよ。それとゼノの件、どうかよろしくお願いするよ」
「わかった」
「うぅ~せんぱぁ〜い」
「あはは、すっかり酔い潰れてるね〜」
「ミミルもこんな時ありましたよ」
「うっ…」
「はははっ、じゃあ僕らは向こうだから」
「ああ、気をつけてな」
2人と別れ、俺達は宿に戻った。
「あの、ミウ…」
「寝る準備ができたら俺の部屋に来てくれ」
「は、はひっ」
「襲ったりしないからそう構えるな」
「はい…」
「メティちゃん、ごめんね。ウチが口うるさくて…ウチって面倒な女だよね」
なっ、急にどうしたんだミミル…まさか酔っているのか?
「そんなことありません!私の身を案じてのことだと理解しているので…ミミルには感謝していますよ」
そう言ってメティはまるで女神の様に微笑んだ。
「メティちゃ〜ん大好き〜!」
「私もです」
夜の町で抱き合う2人、その姿がとても仲睦まじい光景に見えて夜空の星々もそう言っている気がした。
コンコン。
ソファに座っていると戸が叩かれた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
現れたメティは薄着だった。白い手足には所々に小さな傷跡がある。
「あ、あのっ」
「すまない、白くて綺麗な手足だなと思って見惚れてしまった」
「そそそ、そんなっ…」
メティは慌てて椅子に座り用意しておいたお茶を啜った。
「メティ、先ずは俺のことを想ってくれて嬉しい、ありがとう。そして以前も言ったが俺もメティのことが好きだ」
「はい…」
メティは頬を赤らめて胸の前で手を組んだ。可愛過ぎる。
「ミミルの意見を聞いてからずっと考えていたんだが…良い案を思いついた」
「えっ!それはなんですかっ」
身を乗り出してメティは目を輝かせた。
「気持ちの切り替えだ。最終目標はミミルの師匠のアニラくらい強くなることとして…それまでは今みたいに安全な場所で2人きりの時に限りたわむれ合うというのはどうかな」
メティは目を大きくしてからひらりと宙を舞い瞬時に俺の隣に座り抱き着いた。なかなかの身の熟しだ。
「大賛成ですっ」
きっと相当我慢していたんだろう。俺がメティの立場だったら耐えられる自信は無いな。
「条件が揃っている時は思い切り甘えてくれ」
「はいっ!」
いててててて、む、胸が。
それから俺達はべったりくっついて座ったまま眠ってしまった。
明け方近くに目を覚ました俺はメティをそっと抱き上げてベッドに運び、自分はソファで寝た。
さすがに添い寝なんてしたら自分を抑えられない自信がある。
翌朝、朝食中にミミルが言った。
「ありがとねミウくん、メティちゃんのこと」
「なに言ってんだ相棒、礼を言う程のことじゃない」
そう返すとミミルはズルいな〜この色男は。と笑っていた。
その後ギルドに行くとソロンが窓口に居た。
「あっ、ミウさん!」
「おはようソロン」
「おはようございます。クエストをお探しに?」
「ああ。採取以外の依頼はなにかないか」
「ええっと、リクトメティアさんのランク基準ですと…これなんてどうでしょう」
開かれたクエスト表のページを見るとゴブリンの討伐と書いてあった。
「廃屋を住処にしてるのですが数は少ないようなのでEランククエストになっています」
「わかった、それにする」
ソロンに廃屋の場所など詳しい情報を聞かせてもらい、俺達は直ぐに出発した。
「ゴブリンか〜」
「物足りないか」
「当然だよ〜」
「私も同感です」
「気持ちはわかるが地道にいかないとな」
「そうだね、我慢我慢っ」
「ですねっ」
指定された場所に行くと廃屋があり、周りにはゴブリンが居た。見たところ数は5匹。
メティが弓で2体始末し、残りはミミルが槍で貫いた。
廃屋の中に入ると動物の骨やガラクタが散乱していた。そして何より酷い臭いだった。俺達より鼻の利くメティは悶絶して直ぐにこの場から離れた。
「燃やしておくか」
「そうだね」
カンテラが置いてあったので火をつけてから壁に投げつけて発火させ廃屋を燃やした。
討伐証明のゴブリンの右耳を持って町のギルドに戻るとソロンが出迎えてくれた。
「早かったですね、さすがミウさん!」
「私達もいるのでっ」とメティはプリプリしていて可愛いかった。
「その通りだ。俺1人の力じゃないんだぞソロン」
「そ、そうですよね!お二人とも失礼しました」
討伐証明を提出し報酬を受け取るとソロンがカウンターから乗り出して話し始めた。
「ミウさん、ヴラドさんってご存知ですか」




