第十九話 秘密のミッション①
準京都に一つしかないテレビ局は第二環区にあり、円筒形でライトブルーの外観が人目を引いた。
が、隣接する黒々と塗り固められた建物が別の意味で存在を主張していた。
通称“ブラックボックス”。
それは、準京都の治安維持のために隠密警察が放送の監視や検閲を行うための施設だった。
◇ ◇ ◇
放送局の職員の戸川ミサコはやや早足で出勤してきたが、まだ入り口のゲートは下りていた。
なので、正門脇の詰め所の警備員にIDカードを見せて職員通用口を通り抜け、そこから局の建物内に入るや真っ先にエレベーターで最上階を目指した。
やがて屋上に出ると、地上にいた時よりも新鮮な空気感を実感できた。
朝日が刻一刻と明るさを増しつつ大地を照らし始めている。
上空にはオリジナルムーンとエンジェルムーン。
眼下には、第二環区の町並み。
南側には商業地区、西側には住宅地と小高い三橋山。
ミサコはすぐに夜通し空に向けて録画モードにしておいたビデオカメラのデータを確認する。
そして、一日分の映像を見終わりかけた頃、明け方辺りの部分に目当てのものを見つけた。
尾を引きながら二つの月の上方を移動していく彗星。
「あったわ! これで二日連続だわ!」
ミサコは思わず声を上げたが、さらにその先の映像の中に気になるものを発見した。
キラキラと光る粉のようなものが降っている。
「これ、昨日も映っていたけど、何かしら………?」
ひょっとしたら、太陽の光が朝の冷えた空気に反射しているのかも知れない。
ミサコはそう思うと、再びビデオカメラを空に向けてセットして録画モードのボタンを押した。
◇ ◇ ◇
屋上からエレベーターで四階に下りたミサコは、誰もいない社会部のフロアをダッと突っ切って窓側の自席に座った。
やることは一つ。
端末を立ち上げて、すばやく検索をかける。
キーワードは、“予言者アゲハ”。
が、入力してみるものの、表示される情報はない。
検閲でストップがかけられているようだった。
だが、そんなことは百も承知の上だった。
だからこそ、こんな早朝を狙って実行しているのだったが、どうやら今日は失敗のようだった。
ミサコはバッと椅子から立ち上がると、またエレベーターに向かった。
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