序章 光のゲート①
壁の窪みにはめ込まれているたたみ半分ほどの大きさのパネル。
正方形の空間の四方を囲むように配置された四本のオベリスク。
洞窟の奥まったところにある時空間瞬時移行装置“おいでやすドア”は、たったそれだけのもので成立しているようだった。
しかも、どちらも透明なガラスを思わせる素材で作られており、どこにも物理的な基盤がなかった。
ニューヤマタリアンの人たちは、本当にすごいわ………!?
坂下葵は圧倒されつつも、息つく間もないままにアクセスを続けた。
端末の画面には目まぐるしく数値や記号が幾重にも立ち表れては消え、それと合わせて複雑な数式が入り乱れた。
そのほとんどは初めて見るものばかりだったので、まったく未知のプログラムコードが使われていることが改めて分かった。
その端末とパネルとは独自の方法で接続されていた。
光線を用いたエアケーブル方式で、考案したのは葵だった。
何度となく試行錯誤を重ね、ようやく確立するに至った離れ業でもあった。
だから、おいでやすドアが稼働するかどうかは、全て葵の技量にかかっていた。
そして、そんな葵の後ろ姿を三人の男女が見つめていた。
そのうちの一人は、四十代前半ほどの男性。
聡明そうな面立ちに、深みを湛えた眼差し。
中身の詰まったバッグを手に持っている源川与だった。
その隣には、オーバーオールを着た十歳くらいの男の子、つくし。
まるで鼻歌でも歌っているかのような様子で、石の上に座りながら足をプラプラさせている。
さらには、二人から数歩離れたところにいる一人の女性、ミランダ・キース。
年齢は三十前後で、軍属っぽい制服は近づきがたい雰囲気を醸し出し、その真剣な表情をチラリとさえ崩さない。
「これは、神さまにお願いするしかないね」
と、つくしが気楽な口調で言ったが、源川とミランダは重々しい緊迫感に包まれていた。
お願い、動いて………!
そんな二人の視線と期待と重圧を背負った葵は、祈るような気持ちで四回続けて想定アクセスコードを入力した。
その直後、低い電子音が伝播するかのように壁が共鳴し始め、パネルに三つの項目が表示された。
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