幼少期というものをリセットすることは可能なのか
まず、生まれる
この時点で少なくとも向こう20年ほどの
人生がざっくり決まる
親ガチャとかいうやつ
当たったらそれなりに安定した生活ができるし
ハズレたら耐え忍ぶ日々の始まりだ
そして人間が出来上がっていく
ある程度年数が経てば
社会という名の闇鍋へ放り込まれる
さて、この段階で幼少期に構築したものを
全て捨て去ることは可能か
ふっと、女は足を止めた
通り過ぎようとしていた露天には
ブリキのタヌキがちょこんと座っている
インテリアはあまり買ったことがない
なぜならそれは無駄なものだから
ミニマリストの部屋みたいだね
前に付き合っていた彼氏に言われた
自分では満ち足りていると思っていた
必要なものは全て揃った部屋
若者が道端で語らっている
なんてことない部活の愚痴
無駄な言葉、無駄なモノ
人はそれをユーモアと称賛したりする
そういえば、わたしの好きなモノって
なんだっけ
朝起きてご飯を食べて、深夜まで仕事をして
帰ってきて眠る
それだけのルーティンワーク
明日死んでしまっても問題ない人生
いらっしゃい
お姉さんタヌキ好きなの?
そんなのが好きなの?
みみっちいタヌキ
お金の無駄よ
瞬時に頭の中に雑念がこだまする
おそるおそる手を伸ばすと
思ったよりアホっぽい顔だった
思わずじっと見つめてしまった、、、
可愛いでしょ?
一点ものだけどどう?
可愛くはない
けど、連れて帰りたい気もする
付き合っていた彼氏は、
一緒にいても、いなくても変わらないね、と
先月家を出て行った
必要な会話はしていた
おはよう、ありがとう、ごめんね、おやすみ
無駄なものはなにもなかったけど
それ以上のものもなかった
いまさら
だけど、、、、
まいどー!
買ってしまった、、、
とりあえず家へ戻り玄関に飾る
、、、まぁまぁかわいい気がしてきた
今まったく必要ないもの
そんなものを飾るのは初めてだ
悪くないかもしれない
そして彼女は
世界屈指のタヌキコレクターになった
めでたし、めでたし