神隠し82
珈琲をいただきつつ、葵層の説明を受ける。
いや、下宿屋やアパートみたいな呼び名やな。
葵荘ってか?
でな、基本、葵層は自由に行き来して良い自分の部屋扱いらしい。
他にも靖子層…通称が聖女の間もあるが、大概が空き層となっており、使用人達が暮らす層もあるのだとか。
アリンさんとヒューデリア嬢は、使用人層とは別層へ部屋が用意されているらしいな。
貴族階級のお付きの方々が住まう層らしい。
メイドが暮らす層に、執事が暮らす層もあるのだとか。
そして1層目、2層めは共用スペースらしく、来客などは、ここまでしか立ち入れないんだとさ。
っか、良い匂いがして来てね?
そいやぁ、昼食は、まだだったよな。
料理を乗せたワゴンを押したメイドさん達がな。
小分けにされた料理が、それぞれの皿に盛られており、その皿の1つをメイドさんが持って俺の方へ。
遅い昼飯だな、これは嬉しい。
謁見やら移動やらで疲れたし、腹も減ってたしな。
手渡して貰えると思ったのですが…なんで、あ~ん?
いや、唐突な羞恥プレイなの?
戸惑ってるとな。
「今朝も申しましたが、下々に世話をさせるのも、高貴な方の義務でございます。
葵天には馴れていただかねば」
エルドリア・メイド長が、そんなことをな。
したらアリンさんがね。
「それは、おかしい!」って、割って入ってきたよ。
「何がで、ございましょう?」
メイド長が不機嫌そうに尋ねるとだ。
「葵天は最上位であらせられ、義務などもない招かれ人であらせられる。
ご本人が望まれないことを押し付けるは、かえって不敬では?」
そう告げられ、メイド長が反論を。
「ですが、一般常識は、知っておられるべきかと」ってね。
したらさ。
「それは、我々にとって、です。
葵天は、元の世界では成人され独り立ちされておられた身。
働きもされ独りで生活もされておられたのだとか。
一人前の大人への押し付けは感心できませんぞ!」
それに対し言い募ろうとするメイド長れルマド爺様執事がな。
「エルドリア、そこまでになさい。
見るに葵天は、好まれてない、ご様子。
これは、アリン卿の仰りが正しいであろう。
貴人としての所作を修めていただきたいと言う、そなたの気持ちも分からぬでもない。
ないが、招かれ人におかれては、覚える義務などないのだよ。
これが皇族方々なれば別であるが、こと招かれ人には義務など皆無ゆえな」
え~っとぉ、実は俺、本当の意味でフリーダム?
「もしかして…この衣装も身に付ける必要なかったとか?」
「?
葵天が着たいと思われる衣装を纏われるがよろしいかと。
確かに我が国の貴族が纏われる正式な衣服ですが、葵天が気に入らなければ、元世界の衣服にての謁見も赦されましょうな」
いや、マジで?
料理の皿を受け取り、先割れスプーンらしきカテトラリにて食しつつな。
つかさ、アリンさん。
裏切り者を見るように見るんじゃありません!
その衣装は、アリンの国が誇る貴族正式衣装では、あ~りませんか。
この国の貴族であるアリンさんが纏うのは仕方ないですよね。
俺は食後に、早々と着替えさせていただきますけどね。
モッコし衣装なんぞ、2度と着んぞっ!




