第十話 宇宙からの飛来物②
………!?
木を押し分けるようにして、ぽってりとしたカブトムシのような形をした小型の乗り物があった。
大きさは、ちょうど人が一人入れるぐらいだろうか。
しかも、地面から三十センチほどのところに浮いていて、どこにも落下した際に激突したと思われる痕跡もない。
明らかに不自然な様相だった。
ノボルは戸惑うばかりだったが、恐る恐る触れてみた。
………!?
すると、胴体の側面部分が開いた。
さらに慎重に中をのぞくと、操縦席らしきシートの上に、大小二つのケースが重ねて置かれている。
どちらも正四角形だったが、上にあるのは両手に収まるサイズ、下にあるのはその何倍もあった。
狭い機体内部にはそれ以外のものはないようだったが、状況的に、この物体は宇宙から飛来してきたのではないかと思えた。
これが、あの七色を帯びた光の筋の正体なのかも………?
ノボルは困惑するばかりだったが、やがて意を決して手を伸ばしてみた。
そして、二つのケースを抱えて地面に下ろすと、まずは大きいほうから開けてみた。
中に入っていたのはメガネらしきものと、銃のようなものがそれぞれ十個ずつ。
それと小型のパソコン端末に似たものが一つ。
外見的な特徴として、メガネはレンズも含めて全て透明で、全体的に流線形をしているためにスポーツタイプのゴーグルに近い。
銃は弾倉や装飾などがまったくなく、三角定規のような形のものに引き金がついているだけなので、一見すると子供の遊び道具のようにも思える。
ただ、グリップのやや上にスライドタイプのスイッチらしきものがあり、αとβに切り替えができるようになっているようだった。
今は、スイッチのつまみがαのほうに位置していた。
さらにノボルは、用心しながら端末を開いてみた。
A4サイズよりやや小さいそれは、液晶画面と円形のタッチパネルだけがあり、キーボードらしきものはなかった。
画面には地図が表示されていたが、その場所がどこなのかは分からなかった。
が、通りに並ぶいくつもの商店らしき建物と、そこから網目のように広がる無数の裏通りの様相からすると、三区にあるマーケットのようにも思えた。
しかも、その中心辺りに、赤く点滅する丸印があった。
しばらく画面を見ていたノボルだったが、そのまま特に変化することもなかったので、やおら端末を閉じた。
差し当たり、ゴーグルメガネ、三角鉄砲、マップ端末とでもいったところだろうか………。
見た目の印象からそれぞれに呼び名をつけたノボルは、今度は小さいほうのケースを開けてみた。
………!?
一瞬、ノボルは目を疑った。
中には二つのものが入っていた。
一つは腕輪だった。
真ん中に円形の液晶画面があり、その周りにはカラスのデザインが施されている。
画面の上部には頭、左右には羽、下部には足がちょこんと出ており、見た目にはとても可愛らしい。
バッテリーが内蔵されていて充電が必要なのかは分からなかったが、液晶画面は真っ暗で何も表示されていなかった。
奇妙なのは足が三本あることだったが、とりあえず腕輪の観察はそこまでにしておいた。
そしてノボルは、もう一つのものをじっと見た。
それは蝶のネックレスだった。
その蝶は虹のように美しく七色にグラデーションする羽を開いていたが、右半分だけだった。
しかも、ケースと一体化している透明なボックスに入れられており、どれだけ力を込めてもこじ開けることができなかった。
それでも、蝶の羽の色合いや形を眺めるほどに鼓動が高鳴るのを感じた。
やっぱり同じだ………!?
ノボルはこのネックレスを見たことがあった。
今、ここにあるのとは反対側のもの、左半分を。
だから、不意に記憶の表面にさざ波が起きたような気持ちだった。
七色を帯びて地球に流れ着いた光と、七色の羽を持つ蝶。
これは偶然なのか………!?
ノボルは見えない何かによって繋ぎ合わされたようなこのめぐり合わせに、そっと思いを馳せた。
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