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第三十三話 会見⑥

 窓のない暗い室内。


 何台ものテレビと端末。


 ブラックボックスの中では、テレビ中継やネット空間の監視、検閲が行われていた。


 そして、鋭い目つきで画面をチェックしている隠密警察の男たちは、それぞれが緊張した面持ちで放送遮断用のレバーに手をかけながら、手元灯で何度も指示書を確認していた。


 朱の筆で「法度事項」と記されたその極秘の書類には【倒幕派、アゲハ、隕石、予言】など、多数の言葉が禁止文言として指定されていた。


 ◇ ◇ ◇


 会見場で繰り広げられる異様なまでの佐山へのバッシング。


 それは毎回のことだった。


 必ずそこに行き着いてしまう。


 キリがなかった。


 ドア脇に控えていたヒナコも、見ているのが辛かった。


 だが、ようやくこれで終わりだった。


 言いたいことをぶつけた記者たちも、これ以上は無駄だと分かっていた。


 あとは、お決まりの展開を残すのみ。


 ヒナコが一言も発言せずに座っているミサコを見ると、どうやらタイミングをはかっている様子だった。


 トモキもチラッとミサコに目を向けた。


 いつでもカメラを向けられるように。


 やがて、咳払いをした佐山がゆっくりと口を開く。


「他にも何かありますでしょうか? もし会見の趣旨に合った質問がないようでしたら、これで終了と………」

「長官、よろしいでしょうか!」


 と、佐山の言葉が終わる直前にミサコが立ち上がったので、トモキはすぐさまカメラを向けた。


 ◇ ◇ ◇


 放送局の二階では、岡倉が編集機の横にあるテレビでその模様を見ていた。


 そして、ミサコが口を開いた。


『予言者アゲハは………』


 が、突然、画面が真っ暗になった。


 岡倉は電子タバコの吸引部をガリッと噛んだ。


 ◇ ◇ ◇


「お疲れさまでした………」


 会見場に誰もいなくなると、ヒナコはカップの水を佐山に差し出した。


「ありがとう」


 佐山は礼を言ったあとで一口飲んだ。


 会見でさほど話をしたわけではなかったが、喉を通って胃に落ちていく水の冷たさが心地よかった。


 一度ゆっくりと息を吐いた佐山は、カップの中を見た。


 水の中に一つの色が落ちれば全体が染まる。


 さらに違う色が加われば、混ざり合って一つになる。


 だが、もし「仕切り」があれば、溶け合うことなく別々の色のまま。


 それが今の本京都と準京都の状況だった。


「恐らく、彼女には信念があるのだろう。信じるものがある人間は強いものだ。だから、あまり目立ちすぎるのも気がかりだな」

「あのリポーターさんのことですか?」

「ああ、そうだ」


 佐山はそう言うと、またカップの水を飲んだ。


 本京都人が準京都の人間のことを案じるなど、まずないことだった。


 にもかかわらず、佐山という人にはそれが普通にできるようだった。 


 だからヒナコは、じっと佐山の横顔を見た。


「どうかしたのか?」


 その視線に気づいた佐山が顔を向けて来たので、ヒナコは慌てて答えた。


「いえ………! 明日の準備をしてきます!」


 そして、そう言うや、小走りで部屋を出た。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^


これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m

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