神隠し88
池風呂での水泳を楽しみ…いや、俺も頭が悪いこと言った自覚はあるぞ、うん。
だが実際に、池のような巨大湯船の中央付近へは、泳がないと行けないからな。
なにせ足が届かないんだからさぁ。
カナヅチな人が入浴したら、中央へ行ったら溺れるな。
普通に溺れる危険性のある風呂…なんか、ヤダ。
池風呂以外の湯船も堪能した後で風呂から出る。
拭こうとするのを断って、自分で拭いたら落第と…
拭きが足りないから濡れてる箇所が?
髪が湿ってる?
さいですか…い、いや、さぁ…拭いたからね。
もう良いから、ジリジリと…
結局は数人に囲まれて拭かれましたとさorz
風呂から上がったら後は、主餐宴へと移動する。
むろん、ユラちゃんへ座ったままで運ばれてんぞ。
主餐宴へ着くと、テーブルへ様々な料理が、飾られるように配膳されていた。
凄く豪勢だな、をい。
俺は主餐宴へ入ると、1段高い場所へと案内され、そこへ設置されたテーブルへと。
雛壇ってヤツ?
所謂1つの主役席ってヤツだね。
俺が腰掛けると、料理が取り分けられて、俺の元へと。
俺の好みを把握したように、俺が好きな料理が順序良く運ばれてくるんだが?
主餐宴へは使用人達が、代る々、足を運んでいるみたいだな。
ルマド爺様の話では、主たる俺の顔を拝顔するためだそうだ。
自分達が仕えるご主人様の顔も知らないなど、有り得ないらしい。
なので、交替で俺を伺いにな。
少し落ち着かなかったが、ま、食事は美味かったし、良っかな。
晩餐を終えた俺は、第7寝室へと帰ることに。
そっかぁ~
この世界で帰る場所を得られたんだなぁ~
例のごとく、コニーのユラちゃんの背に座ってだな。
主餐宴より出ると、ユラちゃんがトコトコってな。
俺の所へ来ると顔を擦り寄せて来たよ。
なに、この可愛い生き物。
でぇっ、ユラちゃんに引き摺られる形で、こちらへ来たメイドちゃんね。
恥ずかしかったのか、顔が真っ赤です。
初々しいねぇ。
どうやら、今日のことから、メイドちゃんはユラちゃんの専属になるようだ。
いや、振り回される未来しか想像できんのだが?
そう思ったらさ、詳しく聞くと…メイドちゃんが1人で世話をするのではなく、チームの1人となったらしかった。
そら、そうだよね。
なんでもさ、メイドちゃんが近くに居ると、ユラちゃんの機嫌が良いらしい。
あの攻防で、なにか通じ合ったのだろうか?
メイドちゃんの名はモニカらしい。
見習いの研修中であり、本来は俺の御付き部隊のような場所へ配属されるなど、ありえないらしい。
葵層となっているが、ここは元々空き層である。
なので研修の場として選ばれていたらしい。
研修は層へ1人を受け入れる形で行われており、モニカちゃんは、偶々ここへな。
研修予定は数ヵ月前から組まれており、俺の出現に対する対応に追われ、モニカちゃんの研修はそのままに…
あの寛ぎ処へ居たのもスケジュール通りだが、ユラちゃん付きの研修にて、俺へ付いて行くのは想定外と。
そんなことも、あるよねぇ~
執事やメイドになるのは、普通は諸位(最下位の貴族階級)の者らしいが、王城や、ここヴァルハラ館などでは、覧位30家から選ばれるそうだ。
覧位は藤位の上、つまり領主が藤位だから、その上の貴族だな。
モニカちゃんって、良家の御令嬢だったのね。
ユラちゃんに振り回されてる姿は和むだけで、とても、そうには見えなかったよ。
うん、このコンビはホンワカするから採用で良いです、うん。




