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第十六話 球体と円環①

 ………ッ、ピピッ、ピピピッ!


 布団から出した腕が重く、鈍い痛みが残っている。


 ピピピッ! ピピピッ!


 目覚まし時計のアラームが耳障りに鳴り続ける。


 片目を開けて時刻を確かめると、午前五時十二分。


 シャワーのあとで少し休むつもりが、眠ってしまったようだった。


 とりあえず、起きないと………。


 手をテーブルの上に這わせると、何かにぶつかってそれが落ちるが、何とか目覚まし時計までたどりついてアラームを止める。


 が、体を動かそうとすると、全身に筋肉痛が走る。


 このまま眠り続けたい………。


 そんな思いに誘われつつも、痛みに逆らって起き上がったノボルだったが、ベッドから下りた時に何かを踏んづけた。


 今、テーブルから落ちたメガネだった。


 フレームがひしゃげ、レンズにややヒビが入っている。


 また、やってしまった………。


 これまでも何度となく同じことをしてしまっていたので、コンタクトにしたほうがいいのかも知れない。


 ノボルはそんなことを思いながらメガネをテーブルに戻すと、部屋の明かりをつけた。


 それから手早く出かける身支度を整え、充電器からスマホを抜き、現場までのルートと所要時間を調べた。


 そのあとでメガネのフレームを元の形に戻してかけてみたものの、フィット感はいまいちだった。


 視野に入るレンズのヒビも気になるばかりか、よく見ると汚れやくすみも張りついている。


 とはいえ、かなりの近視のノボルにはメガネがどうしても必要だったので、多少の違和感ぐらいはやむを得なかった。


 が、そんな折、とっさにあることを思いついた。


 すぐに部屋の隅に置いた二つのケースのうち、大きいほうを開け、ゴーグルメガネを一つ取り出してかけてみる。


 驚いたことに視界がスッキリした。


 このゴーグルメガネ、度が入っているらしい………。


 ノボルは改めて部屋の中を眺め、最後にテレビの横のフォトカードケースの写真を見た。


 あれから、もう何年経つのだろうか………。


 あの日以来、一日たりとも忘れたことはなかった。


 ノボルの中で、今も朝の日課として共に生きているのだから。


 それゆえに、消息を知る手がかりを探し続けていた。


 その一途な想いが実ったのか、昨日、予想もしていなかった形で、そのきっかけとなりそうなものを見つけた。


 だから、また会えるかも知れない。


 きっと、あの蝶が導いてくれる………。


 ノボルは願いを込めるように、しばしポストカードに描かれた七色の羽の蝶の絵に見入った。


 そして、念の為に黒縁メガネをリュックに入れると、重い体を引きずるようにして玄関に向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^


これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m

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