神隠し81
ソファへ収まりつつ珈琲を堪能している俺へ、ルマド爺様執事が語り掛けてきた。
この階層の説明だな。
寝室が数十ほどあり、何処で休んでも良いように整えられているらしい。
寝室の趣は部屋ごとに異なるため、その日の気分で選んで欲しいと。
食事、軽食は、言い付ければ、何処へでも用意される。
だが、ダイニングルームのような場所も数ヶ所用意されており、そちらでテーブルへ着いての食事も可能。
洗面所は全ての寝室へ付随している施設らしく、洗面所を聞くと最初は不思議そうにされたよ。
風呂は大浴場が数ヶ所ほど、全てサウナ付きでな、何人も入れる広さなのだとか。
後はダンスホールに図書室などの施設だな。
空き部屋も多いので、自由にして良いってさ。
「台所とかも、数ヶ所あったりするんですか?」
そう尋ねたら、キョトンとされた。
なんだろね?
「ありますが…葵天が立ち入ることはないかと」
「入っちゃダメな場所だった?」
立ち入るべからずってか?
「いえいえ、ここは葵天の層にて葵天の入室を拒む場はありませぬ。
ですが、下々が出入りする場ですので…」
明らかに戸惑ってんな。
「そんな所へ行かれて、どうなさる、おつもりですの?」
ヒューデリア嬢が不思議そうにな。
「いや、厨房なら料理する場だろ。
趣味ではないけど、何か作ってみたくなることもあるかもしんねーし」
簡単な野菜炒め程度なら可能だ。
っか、C○○K D○なんかを使えば、材料揃えたら俺でもな。
世の中には、色々と便利な代物があるんだぜ。
エビチリだって、作る調味料パックがあれば簡単さね。
そして、元の世界で作ったことがある。
ここが重要。
今のところ、俺が持ったものなのか、使ったものなのかは解らないが、鳥車で再現されたのは知った代物だった。
なら、調味料なんぞも創り出せるやもしれんからな。
そうなると、それを使って調理可能なのは、俺だけだろう。
教えれば調理可能になるとしても、少なくとも最初はな。
作り方がパッケージに書かれてはいる、日本語でな。
流石に調理人達が日本語を覚えているはずもない訳で…説明を読めるのはな。
まっ、そんな目論見もあったりする。
しかし…冗談抜きに、この層が、俺個人用らしいな。
つまりは、部屋扱いと?
馴れん、馴れんぞぉ~、いや、馴れたらダメだと思うな、うん。
服はクローゼット部屋が用意されており、こちら風から、俺の荷物内の衣装を真似て造られとるそうな。
靴箱ならぬ靴部屋や帽子部屋、アクセ部屋などなど、それぞれに数部屋づつな。
広過ぎ、多過ぎ、戸惑うばかり。
居場所が定まらないって言うか…地球の6畳一間が懐かしい。
俺って、貧乏性っか、つくづく日本人だなぁ~
異論は認めない。
こんな環境に連れて来られ動じない日本人なんど居たら、大したもんたい!
で、何処か落ち着ける小部屋は…あっ、ない…さいで…わぁ~ん…




