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第十九話 秘密のミッション②

 今度は四階から二階に下りたミサコは、通路の突き当たりにある編集室のドアをノックもせずに開けて中に入った。


「岡さん、おはようございます!」


 電子タバコをくわえた岡倉哲二は、ミサコに呼びかけられると編集機から顔を上げた。


 部屋の中にはいくつものスチール棚が所狭しと置かれており、映像を記録したビデオテープやフィルムがぎっちりと詰め込まれていた。


 さらには、手元の作業台の上に食べ終えたカップラーメンの容器、おにぎりやパンの空き袋、飲み干したブラックコーヒーの缶が数本置かれていた。


 まだほとんどの局員が出勤してきていない時間にも関わらず、岡倉は夜通し作業をしていたようだった。


 だから目がショボショボするのか、いかにも業界人風の黄色のフレームのメガネを一度かけ直した。


「今日もやけに早いな………? 昨日に続いて、彗星の撮影か?」

「もちろんです!」


 スッキリとしたミサコの声。


 チャームポイントは大きな目。


 さらには、どことなく醸し出される清潔感や知性と合わせて、人を惹きつけるような華やかさもあった。


 そして、眠たげな様子の岡倉は、そんなミサコとは対照的だった。


「それともう一つ、ある秘密のミッションをしているんです! その名も、“岡さんからインスピレーションをいただきました作戦”です!」

「何だそりゃ………?」


 寝ぼけ声の岡倉は、ミサコのテンポの早さについていけないようだった。


「岡さん、ひょっとして、今日も徹夜ですか?」

「まあな」

「それです! そこからヒントを得ました!」

「だから、何なんだよ………?」

「徹夜をしているのは岡さんだけじゃないってことです! あのコソコソと私たちのことを監視しているコウモリみたいな隠密警察の人たちだって、きっとそうです! だって、検閲に休みはないですよね? ということは、眠いので隙ができます。だから私は、あえて早朝に、ブロックがかけられる前の情報を見つけようとしているんです! そして、その結果、ほんの一瞬だけアップされていた“お告げ”の言葉を見つけることができたからこそ彗星の撮影を始めたんです! まさに、狙い通りでした! どうですか、私の作戦は?」

「あ………? まあ、いいんじゃないのか………? 何でもいいから、好きなようにやってくれ………」


 岡倉は半分聞き流していたので適当に答えたが、ミサコは後押しされたと思ってますます元気づいた。


「岡さんにそう言われると、何だかうまくいきそうな気がしてきました! 必ずお告げの場所を突き止めてみせます!」


 そう言って部屋を出て行こうとしたミサコだったが、ドアを閉めかけたところで振り返った。


「そうそう、あとで会見を見てくださいね! 居眠りして見過ごさないでください!」

「今日だったか………? 分かったよ」

「ついでに、感想もお願いします!」


 ミサコはそれだけ伝えると、弾むようにドアの向こうに消えた。


 疲れ気味にため息をついた岡倉は、くたびれて艶のない前髪をかき上げた。


 ◇ ◇ ◇


 局の玄関ロビーでは、ようやく出勤してきた職員の姿が見られるようになっていた。


 その中をミサコが突っ切るようにして進みながら、誰かを探すような素振りをする。


 と、ちょうどその時、目当ての人物が正面玄関から入ってきた。


「あっ、センパイ!? おはようございます………!」


 後藤トモキはバツが悪そうにミサコに挨拶をした。


 ミサコのアシスタント兼、同行カメラマンでもあるトモキは上背はあるものの、クセのある栗毛がどことなくひ弱な印象となっていた。


 そして昨日、さんざん出勤時間に関してミサコから注文を受けていたので今日はいつもより多少早めに来たものの、また先を越されてしまったようだった。


「遅いわ! 今日も遅刻よ! すぐに準備をしてきて! 五分以内で!」


 そんな無茶な………!?


 トモキはそう答えたかったが、言葉に出さなかった。


 言えば何倍もの反論が返ってくるからだ。


「はい! 分かりました………!」


 だからそう返答すると、トモキはロビーで待つミサコを横目に慌ててエレベーターへと走った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^


これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m

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