神隠し80
螺旋廊下をコニーの背に揺られながら移動を。
現代子の俺とは違い、皆さん健脚だことで。
いや、俺もさ、この世界へ迷い込む前よりは健脚となった自信はある。
これは、大気中に溢れんばかりに存在すると言われる、真素が影響しているのだろう。
こちらへ来てから疲れ難くなっているし、慢性的だった肩凝りや腰痛が治まっているんだよ。
視力も回復したような気もするし…まるで温泉だな。
異世界良いとこ、1度はおいでってね。
普通は無理だがなっ!
そして、螺旋廊下より奥へ向かう廊下へと。
螺旋廊下の途中に何ヵ所も奥へ向かう廊下が存在した。
螺旋廊下を中心として、放射線状に廊下が配されてるようだな。
それぞれが、何処へ向かっているのか気になるが、調べていたら終わらない。
とにかくは、俺の部屋として割り当てられた…
「さて、この階層は、葵天の階層となります。
間取りなどは、寛ぎ処へ行ってから、お伝えいたします」って…えっ?
自室でなく、自階層?
なにそれ、新しい、って、うっさいわっ!
「自室ではなく?」
「凄いですわねぇ…
部屋のように階層を、個人に割り当てるのですわねぇ…」
流石のヒューデリア嬢も、圧倒されてんな。
コニーに揺られ揺られ寛ぎ処へと。
う~ん…なんてぇ寛ぎ処?
室内へ小川の、せせらぎが流れ、広い空間に散在するソファは空間を圧しない配置がなされている。
そうだな、テーブルの回りに椅子ではなく、空間を邪魔しないようにソファが、一見無秩序なようで実は調和された感じで配されてるんだ。
サイドチェストがソファ横へと設置されているが、机は補助であり、座り寛ぐことが眼目となっているようだな。
確かに寛ぐには、最適な場所だろう。
俺はコニーから降りて、エスコートされた椅子へと。
このソファも凄いな。
適度な弾力がシッカリと体を受け止め、無理がないように支えてくれる。
ふぅ、落ち着くなぁ~
思わず、まったりてな。
沈み過ぎるソファや、柔らか過ぎるソファって、実は座り難くくて、俺は嫌いだ。
かえって疲れるしな。
その点、このソファを配した方は理解しているようだな、うん。
ソファへと収まると、空かさず茶と茶菓子がな。
サイドチェストへ置かれたソーサに乗ったカップを、ソーサごと手元へと。
これは、珈琲か?
「珈琲を、お気に召されたと聞き、ご用意させております。
砂糖なし、ミルクなし、が、好みと聞き及んでおりますが、入り用なれば、直ぐに持たせますゆえ」
ルマドさんに言われ、取り敢えず…
「いえ、ストレートが好みですので」
そう告げてから口へとな。
!?
何か…違う…なんだろう、か?
芳醇たる珈琲の薫り…これは、間違いない。
だが、違和感と言う感じでは、な。
ならば、味なのだが…雑味が消え、更に旨味が…んだぁ、これ?
戸惑っていると、ルマド爺様執事がな。
「これはDutch方式と言われる方式で淹れた珈琲で、特筆すべきは霊峰氷を溶かし得た水でしょうな。
至高の1杯となっておりましょうや?」っと。
珈琲1杯に、なにしとんねんなっ!
びっくりだぜっ!




