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雑学百夜

雑学百夜 『雨模様』とは雨が降っている状態のことではない

作者: taka

「雨模様」は雨が降っている状態のことではない。

既に雨が降っている状態または小雨が降ったりやんだりしている様子を雨模様という人がいるが、元々雨模様の「模様」は「催う」という字があてられており「今にも雨が降りそうな状態」を指す言葉だった。


今日は何をしようかな。

雨模様の窓の外を見ながら私は考える。

こんな風に雨が降るのか降らないのかはっきりしない天気が一番困るのだ。

布団の中から見ていると、どんよりとした雲が浮かびながらもなんだかんだ雨は降らないまま一日が過ぎていきそうなそんな気がする。

だけど不思議、いざ布団から出てカシミヤセーターに着替えながら再び窓の外を見てみると、この曇り空も数分後には土砂降りの雨空に変わるんじゃないか、そう見えてくる。

あぁ~どうしよう。なんて言いながらソファーに寝転がってしまえば最後。私はきっと今日も外には出ないだろう。

明日からはまた仕事。満員の電車に揺られながらOLとしてつまらない上司や契約先の話に愛想笑いで相槌を打つ日々が始まってしまう。

今日が一週間の内、私が女の子でいたっていい最後の日。


ソファーで寝転んでいるだけなのに、あらゆる情報が飛び込んでくる。便利な時代だなぁと私は思った。

雑誌を開けば気になるパン屋さんが載っていた。『期間限定!! 桜あんぱん』が人気らしい。

Twitterには一泊二日で神戸に旅行中の友人が少しだけ豪華な朝食バイキングの写真を載せていた。友人は写真と一緒に「20代も折り返し!! やけくそで楽しんでます!!(笑)」と呟いていた。

テレビの朝のニュースは私と同い年のアスリートが大きな大会で優勝した記事を取り上げていた。インタビューでその子は「日々の練習をただ積み重ねるのみです」と真面目な顔して答えていた。


私は体を起こし、うんと高く伸びをした。

寝ぼけまなこを擦りながら化粧台の前に座り、薄めのメイクで顔を整えた。職場ではあまり使えないラメ入りのグロスが我ながら可愛い、と思う。

お気に入りのトートバッグを選びながら、最後に一度窓の外を見てみた。きっと今日は雨は降らない、それどころか午後からは晴れるんじゃないか? 雨模様の空は、私にはそんな風に見えた。


ザンザンに降ってきた。私が家を出た、まさにその瞬間だった。

だが今度、部屋に戻りトートバッグを投げ出した瞬間その雨はぴたりとやんだ。

もう嫌。

私はソファーに寝転がり誰にともなく呟いた。

もう嫌、だからもういいや。

こんな馬鹿なことを考えながら今日が終わっていくんだなぁと寂しさが胸に降り積もり始めた時lineが鳴った。

気になる同期の男の子からだった。

「おはよー! 元気?」

ほんの少しだけ高鳴る胸の鼓動を抑えながら「おはよう。元気だよ」とだけ返す。返した後、「そっちは?」って訊き返せばよかったなと後悔している間にまたメッセージがきた。

「いや~折角の日曜日なのに暇だからさ、大野さんは予定空いてたりしないかなと思って」

続けてもう一文。

「まぁこんな雨模様だし、ドライブとか行かない?(笑)」


私は鏡の前で何度も化粧を直しながら思った。

朝から「何をしようかな」なんて悩む日の天気は雨模様が一番良い。

でしょ? 

鏡の中の私は小首を傾げ笑って見せた。

雑学を種に百篇の話を一日一話投稿します。

3つだけルールがあります。

①質より量。絶対に毎日執筆、毎日投稿(二時間以内に書き上げるのがベスト)

②5分から10分以内で読める程度の短編

③差別を助長するような話は書かない


雑学百話シリーズURL

https://ncode.syosetu.com/s5776f/


なおこのシリーズで扱う雑学の信憑性は一切保証しておりません。ごめんなさい。


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― 新着の感想 ―
[一言]  可愛らしいお話しだなあ、と思いました。  雨模様がウキウキしちゃうお話しです。  季節は秋だったのでしょうかね。  女心と秋の空って言いますし。笑
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