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変化


あー!もうやってらんねー!


36歳フリーターの俺は家族と仲が悪く専門学校を卒業して20歳で家を出た。


それからはほぼ絶縁状態だ。一度は定職に就いたが人間関係が原因で1年も続かず、それからはずっと飲食店のキッチンでアルバイトをしている。


時給はそこそこ良いがアルバイトという立場なだけで下に見られるし扱いも酷い。


「ミウラ君この日も出てよー」


店長の口癖だ。ふざけやがって。断れない性分なのを良いことに俺にだけにしょっちゅう言ってきやがる。楽しくもなければやりがいも無い。生きていく為に仕方なく嫌々働いてヘトヘトになって帰って飯食って寝て…その繰り返し。


彼女も居ないし友達と呼べる程仲の良い奴も居ない。これといった趣味も無いし、俺は何の為に生きてるんだろう。誰かの為に生きるってどんな感じなんだろう…近頃そんなことを考える様になった。


最近ストレスと疲労が原因で体調が悪く、精神的にも不安定になり病院に通っている。


通院すればお金は掛かるし体調が悪いと仕事がいつも以上にしんどくなる。本当に健康が一番だなと思った。


この世の中に何の病気もせず毎日元気に楽しく過ごしてる人間がどれくらい居るのだろうか、案外沢山居るのかな。是非とも一度入れ替わって体験させて欲しい。


そんな感じで今日もバイト。そして今日は天気が悪く何だか凄く体調も悪い。眩暈と耳鳴りがして気持ちが悪い。我慢して作業していたがあまりにも具合いが悪いので早退させてほしいと店長に言った。


「えー困るなー頑張ってよー」


目も合わせずにそう言われた。店長からは心配のしの字も出なかった。俺は何とかお願いしますと頼んで早退させてもらったが、きっと次に会う時はぐちぐち嫌味を言われるのだろうなと考えながら帰路に着いた。


途中、雨が降りだしたが何とか自宅のアパートに到着し2階への階段を上りきった時、激しい眩暈に襲われバランスを崩して後ろに倒れた。


物凄い音がした後、頭が割れる様に痛かった。


俺は階段から落ちたのか、痛い痛い痛い。兎に角痛い。


体に力が入らない、これってもしかして死ぬのか。こんな死に方嫌だな…せめて誰かの為に役に立って死にたかった。


パニックに陥っていたが不意に眠気に近いものを感じて俺は目を閉じた。


真っ暗だ、冷たかった雨も感じない。目を開けても何も見えない。苦しい、息が出来ない。身体も動かない、何かに全身を押さえ付けられてる様な感覚だ。


そして何だろう、これは土の匂いか…?


苦しくて無我夢中で暴れていると手が空気に触れた。そこから一気に抜け出したが呼吸を整える暇も無く、俺は目の前に現れた墓石に驚愕した。


俺は生き埋めにされてたのか、どうして…?


しかしこの墓石に書かれている文字は一体何語だ?少なくとも今まで生きてきて一度も見たことのない文字だ。


墓の形も日本の物ではない。目を擦り口の中の土をぺっぺっと吐きながら上着を叩いて土を払っていると、俺は再び驚愕した。


これはどういうことだ?この洋服…と言うかこの身体、俺じゃない。


俺は元々細身で平均身長より少し高いくらい。ただ生活が酷く乱れていたので顔にはクマにシミ、薄毛も進行していて食事はジャンクフードばかりで手足は細いのに腹周りにだらしなく贅肉を着けていた…はずだった。


腹周りの無駄な肉は無くなり立派に割れた腹筋があるのだ。手足も細さに変わりはないが筋肉がしっかり付いている。


惚れ惚れするがこれはどういうことなんだ?一番気になったのは俺の顔がどうなっているのか。やはり別人なのか、どんな顔しているのだろう。


36年間生きていて一応イケメンと呼ばれたことは何度かある、甘く見積もって上の下くらいの見た目だったけど…今は一体どうなっているんだ。


そんなことよりここはやっぱり墓地のようだ。見渡すと俺が埋まっていた場所の両隣は同じように墓石と盛られた土が並んでいた。それがざっと40は在る。


外国の墓地で生き埋めにされたのか?いやおかしい、もし埋められて時間が経っていたらそのまま窒息しているだろうから恐らく埋められて直ぐに目覚めて這い出たと考えるべきだろう。…それなのに周りには誰も居ない。


取り敢えずここから離れよう、気味悪いし。


それにしても田舎過ぎる。建物が全く見えない上に道は舗装されておらず街路灯すら無い。これじゃ夜になったら真っ暗だぞ。


しかし俺が着てるこの服、埋まっていたから汚れてるのは仕方ないけど…まるで素人がどうにか作った様な衣服だ。ポケットもチャックも無いし。


ここは衣服も満足に手に入らない様な貧しい国なのか?

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