第七話 発症者たち③
そして三玲も、佐山と同様に、諸々の背景や事情を理解してスタッフと接していた。
ところが、あまり直接的に露骨な態度をむき出しにしてくる者はいなかった。
それは、どこか人間味の薄い異質風の雰囲気と、その立場なり出自が微妙で不透明であることが関係しているようだった。
それと合わせて、一目置かざるを得ない“予見的な発言”の影響も大きいように思えた。
にもかかわらず佐山は、そんな三玲にもざっくばらんに、かつ、親身に接してくれていた。
そのため、まだ一緒に仕事をするようになって半年ほどでしかなかったが、三玲なりにその人柄を理解するようになっていた。
真面目で、正義感が強く、実直。
そんな佐山に対して、三玲は全てを明かしていなかった。
実は三玲は、バタフライ現象の原因と、それが発生する目的が分かっていた。
それどころか、もっと多くのことも知っていた。
だが、あえて言わずにいた。
そのほうがいいと思ったからだ。
と、三玲がそんなことを考えている間にも、個室の中の数人の男が、突然、我に返ったようにキョトンとなった。
どうやら、カエル化現象の症状がおさまったようだった。
「ここは………? 俺は、何でこんなところにいるんだ………?」
男たちが呆然とした表情でそんなことを口にすると、佐山は言った。
「症状が解けた者が何人かいるようだな。正気を取り戻したのであれば帰してもいいだろう」
「はい!」
ヒナコは機敏に返事をするや、ボーッと立ち尽くしている男たちの部屋のカギを順番に開けていったが、カツヤはそっぽを向いて腹を撫でていた。
「カツヤ、何をしているの! この人たちを連れ出して!」
「俺たちは、今、現場から戻ってきたばかりなんだぞ? スーパーマンじゃないんだから、少しは休ませてもらわないと体がもたないだろ」
「仕事を終わらせれば休めるじゃない! だから早くしなさいよ! ああだこうだ言っているから疲れるのよ!」
「いちいちウルサイな、俺はお前の部下じゃないんだぜ?」
面倒くさそうに言い返したカツヤはノソノソと歩いてヒナコのところまで行き、釈然としない様子の男たちを一人ずつ部屋の外に押し出した。
それから、不満丸出しの顔で佐山と三玲の前を通り過ぎる。
そして、ヒナコが申し訳なさそうな表情をしながらも、カツヤを追い立てるようにして後ろからついていった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^
これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m