神隠し86
第7寝室の確認を終えた俺はさ。
「取り敢えず、ここで暮らすことにしますよ」って宣言をな。
俺の感覚では充分過ぎるほど立派な豪邸ではあるが、葵層と言われる階層の全てが住まう場と言われるよりはマシだろう。
「おお、それは重畳に存じまする。
エドワード、エルドリアンが世話を成すは当然としても、ここの手入れや下処理を行う者達を、さっそく選抜せねばなりませぬな」
いや、ちょっと待て!
「ここって、俺独りで住むんじゃねぇの?」
思わず確認を。
すると、ルマド爺様を含め、皆が首を傾げてんぞ。
なんか変なこと、言ったけか?
「むろん、住まわれるのは葵天でございまするぞ。
ですが、部屋の清掃、庭の手入れ、ベッドの管理調整や洗濯に調理などなど、第7寝室の管理は多岐に渡りまする。
そのような雑務は、当然、下々の仕事ですな。
まさか葵天が、ご自分でなさりたい訳ではありますまい。
1人では数日掛けても終わりませぬゆえ」
ここへ逗留し続ける者の確認として、俺が尋ねたと位置付けたらしい。
確かに、ここを俺が1人で管理したら、ゴミ屋敷になること請け合いだろうな。
そら皆が、首を傾げる訳だぜっ!
そんな訳で、この世界で俺が暮らす拠点が決まった訳なのだが、ここは寝室であり、各施設をグレードアップした空間が存在する。
例えば、リビングに対する寛ぎ処のような施設だな。
そのような施設の状態も把握しておくべきとなり、施設の視察をな。
むろん、一度に全てを確認できる訳ではない。
今日は行けても1施設だな。
食事を皆で摂ることは決定とさせたから、ダイニングの高グレード版は行くことが決まっている。
っても、複数ある晩餐処の1つ、主餐宴とか呼ばれる場所らしいのだが…
晩餐処って…あっ、やっぱり?
朝餉処と昼餉処もあるそうな。
おやつ処は?ったらさ、寛ぎ処だと…そら、そうだ。
まぁ、食事は必須だから晩餐時に1つを確認するので他をってね。
なら、風呂かな?
大主浴場と呼ばれる、この層1の浴場へと。
いやさぁ、風呂でなく浴場ってますが?
最早、個人所有の範囲を越えてっだろ、それ…
行き先が決まったので、早速移動開始です。
何人かのメイドさんは、ここへ残って第7寝室の整備を行うのだとか。
俺の荷物も、本日就寝予定となっていた寝室から運んでくれるとのこと。
そんな彼女達と別れて大主浴場へとな。
付いて来る女性陣へな。
「女人禁止ですからね」ったらな、盛大に皆が引いたよ。
何故?
「葵天におかれましては、そのような…
クッ、不詳エドワード、男色などでは、ござりませぬが…」
アリンさんも、絶望したような顔で。
「違ぇわっ!
俺ゃぁっ、ノーマルだぁっ!
ソッチの気は無ぇっ!」
どっち、とか…訊かないように!
「女性が良いに決まってんだろがぁっ!」ったらな。
「では何故、私達を拒まれるので?」
いや、なんでってさぁ…
「風紀的に、よろしくないに決まってるだろ?
『男女七歳にして席を同じゅうせず』です。
元世界での風紀を戒める言葉ですね。
成人した男女が同じ風呂へ入るなど、言語道断です!」
きつく言っておかないとなっ!




