神隠し93
皇家との会談は、ビックリするほど、朗らかな和気藹々とした会談と言うか、雑談だったな。
なんかさ、皇女様に、何故か懐かれたんですが…俺の何が良かったんだろね?
別れる時には、皇太子からは「もっと、お話を聞きたかったのですけれど…」っと、非常に残念がられ、皇女様からは「もう少し、よろしいのでは?」って、愚図るようにね。
したらさ。
「また、お会いして頂ければ良いですわ。
今日はパパへ自慢してあげましょうね。
昨日は、凄く自慢してましたもの、今日は昨日の私達とは逆に、パパが悔しがりますわよ」
皇妃様が楽しそうに笑うんですが…皇王様?なんで、家族へ俺と会ったことを自慢してんです?
っかさぁ、俺と会ったことって、自慢できること?
皇妃様と皇太子、皇女様が、楽しそうにな。
楽しそうなのは良いんだが、皇王様を悔しがらせることを前提としてるのは、如何なものかと。
上皇様ご夫婦もさ、微笑ましく見てないでさ、止めたげて。
いや、話の輪に加わって煽るのは止めてんか?
うん、皇王様…ご愁傷様です(笑)
そんな楽し気な皇家の皆様と別れ、王城最上階の皇家居住区にある寛ぎ処からお暇を。
皇家の方々と別れの挨拶をした後で、部屋から出る際にもな、皇家の方々は楽し気に…
うんね、皇王様、ガンバっ!
そそくさと部屋を退去した俺達はエドワード執事長のエスコートにて馬車までとね。
「良く平然と皇家の方々と語ることが、できますわねぇ」っと、ヒューデリア嬢が苦笑いしつつね。
したらアリンさんもな。
「葵様…何時もご自分は一般庶民と仰っておられますが、その割には皇家の方々と、緊張されるでもなく語られておられましたね。
私など聞いていただけであるのに、緊張で震え、冷や汗ダクダクでしたのに…」
アリンさんが蒼い顔でな。
いや…そう言われれば、そうなんだけどさ。
「いや、あれは、明らかに上皇様の話術マジックだよな?
上皇様が場を緩やかに解して、穏やかに語れる雰囲気を作り出したからだろ。
そうじゃなけりゃあ、俺が落ち着いて話せる訳ないだろ」
っかさ、逆に場にのまれたとも言えるがな。
あの雰囲気だから、自然体で話せたとも言えるな。
まぁ、明らかに俺に対してのみされてたから、2人には恩恵はなかったみたいだな。
そんな話をしている俺達を乗せた馬車は進む。
王城の屋上へ戻り、ヴァルハラ館の城下街へと到った頃には昼時にな。
街の食事処からは良い香りがな。
飯時だから店へと向かっている者達や、並んで入店待ちしている者達の姿もな。
っかさぁ、点心らしき店の店先へテーブルを並べ食べてるのは、ラーメンじゃね?
明らかに並んでるよな。
行列ができるラーメン屋…行かなきゃでしょっ!
「あそこっ!
あそこの店で食べたい!
今、行き過ぎたとこっ!」
思わずな。
「葵天、ご容赦いただきたく存じます。
下々が食す場であり、葵天が食す場ではござりませぬ。
どうか、ヴァルハラ館にて、御願い申し上げまする」
エドワード執事長が困ったようにな。
ダメかぁ~
天位貴族が、いきなり現れたらパニックになるってさ。
行きたかったなぁ~行列ができるラーメン屋…




