危機
ローラさんに基礎的なことを教わったところで実践に入る。
「じゃあわたしが最初にお手本を見せるね」
「お願いします」
するとローラさんの右手には火玉、左手に風切を唱えて、両手を合わせるようにすると魔法が組み合わさった。
火玉の威力は所詮少し燃やせるぐらいのはずなのに、風切を組み合わせたことにより火玉が変形して炎の竜巻が発生した。
「これが簡単な複合魔法だよ。もっと強力な魔法を合わせたらもっとつよい魔法になるけど、それをここで使うわけにはいかないわ。わかるよね?」
頷く。もし炎の竜巻が大きすぎるとより国に被害が及ぼしてしまう。ローラさんが見してくれた魔法は制御していたのか小さなものだった。でも俺が使ったらどうなるかわからない。
「複合魔法って極めたら災害級魔法になるの。でもそれを使うってことは、制御する力と覚悟が必要ってこと」
「はい」
「だから私がいるところで練習するのは良いけど、一人で練習はしないでね」
「はい。一つ質問なのですが、ローラさんは災害級魔法を使えるのですか?」
「うん。一応はね。でも使ったら私はあまり機能しなくなっちゃうからあまりやりたくはないけどね」
災害級魔法...。使える人は限りなく少ないだろう。そんな人が身近にいるのだからすごい。
「それでだけど、今からアッシュくんにもやってもらいたいの。だから少し場所を変えましょうか」
ローラさんの言う通り場所を変える。もし俺が暴走してたらどうしようもない。国を出て近くの草原に着く。
「じゃあやってみよっか。後魔眼は使っちゃだめだよ」
「はい」
俺はさっきローラさんが使っていたように片手に火玉、もう片方に風切を使おうとするが失敗してしまう。
難しいのは分かり切っていた。なんせ魔法を2つ同時に唱えるということは1つの魔法にだけ意識をさくわけにはいかない。1時間ほど頑張ったが2つ同時に魔法を唱えることができなかった。
「まあしょうがないよ。これは慣れでしかないからね。逆にすぐ出来たら私が困るよ!」
「はい...」
正直1回ぐらいできるかなって思っていた。でもそんな甘い世界じゃない。俺は魔法使いでもない。ただの調合士だ。すぐできる方がおかしいのか...。
練習もいったん終わらせて拠点に戻る。するとルミアさんが俺のもとに来る。
「アッシュくん! 練習はどうだった?」
「難しかったです」
「そうだよね~。それでアッシュくんにはプレゼントがあります!」
「え?」
ルミアさんの手招きしている方についていき、部屋に入る。
「ここをアッシュくんにあげる! ここでポーションでも作ってもらえると嬉しいな」
「いいのですか!」
「うん!」
こんな広い部屋をもらったのは初めての経験。なんせ平民出身の俺にとって一軒家自体がすごい事なのに、部屋を一つ自分専用にしていい言われて嬉しいわけがない。
「一応アッシュくんはローラに魔法を学んで今後一緒に冒険していきたいけど、まだその領域じゃない。だからポーションとかで私たちを援護してね」
「はい」
部屋ももらえて、魔法で限界突破できると思っていた。勇者パーティではつらい事が多かったが、最近は嬉しい事が多かったので少し浮かれていた。この国---ウーディネにスタンピードが迫っていることを知らされる。俺たち、いやこの人たちはSランク冒険者であることを忘れてはいけない。だから最前線で戦うことがこの人たちには当たり前。
(でも、最悪の場合...。俺は本当にポーションだけでいいのか)
そう思うのだった。




